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【岩手の味わい】養殖貝、ブランド化に力

 身はふっくら、かむと甘みとうまみが口に広がる。国内で唯一、産業ベースの養殖を手がける陸前高田市のエゾイシカゲガイは高級食材として、すし店や料亭などから引き合いがある。
 「やっと出荷までこぎ着けた」。同市気仙町の要谷(ようがい)漁港で、広田湾産イシカゲ貝生産組合の熊谷信弘組合長(67)は採苗から2年を経て大きく育った二枚貝の選別作業を見守った。
 波の穏やかな湾を活用し、新たな特産品をつくろうと広田湾漁協(砂田光保組合長)が着目。1993年に養殖技術を確立し、3年後に生産をスタートした。砂を入れた容器に種苗を納め、海中へ。半年に1度、砂を入れ替えながらじっくりと成長を促す。
 東日本大震災津波で養殖施設が全壊する被害を受けたが、2014年に水揚げを再開。昨年2月には農林水産省の地理的表示(GI)保護制度に登録となり、ブランド力を高めた。同9月にはシンガポールへの輸出にも乗り出した。
 同漁協と市は現状の約1・5倍の年間生産量100トンを目標に掲げる。熊谷組合長は「海水温の上昇など不安はあるが、生産者16人が力を合わせ、おいしいだけでなく安全安心な地域の宝を食卓に届けたい」と力を込める。


養殖で育ったエゾイシカゲガイの選別作業に当たる生産者


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