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南平台の記憶・その14 はじめてのおつかい

アルバムに、わたしの「はじめてのおつかい」の瞬間をとらえた二葉の写真が残っている。前後の写真から、昭和43(1968)年、わたしが三歳終盤の夏だろう。

南平台アパートには、昭和40年代、いろいろな移動販売の人たちが来てくれていた。
「はじめてのおつかい」に行ったのは、お豆腐屋さんだった。

この時のことは、よく覚えている。内弁慶のわたしは家では威張っていたが、外に出ると声も出せなくなる子供で、行くのが嫌で嫌で、ずいぶん抵抗した。

が、最後には諦めて出かけた。
金のボウルを持って【キンではなく、カナモノの!】。

実は、記憶はここで止まっている。

いつも母について行っていたから、どうずればいいのかはわかっていた。でも果たしてちゃんと「お豆腐一丁ください」と言えたのかどうか・・・。

写真を見ると、おじさんが、とても優しく接してくれているように見える。きっと察してくださったのだろう。

親が二階から、ガラス窓越しにハラハラしながら見守っていた


写真に残っているように「はじめてのおつかい」はうまくいき、無事に役目を果たしたようだ。
きっと親にも褒められたのだろうが、まったく記憶にない。あまりに緊張したので、その緊張が解けた瞬間に全部忘れてしまったのだろう。

そうそう、お豆腐屋さんは、自転車で、とーふ↗︎という少し上がり調子の「プープ↗︎」、という笛を鳴らして来ていたなあ。なつかしい。

ありがとう、お豆腐屋のおじさん。

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