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曲はフルコーラスで聴かないといけないのでは?~『なんでもないよ』byマカロニえんぴつ、を聴いて思ったこと~

イントロダクション

日本のロックバンド・マカロニえんぴつ。
その現時点での最大のヒット曲と言われているのが『なんでもないよ』だ。

今年(2022年)9月にフジテレビで放送された『FNSラフ&ミュージック ~歌と笑いの祭典~』でも披露された。

で、Twitterで検索すると出てきたのが「他の曲もやらせてほしい」という感想だった。
世間に知られるのはいいけれど、その代表曲だけを何度もリピートされるのは不本意だ。

なぜなら、その曲だけリピートして流されると世間にすぐ飽きられてしまうし、その曲だけ聴いて好みじゃなかったら他の曲も聴いてもらえなくなる危険があるからだ。代表曲は、それを歌うアーティストの持つ側面の一つでしかない。

ただ、上記に挙げたことも重要だが、今回の記事の本題ではない。本題は、

そのアーティストの色んな曲を聴くことによって、そのアーティストの全体像が見えてくる。というのと同じように、ある曲をフルコーラスで聴くことでその曲が理解できる。

ということだ。

当たり前のことではないか、と思われるかもしれないが、案外フルコーラスで聴くことができないことは多い、というかほぼそうだ。

例えば、
・音楽番組では、フルコーラスでは流れない場合が多いこと
・さらにCMは、曲中のサビの、さらにそのサビの一部しか流れないこと

つまり、ある曲がお茶の間に流れるときに発生する問題がある。
それは「曲をフルコーラスで聴かないとその曲の言わんとしていることは伝えきれない」問題である。

私は『なんでもないよ』という曲にもそれがある気がするのだ。
以下、本節では、ある「歌詞」について見ていき、この曲の理解に関する躓きポイントとこの曲の主題について考察する。

本節

では、問題の歌詞を見てみよう。サビの前半の部分だ。そして印象的なフレーズでもある。テレビで紹介されるとき、初見の人の耳に真っ先に届くのはこの部分ではないだろうか。

会いたいとかね、そばに居たいとかね、守りたいとか
そんなんじゃなくて ただ僕より先に死なないでほしい

いかがだろうか?
私は「なんか聞いたことあるな」と思ってしまった。
(AメロBメロを飛ばして)ここだけ聴くと、この曲が単なるウェディングソングではないかと感じ、脱落する者がいるのではないか(私のような恋人がいたことがないような人間は特にそうではないだろうか)。

しかし、あとに続く歌詞を聴かないと、この曲のことはわからないと思う。

そんなんでもなくて、ああ、やめときゃよかったな

からの「何でもないよ」なのである。

「僕より先に死なないでほしい」という主張を後ですぐに否定し、もっと自分の気持ちを過不足なく伝えることができる他の言葉を探すのだが、結局は見つからず何かを言おうとしたことを後悔するのだ。
そして、口にしたのは「何でもないよ」という一言だけだった。

ここに、この曲のテーマがある気がするのだ。

曲の中でも言っていることだが、「言葉が邪魔になるほど」君が好きでたまらないということなのだ。

ただ最後の一節には、結論めいたことが歌われている。

君といるときの僕が好きだ

一応、そばにいてほしい、死なないでほしい、会いたい、ということのすべてがこの一節で回収されることにはなるし、「ウェディングソング」になる可能性も秘めていると思われる。

だが、言うべきことが見つからない、というのを経ての結論なので説得力が違うのではなかろうか。

総括

以上、フルコーラスを聴かないと、その曲のことはわからない、ということの一例を見てきたつもりである。もちろん、その曲の解釈は聴く人の数だけある。だが、一部だけ聴いて、その曲の好き嫌いを判断するのは寂しいのではないかと思う。

マカロニえんぴつ、の今後の活躍に期待する。



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