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伝統と革新が交わる         若き蔵元が織りなす未来への挑戦⑥          【とうほくGenki × 福島県酒造組合】

 海外での日本酒人気が高まる中、国内では若者の日本酒離れが課題となっています。その中で、日本酒の魅力を若い世代にアピールしようと、各酒蔵による伝統にとらわれない新しい「日本酒」へのアプローチが注目を集めています。
 若き蔵元たちの日本酒に懸ける新たな挑戦について、福島県酒造組合理事で需要開発委員を務める鈴木孝市(曙酒造株式会社 代表取締役)さんへお聞きしました。

競い高めあう楽しみが
情熱的な酒造りを生む

 福島県民は酒好きの風土があり、応援してくれる一般の消費者がたくさんいます。酒造りの知識や技術を学ぶことができる県清酒アカデミー職業能力開発校もあり、蔵人たちの底上げが進んできました。さらに、近年は若手蔵元の間で切磋琢磨し競い合いを楽しめる関係性が築かれ、情熱的な酒造りができているのが福島の酒蔵の誇りと魅力です。こうした土壌が育まれた背景にはやはり、東日本大震災や東京電力福島第1原発事故が大きな影響をもたらしたと考えます。福島の評判を挽回するために何かしたいという気持ちが、特に当時の若手たちの心を震わせたと感じます。ただ家業を継ぐだけでなく、胸に灯したさまざまな思いが情熱や誇りにつながっているわけです。
 全国新酒鑑評会で福島県が9回連続で金賞受賞数日本一に輝いた実績の裏には、間違いなく若手の力があります。11月の東北清酒鑑評会でも県内の若手が手掛けた清酒が上位2賞を受賞しました。これからはますます若い力が福島の日本酒の新しい魅力になるはずです。

東京電力廃炉資料館の見学

当たり前の積み重ねで
多彩な個性が花開く時代へ

 福島では他県のように特別なユニットを組んで展開するような取り組みはしていません。福島は縦横に長く個性あふれる県です。その個性を生かすことが何より重要と考えます。必要なのは特別なしかけでなく、日々の当たり前を実直に続けることです。「酒造り」を共通点に互いに高め合うことを喜べる好循環は後進のためにもなります。
 県内の若手蔵元が情報交換をする「福島県醸友会」は酒造りの技術だけでなく、土地や人を学ぶ場にもなっています。蔵人たちが新しい情報を入れ刺激を受けながら、福島の現状を学び、発信できるきっかけにしてもらいたいと思っています。
 福島という豊かな地で育まれた酒造りは、若手蔵人たちに受け継がれ、より良い酒造りへ挑戦が続いています。準備は整いつつあります。これから各蔵元のカラフルな個性が次々に花開く時代が始まると確信しています。楽しみにしていてください。

醸友会総会の様子

福島県酒造組合 理事 需要開発委員
曙酒造株式会社 代表取締役
鈴木孝市(すずき・こういち)氏

 1984年5月25日生まれ。会津坂下町出身。若松商業高卒、東京農大中退後、東京の派遣会社で勤務。22歳でUターンし実家の曙酒造に入蔵。2011年に同社製造責任者、2018年に6代目蔵元として社長に就任。福島県醸友会会長、東北青年清酒協議会会長。

福島県酒造組合
福島市南矢野目古屋敷54-11  TEL/024-573-2131
URL/http://sake-fukushima.jp/


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