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勇気をいただいた一言

2019年、私はダイヤモンド社が主催する「経営塾」に参加していました。
これは、毎月1回、1年間にわたって各界の著名人、著名経営者の方が登壇して、約2時間、その方の経営思想や過去の体験談などのお話をお聞きし、勉強するというのもでしたが、その年の5月21日の講師は、カルビー会長からライザップのCEOに転身した、松本晃さんでした。

講演の内容はほぼすべて、カルビー時代のお話で、とても歯切れのいい素晴らしい内容だったわけですが、特に私の心に刺さり、自社でもやってみようと思ったことが、松本さんがカルビー時代に実施したという「夢を語る会」というオフサイトセミナーでした。

松本さんは
「明日、何が起こるかわからない時代に、3年後、5年後の経営計画を立てて一体何になるのか。喜ぶのはコンサル会社だけで、まったくの時間と金の浪費に過ぎない。」
と言います。

これ、私も大賛成で、コアバリューやミッションを議論するのは大切なことですが、3年先までの「計画書」を作ることに従前から何の意味も感じていなかった私は、松本さんの次の言葉に釘付けになりました。

「計画書なんか作ったって意味はない。その代わりに私は『夢を語る会』を毎年開催していた。若手の将来有望株とマネージャー層から厳選して25名くらいで、毎年夏にオフサイトで合宿をし、将来こういう会社であってほしいとか、こんな事業にチャレンジしたいとか、『夢』ベースでいいからグループディスカッションをする。その中から、これはと思われるものを拾い上げて、実際に採用して動き出すようにしていた。」

「若手社員たちも、この会に呼ばれることが一つのステイタスとなっていたし、実に活発に面白い会が毎年繰り返されていた」

そうだ、これをやろう、計画書なんてくそくらえだ。

そう思った私は、講演後の懇親会で松本さんと名刺交換をさせていただき、後日メールを送って、「夢を語る会」の具体的な実施方法や進行方法へのアドバイスをお聞かせ願いたいので、どなたか事務局を担当された部署の方をご紹介いただけないかと、お願いをしました。

メールにはもちろん、私の携帯電話のナンバーも書き添えていたのですが、2日後くらいに松本氏から私の携帯にショートメッセージが入り、
「〇日の〇時に電話をください、そこでお話ししましょう」
と書かれてありました。

指定された日時にお電話をすると、松本さんは落ち着いた口調で、私の質問に丁寧に答えてくださり、その最後にこう言いました。

「まあ、経営をやっていると、やることすべてがうまくいくなんてことはないけれども、逆にすべてが失敗するなんてこともないんですよ。思い立ったら何でもやってごらんなさい」

私は携帯を持ちながら、鳥肌が立つほど感銘を受け、そして勇気をもらいました。

そうだよな、すべて成功するなんてあるわけがない、実際に失敗だらけで軌道修正も実に多い、でも、全部失敗しているわけじゃないんだ。
よし、十分に計画を練って実行してみよう。

経営者の皆さんは、何か新しいことにチャレンジする時、失敗するんじゃないかという不安といつも背中合わせでいることと思います。

十分に計画し、勝算ありと思っていても、夜中にふと目を覚まし、あれでよかったのだろうか、抜け漏れはないだろうかと、朝まで寝付けなくなることなど、頻繁にあることと思います。

でもそんな時には、この松本晃さんのこの言葉を思い出してください。

「すべてうまくいくなんてことはないけれど、すべて失敗するなんてこともない」

私はこの言葉に大きな勇気をもらいました。

そして同時に「成功」というコインの裏側に書いてあるのは「失敗」ではなく「学習」、あるいは「経験」だということも、この時学びました。

さて、その「夢を語る会」ですが、その後実施に向けて計画を練ったのですが、結局実現することなく、私は会社を去ることになりました。

でもこの松本晃さんからいただいた言葉だけは、いつまでも私の心に残っていくことでしょう。

いつも心に青空を。

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