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できない文系院生の悲惨な末路(6)

さて,カースト最下層のMくん,院生同志で話すときにM1なのに「僕の専門は○○ですから■■には興味ありません」と豪語していた.もちろん,誰しもが自分にとって深く探求したいことがあるはずなのでそう言って分野を持つことは重要だと思うので,筆者も自分の専門を公言することを頭から否定するつもりもない.問題なのはM1という,研究者としてやっていくためにその学問を追求するために必要な基礎知識を習得する重要な時期にMくんはそのようなことを(カースト上位の)他の院生にのたまっていた.研究者の世界に入ってみると分かるが,優秀な研究者というのはどのような分野でもよく知っている.昨今のコロナウィルスで山中教授が「専門外の私が・・・」と前置きし,その分野を専門とする先生に敬意を表しながら発言する姿をちょいちょい見るが,誰がみても山中教授が専門家に引けをとらない知識を有していることは明らかである.もちろん,自分のライフワークと言える分野を見つけることは容易ではなく,ましては修士にはいったばかりで,その分野の右も左も分からぬひよっこが「自分の分野は〇〇です」などというのはおこがましいのである.

しかし,大学院(もちろん,社会はもっとそうだが)は厳しい世界である.(カースト上位の)先輩院生たちはそのようなMくんの発言を聞き,腹の中で笑っているのである.大半の先輩や同期のKくんは何も言わないが中には

Mくんの専門は〇〇なんだぁ,すごいなぁ,もう研究テーマが決まっているなんて

と白々しくいう先輩院生もいる.この発言を聞いてちょっとでもピンとくる人であれば,

お前,M1に入ったばかりで,何が専門だよ.学問舐めんな!

と言っていることが分かるのだが,これがまたMくんのイタイところで,先輩院生に褒められて,喜んでいたのである.これまで「俺ってまわりからできないヤツって思われているんじゃないか?」と不安に思っているので,バカにされているにもかかわらず喜んでいた.まったくおめでたいヤツなのである.サントリーの設立者である鳥井信治郎が小西儀助商店に丁稚に入ったばかりの時に,「おまはんは言われたことをやればいいんだ」と先輩に殴られる話があるが,まさに修士課程なんてのは奉公であれば入りたての丁稚であり,言われた仕事を覚えるのが仕事なのである.Mくんは入りたての丁稚が番頭や手代に「わては仕入しかしまへんで」と言っているのと同じなのである.こうした勘違いも相まって,Mくんは自分を取り繕うこと,バカにされないように振舞うことに腐心し,若くていろいろ吸収できる修士課程の時間を無駄に過ごしてしまうという研究者にとって致命的なミスをやらかしてしまったのである.


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