見出し画像

二時間だけの、

5月に入ってからの彼も、それはそれは忙しそうだった。毎日おはようとか、もう寝ますとか連絡をくれるものの、ラブいやり取りじゃなくて、戦場からの生存報告という感じ。「いまから仮眠とります、今日もがんばろうね」とか、朝にメッセージが来たりしていた。

この歳で徹夜、つらいんだよなー、と身体が心配になった。私もなかなか仕事で忙しくしていたし、陽気な雑談も、変な励ましも、しばらく控えとこ、と犬の散歩をしながら考えていた。

そしたら早朝、「今日もさ、忙しいの?」と聞かれた。連絡をくれた日に、大きな仕事の区切りがつきそうだという。忙しいのはあなたでしょ、と思いつつスケジュールを伝えたら、少しだけ会えることになった。

お茶だけして早く帰そうって思ったけど、行こうと思った喫茶店は空いてなくて、「こっち」と言う彼について行ったら焼き鳥屋だった。勢いよく飲んでしゃべって、一緒に電車で帰った。まだ酔っぱらいが騒ぐような時間じゃなくて、電車の中はサラリーマンたちがスマホをいじっててすごく静か。それでも、彼のお家にとっては遅い時間の帰宅になる。

顔を寄せてくだらないことをこそこそしゃべったり、手を触って、ほんの少しだけ体重を傾けあって座っていた。身体がくっついてる側がじわあ、と心地よかった。しっかり彼を摂取した気分になったけど、時計を見たらちょうど二時間しか経ってなかった。

いま出来るかたちで、心身に無理なく続けよう。といたわりと自制を重ねた結果、付き合う前の大学生みたいになってて笑える。どエロいアラフォーカップルだったんだけど。

でも、私だったら「顔見たら元気出る」レベルを超えて疲れてる日は、彼に予定を聞くことすらしないかもと思った。一刻も早く帰って寝たいし。そういう日に会おうとしてくれたことが、うれしかった。ひと山越えたからか、少しホッとした顔して、寝落ちしそうになってる彼を見たら、いじらしくて、愛おしいなーと思った。

婚外恋愛自体が、隠し事をしたり、ないはずの時間を工面したり、「わざわざ」やってることだ。だからって、「こんなに大変なのに…」とか、「わざわざ私のために…」みたいな落差で喜びを得るのは、なんか違うとも思う。

でもこういう時は、素直に喜ぼう。エロい話もないし、ずっとうだうだしてる記事で、読んでるほうはつまんないと思いますが、いい夜だったので備忘録🍺

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?