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できない文系院生の悲惨な末路(11)

(心中では「ドロップアウトしてくれないかな」と指導教員は思っていたと思うが)Mくんは,修士論文らしきものを書いてきたことは,「できない文系院生の悲惨な末路(10)」で書いた通りである.指導教員もいきなり審査のときにトンデモ論文を提出されては困るので念のための報告会が行われた.

まずは,同期のKくんの発表.Kくんがいくら期待されていると言ってもそこはまだ修士課程の学生.博士課程の先輩から見るといろいろ改善点やもう一歩考えた方がいいわなぁといった箇所が多々あった.博士課程の先輩たちはその箇所をいろいろ指摘したりアドバイスしていた.(ただ,この行為もKくんのためというよりも,指導教員に自分の実力をアピる行為であるのだが)指導教員もまぁいろいろあるだろうが,博士課程に進んだらもっと頑張るようにとコメントをして予定の時間が終了した.

つぎはいよいよ「にわとり」Mくんの報告である.シャア・アズナブル的に言えば,博士課程の院生からすると,

見せてもらおうか?院生カースト最下層の実力とやらを

といった感じで待ち構えている.そしてMくんの発表が始まった.博士課程の院生の先輩たちがやってきたのを真似して

本論文の目的は…云々

と語りだす.それが5分ぐらい.そして,いよいよ論文の中身を説明しだした訳だが,Kくんの報告のときはいろいろとコメントをしていた指導教員はずっと黙ったままであった.Mくんは,いつものゼミのように周りからつつかれないことにある種の心地よさを感じ機嫌よく報告を続けていると,指導教員がボソッと

Aの箇所はどのように考えていますか?

と低いドスの効いた声で質問した.経験則からすると,このトーンで指導教員が話すときはそのあとに嵐がやってくるのだ.そこでMくんが,

〇〇のように設定しています

と.すると,指導教員は烈火のごとく怒りだした.本当に最初の最初の最初の箇所を間違っていたのである.

そんなデタラメなことどうして言えるのですか?

と.久しぶりにみるそれはそれは恐ろしい雰囲気を醸し出している・Mくんの論文は,Aをいう仮定を前提にBという話をし,さらにBの話をCに展開するという論文構成になっていたので,このAの仮定というか設定を間違ってしまうともうその後,どのような結論を導き出してもそれに何の意味もなくなってしまう.90分の持ち時間の最初の15分である.そもそもまだ,Bの話やCの話をしないといけないのでMくんとしてはやり過ごしたいところだったのだろうが,そんなことが許される訳がなかった.そんな状況の中,Mくんはとんでもない発言をし,その会場を震撼させたのであった.


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