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できない文系院生の悲惨な末路(16)

大学院生の一番の仕事というかやることは研究であることは言うまでもない.しかし,実は研究だけしておけばいい訳ではない.研究室の中では学会の事務局を置いているところもある.大学院生を多く抱える研究室では学会の仕事を院生がお手伝いをするのである.もちろん,無給である.

日本では学会の多くは会員が勤務する大学にお願いして,会場を貸してもらい開催される.もちろん,修士論文もまともに書けないようなMくんである,学会報告など夢のまた夢でひたすら学会の受付に座り,会費,懇親会費を受け取り,領収書を発行する.まともな神経の持ち主ならできれば避けて通りたい雑用なのであるが,Mくんはこの学会のお仕事が大好きだった.

読者の方,その理由は何だと思われるだろうか?学会に参加したことがある人ならご存知であろうが,学会を開催する会場校では,その大学の学部生なりが事務や会場係のお手伝いをしてくれる.普段,大学院の中では最下位のカーストに属し,周りの院生からバカにされているMくんも学会の会場では違う.お手伝いをしてくれる学部生は普段のMくんの姿を知らないため,「大学院生」というだけで凄い人と誤解してしまうのである.それがMくんが出た学部の大学よりも偏差値の高い大学の学部生が誤解してMくんにいろいろ質問してくるとなった日にはもう至福の極みなのである.

お手伝いをしてくれる学部生に対して上から目線で,

Mくん「○○さん,××してね.△△さん,あちらはどうなってる?

といった具合にである.傍からみていると,その態度の横柄さにイラっとくるのだが,Mくんのコンプレックスはまぢで酷いのである.他の院生はと言えば,指導教員は少しでも研究業績を蓄積させないといけないので,学会報告の機会を与えるため,セッションに参加しており,そこでコメントを貰ったり,新しいアイディアを見つけたり,そしてこの世界で何よりも重要である人間関係を構築していくのだが,1Fの受付に座っているだけなのでアカデミックには何のメリットもないのである.しかし,Mくんにとってそんなデメリットはどうでもいいのである.何も知らない学部生から,「大学院生ってすごいですね」とか聞かれようもんなら,それだけで普段の自分の惨めな大学院生活を浄化してくれるのである.

もっとも,他の院生も,Mくんがそういった理由で学会の事務の仕事を喜んで引き受けているので,すべてMくんに押し付けて自分の研究にまい進していた.こうして,博士課程になって誰よりも研究しないといけないMくんであるのに一向に勉強時間は増えず,修士課程のとき同様,報告の失敗を繰り返し続けたのである.

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