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「ゴーストバスターズ/アフターライフ」感想~愛に溢れたラブレター、正統な後継作に感涙

☆「ゴーストバスターズ」の思い出

かの有名な映画史に残る金字塔、初代「ゴーストバスターズ」。母にせがんで映画館で観た映画である。

映画館で映画を鑑賞する人口の減少、大型シネコンの台頭に押され、今はなくなってしまった山形市内の映画館。鑑賞の興奮冷めやらぬ中、売店で買ってもらったマシュマロマンがプリントされている缶ペンケースと共に小学生時代を過ごした。

今にして思えば、サブカルチャー、ポップカルチャー、SF・オカルト好きである私の嗜好の方向性を決定づけてくれた作品の1つだったと思う。

「ゴーストバスターズ」が面白いとオススメしてくれた友人のY君と熱いゴーストバスターズ談義をしたり、ランドセルと傘をバスターズ隊員達が背負う”プロトンパック”に見立て、意味なく墓地で遊んだりしたのもいい想い出である。

…ファミコンの「ゴーストバスターズ」は伝説のクソゲーだったけど…

一度私のココロに灯った「ゴーストバスターズ」の灯は、なかなか消えなかった。TVで吹替え版が放送された際(確かフジテレビ版)などは、VHSビデオに録画してもらい、吹替えのセリフを覚えてしまうぐらいに何度も何度も観たほど。

ビル・マーレー演じるピーターがラスボスのゴーザに対して放った「恐竜時代のブス女に男の意地をみせてやるぜ!」(時代を勘案し差別的なニュアンスの表現であることをご容赦下さい)という日本語吹替えセリフが、おじさんになった今でも立て板に水、スラスラとでてくるほどなのだ。

もちろん、そんな熱量の私である。「ゴーストバスターズ2」が公開された時にも映画館に足を運んだ。

丸刈り丸坊主の中学生になっていたが、「バックトゥザフューチャー」と「V」(爬虫類型エイリアンの地球侵略モノ)の新作公開、オカルト雑誌「ムー」の新号発売を楽しみに待つ、仲間のT君と一緒に観た。

「ヴィーゴ(2のラスボス)に似た、髑髏が描かれた西洋絵画があるらしい」との噂を聞きつけ、T君と共に山形市内の郷土館「文翔館」(大正時代に建築された県庁舎)に”調査”しに行ったのも、これまた「ゴーストバスターズ」にまつわるいい想い出である。

そして時は過ぎ。

アメリカ風に言うならば”ギーク”な少年は青年に、そして中年に至り。

中年は「ゴーストバスターズ/アフターライフ」を観た。

そして今。感涙と共に感想を書いている。

「誰を呼ぶ? ゴーストバスターズ!!」

☆再構築ではない、時空を超えた王道の後継作~まずは全体感想から

「ゴーストバスターズ」と言えば2以降、まるでハリウッド業界のポリコレをチクリと皮肉ったような…

こちらの登場人物全員女性というリブート版がありました。

まぁ、こちらも面白かったですし、主演のクリスティン・ウィグさんはお綺麗ですし、何より「ゴーストバスターズ」ファンに向けた細かい作り込みがされており「新時代の再構築版」として楽しめました。

元々は『ゴーストバスターズ2』に続くシリーズ第3作として、前作の出演者たちを再登場させ女性を含む新しい出演者に物語を継承させる脚本で予定されていたが、オリジナルメンバーであるイゴン・スペングラー博士役のハロルド・ライミスが死去したことなどにより、前2作で監督を務めたアイヴァン・ライトマンが降板。のちに監督として就任したポール・フェイグの提案により、リブート作品となった。

監督を降板したライトマンは本作では製作として参加、オリジナルメンバーのレイモンド・スタンツ博士役を演じたダン・エイクロイドは製作総指揮を務める他、タクシー運転手の役でカメオ出演している。その他のオリジナルメンバーも、死去したハロルド・ライミスと既に俳優業を引退したリック・モラニスを除く全員がカメオ出演している。エンドクレジットではハロルド・ライミスに捧ぐという一文がある。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

「時は流れ、時代も時代だし、ゴーストバスターズはこの流れでシリーズ化されてしまうのか…」と少し寂しく思っていた、そんなタイミングで

「ゴーストバスターズ/アフターライフ」が公開されたのである。

これはどういう意味があるのか、鑑賞して分かりました。

この作品は、あの庵野監督が、自身の血肉となっている特撮映画を、ありったけの情熱とコダワリを胸に血反吐を吐くような労力で映像化する「シン」シリーズのような「再構築」ではない。

1989年の2作目から30年以上という長い時を経て、きちんと物語の中でも30年以上経過した、あの大勢が熱狂した「ゴーストバスターズ」世界の正統・正式なナンバリング作品である。

そう。30年以上という時間を経る、つまり、あの物語(ライフ)の「アフター」なのである、ということを。

ネットの感想では「冒頭部分が、ゴーストバスターズを冠する娯楽映画にしては冗長すぎる」だの「オリジナルを知らないと楽しめない」だの言っている方もいらっしゃいましたが、当たり前田日明のキャプチャード→そのままピンフォール。

そもそも、ゴーストバスターズという存在がオカルトネタになってしまうぐらいの時間(30年以上)経過していることの説明が必要なわけですし、地続きの正統後継作品なんだから途中から観ても全部わかるわけないでしょうが、このバカチンがぁぁ!君らはアレか?「ウォーキングデッド」をシーズン3から観て「わからない」とか言うアレか?クレーマー気質か?クレームつけて意見した気になっているアレか?

…ふぅ。いかんいかん。ネットのノイジーマイノリティなネガティブ意見に自分のことではないのに反応してしまいましたね。失敬失敬。

まぁ、そんなイチ「ゴーストバスターズ」ファンが思わず「熱盛」を出してしまうのほど「ゴーストバスターズ」愛が詰まった新作だったわけであります。

☆ある意味ファンしか盛り上がらない、細かい胸アツ感涙ポイント

※ピーターの名言
物語終盤。オリジナルのバスターメンバー集結時、ビル・マーレー演じるピーターが発したセリフ「本部のピーターだ!」。これ、残念ながら視聴したアマプラでは日本語吹替え版しかなく、吹替え音声で聞いたんですが、それでも思わず泣きそうになりました。

だって「ゴーストバスターズ」。その世界的な人気から現実世界で数々の公式に認定された「ゴーストバスターズ〇〇支部」が開設されているんです。まぁ支部と言う名のファンのサークルなんですが(主にアメリカの各所の支部が有名)。

そんな中でピーターが「本部」と!自分たちが「本部」と!この支部を認識させてくれる(ファンへの)配慮。なんとまぁ素敵なことよ。アメリカの支部の皆さんなんか「Yes!Yes!Yeah!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」って叫んでいたんでないでしょうか(妄想)

※吹替え版のみの楽しみ
いい味の相棒”ギーク”キャラ、ポッドキャスト君。日本語吹替え版は何故か名探偵コナンの「高山みなみ」さん。最初、随所随所で「コナンみ」を感じてしまい、何だかシックリこなかったんですが、劇中のあるシーンで一気にハマりました。

ゴーストで溢れかえる街。混乱の最中、没収されたバスター用品を取り戻すべく警察署に来た主人公たちご一行。全員出払っている警察署に残されている倒れたコーヒーカップ。ポッドキャスト君、こぼれたコーヒーをペロリと舐め一言「まだ、そんなに時間が経っていない」。

これ、ただ単にポッドキャスト君のギーク的な行動を演出しただけなのかもしれませんが、声が高山みなみさんだけに、完全に…

ペロッ! !? これは青酸カリ!

と言う、あのネットミームとして散々擦られているコナン君そのものなんですね(笑) なんだろう、このシーンがあるという理由だけで高山みなみさんに決まったのだろうか(妄想)

※主演女優の素晴らしさ
フィービー・スペングラーを演じる主演のマッケナ・グレイスさん。すっごい良かった(コナミ感)ギークでキュートだし、どこからどうみてもイゴン博士(ハロルド・ライミス)の親族にしか見えない徹底した役への没入ぶり。

劇中散々焦らした挙句に「私のおじいちゃんはイゴン・スペングラー」という盛り上がるセリフがありましたが、物語開始数分、冒頭部分から、どこをどうみてもイゴン博士の孫以外には見えないのが凄い。本来の金髪状態の写真を見ても、しばらくはフィービーさんだって分からないほど(笑)

ちなみに、映画のエンドクレジットで流れる曲を歌っていることも鑑賞後に知りオッタマゲました。

※祖父、父。そして娘、孫。
この「家族愛」が盛り込まれている部分を批判している無粋な輩もいらっしゃいましたが、冷静に客観的に考えてほしい。再考を促したい。

この愛って、実は

実際にお亡くなりになられている、イゴン博士役のハロルド・ライミスに対する皆の愛を表現したものなんですよ(個人的解釈)。

エンドクレジットには「ハロルドに捧ぐ」とあることからも分かるように「ハロルド、あなたはゴーストバスターズのメンバーとして、こんなにも愛されて(周りの人達を愛して)いたんだよ」。きっと、このことを伝えたい制作陣・出演陣が考えた筋書きではないかと思うんです。

そう考えちゃったら、最後のバトルシーンなんて、泣けてきちゃって泣けてきちゃって…。さらにカワイイ我が愛娘ちゃんのことを考えたら、涙腺が崩壊してしまいました(笑)

※エンドロール後の同窓会にホッコリ
物語冒頭で登場されたオバサマに「あれ?(粋な計らいで日本語版声優さんも同じだったように思います)」と思っていたら、案の定エンドロール後に判明。ゴーストバスターズ本部で受付嬢をされていたアニー・ポッツさんでした。懐かしす。

他にもシガニー・ウィバーがビル・マーレー演じるピーターと結婚している風な演出も良かった。もう、この世界線でいいんじゃないだろうかと思えるほどに。もう、リプリーとしてエイリアンと戦わなくていいですよシガニーさん(笑)

※細かな演出
1では、プロトンパックから発射されるビームを複数人で「交差」させることで、何だか威力がアレになる感じ(ド文系的解釈)でゴーザが変身したマシュマロマンを倒すことができました。

これ、最終バトルでしれっと、当然のようにバスターズのオリジナルメンバーが交差させてるんですね。しかも多くを語らず「交差」させるカットイン映像のみの演出。ランドセルと傘をプロトンパックに見立て、ゴースト捕獲練習に明け暮れていた、自称ゴーストバスターズ山形支部出身のおじさんが興奮しないわけないじゃないですか(笑)

そして1を踏襲するかのごとく、バトル後にはちゃんとマシュマロまみれになったポッドキャスト君にはニヤリ。最期のレイ・パーカーJrの「ゴーストバスターズのテーマ曲」には拍手喝采。

※続編に期待感
監督もアイヴァン・ライトマンから息子のジェイソン・ライトマンにバトンタッチ。綺麗にゴーストバスターズが一子相伝されたわけですから、続編を期待するなという方が無理。エンドロール後に匂わせ演出もありましたし。

ラスボスが1と同様にゴーザだったわけですから、次はヴィーゴ(2のラスボス)の復活か…。いや、待てよ、元バスターズ事務所の捕獲タンクがアレな匂わせ演出があったから、全ゴースト復活的な筋書きの可能性もあるかもしれない…。

いずれにしても、ハロルド・ライミスさん亡き後のバスターズ本部メンバーがお元気なうちに続編を観たいものです。

※まだまだ語り尽くせないけれども、これにて御免。
最期に、これから「ゴーストバスターズ/アフターライフ」を観る方に切なるお願い。

お願いだから、1から順番に観てちょうだい!

コレです。本当にコレに尽きます。

継続しているシリーズ物の宿命と言えばそうなんですけれども、何よりも「ゴーストバスターズ」という30年以上続いている(物語の中での時間経過)物語を味わってほしいんです。いきなりアフターライフを観て、早計に判断しないでいただきたいんです。倍速再生してもいいから。

時系列で追うことで、増していく物語の「厚み」。きっとそれは、描かれていない部分も脳内補完できるほどに厚くなっていきます。

…。

そんな素敵な「ゴーストバスターズ/アフターライフ」、もといゴーストバスターズ「3」の感想アレコレで御座いました。これにて御免。

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