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計画と実行を切り離してはいけない

「あのプロジェクトはメンバーのモチベーションが低くて困ったものだ。」

こんな思いを抱いた経営者の方、または当事者として実際にモチベーションが上がらない状態のプロジェクトに参加したことのある方もいらっしゃるかと思います。

あるプロジェクトで、メンバーのモチベーションが上がらない理由はいくつかあります。

私の過去の経験上では、以下の3つが主に理由として考えられます。

1.プロジェクトリーダーの人選の誤り
2.他部署の非協力的な姿勢
3.評価に反映される見込みがないことがはっきりしている

だれをプロジェクトリーダーに任命するかという問題は、そのプロジェクトを成功裡に導くか否かにおいて決定的な要因の一つです。

ここを間違えるのには原因があって、ひとことで言えば任命するマネジメントが、その人物を「上司の視点」でしか見ていないことに起因します。

私も若いころに経験がありますが、専務が任命するA部長は部下からの人望が全くなく、どのプロジェクトを担当してもいつもメンバーはやる気が起きない、この人は部下のモチベーションを下げさせる天才だ、という人。

なのにいつも専務はA部長をプロジェクトリーダーに指名する、なんていうこと。

大抵の場合、プロジェクトリーダーが明らかになった時点で、周囲はそのプロジェクトがうまく進むかどうかがわかるものです。
でも、なぜか経営層にはそのことがわからないということは、実によくある話です。

また、リーダーの資質にも関係しますが、メンバーがやる気をもって進めようとしているのに、関連しそうな他部署が全く非協力的で、いつもそこでストップし、つまずいてしまうということもあります。

他部署のリーダーたちに話を聞いてみると、「そんなプロジェクトがあるなんて聞いていない」とか「協力が必要なら部長を通して言ってくれ」とか。

最初に勤めたメーカーではこんなことは日常茶飯事でした。

こうなるとプロジェクトメンバーのモチベーションは上がるわけがありません。

さらに、メンバーたちはプロジェクト専任であるということは滅多になく、毎日の業務を抱えた状態で参加してくるのですから、余程の動機づけがなければプロジェクトそのものが、単なる「プラスオン」の仕事となり、負担感ばかりが先行してしまいます。

評価基準にプロジェクトでの成果を加えることがはっきりしていない場合や、過去からの流れを見て評価対象になっていないことが明確になっていた場合には、そもそもスタート時点からアクセルが踏まれることはないようです。

経営側はそんなことには気づかないでいる場合が多々あります。

これらの問題の根っこは同じところにあります。

それは、計画を議論している段階で実行メンバーを議論に参加させることを怠っているということです。

例えば、企業の将来についてある課題に挑戦することが必須であるということを経営陣で議論したとします。

その課題を引き起こした背景や問題の本質を時間をかけて突き詰め、課題解決に必要な条件、例えば、いつまでに目標を達成するとか、投資費用はいくらまでとするなどを決めることは、経営の仕事として大事なことですが、問題はここからです。

では、課題解決のための具体策は何なのか、複数の具体策のなかで、どの解決策を選ぶのか、誰がプロジェクトの責任を持つのか、この話しを知っているべき人は誰なのか、評価基準を変える必要があるのかなどの、具体的なことまで、経営陣で決めてしまうのはよいことではありません。

なぜなら、経営陣には現場の実情が正確に見えていることは滅多になく、それは現場に近い社員が一番よく知っていることだからです。

山の頂上付近から見える景色と、ふもとで見える景色は違います。

従って、企業として今、何をやらなければならないのか(What)、それはなぜなのか(Why)まで決めたら、どうやってやるのか(How)は実際に現場に近い実行部隊に考えさせるか、少なくとも彼らを議論に参加させ意見を聴きながら決めていかなければなりません。

そうすることで、実際に行動に移そうとしたときに、経営陣では気づかなかった問題が出て来たり、調整が必要な内部事情が明らかになったりするものです。

そして何よりも、実行部隊にとっては「このプロジェクトは自分たちが決定に関与した」という、決定的な動機付けが生まれます。

これこそが、実行メンバーがそのプロジェクトを自分ごととして捉えることができるかどうかの、大事なポイントになります。

プロジェクトを成功させたいなら、計画と実行を切り離してはいけません。

計画する経営陣自身は実行しないのですから。


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