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パイロットのコクーンに関する私の誤謬

最近とんと使わなくなってしまっていたパイロットのコクーン。はて、一体どこが気に入らなかったものかと振り返ると、

  1. ポストしたキャップが安定せず、不意に外れてしまいがちであったこと。

  2. 首軸と胴軸との境に相当の段差があり、指が痛いと感じたこと。

  3. クリップが当たっている箇所の塗装が剥げてしまい、気持が萎えたこと。

  4. ニブが板のように固く、面白味に欠けると思ったこと。

  5. 引いた線に濃淡が出ず、一様で、愉しめなかったこと。

以上が思い出されます。

Pilot Cocoon Medium nib / Sailor Shikiori Yamadori / Life Noble Note A5

しかし、ここ数日、改めて使ってみての感想は、

  1. ポストしたキャップはたしかに安定しているとはいえませんが、ペンを振り回したりしなければ……まあ普通に書くぶんには外れて飛んで行ったりはしないでしょう。もしぐらついたら嵌めなおす手間はかかるかもしれません。いや、やはり外れることもありますね。今外れて落ちてしまいました。(二三日後)ポストしたキャップは、安定感こそないものの、外れて落ちるということはなくなりました。まあ、寝そべって書いたりせず、好もしい書く姿勢を保つぶんには、そうそう外れるものではないでしょう。外れそうなキャップを親指と人差指の間に載せて筆記を続けるのもなかなか乙なものです。

  2. 首軸と胴軸の境にはたしかに段差がありますが、以前は無意識にせよ、余程強く握っていたのではないでしょうか。今は比較的軽く握るからか、段差があってもそんなに気になりません。

  3. ペンは落としたりしないように気をつけはしますが、普通に使っていて塗装が剥げたりするのは、それはもう仕方ありません。クリップが当たっている箇所のちょっとした塗装の剥がれなど、そもそもクリップに隠れているのですから、まったく気になりません。

  4. ニブは、私の記憶のなかではそれこそ、お好み焼き用のコテのようなイメージになっていたのですが、さすがに、というか全然そんなに固くないです。お好み焼き用のコテのように固いなどというのは完全なる誤謬であり、ペン先にはそこはかとない柔らかさも感じられます。

  5. 以前はパイロットの色彩雫を入れて使っていましたが、インクの出が少し潤沢に過ぎるなという感想を持ちました。これはセーラーの四季織、山鳥ですが、こちらのほうがインクの出が幾らか控えめで相性がよいと個人的には思いました。引いた線にあまり濃淡が出ず一様だとの印象も、おそらくは粘度が低いとされる色彩雫との相性によるもので、この山鳥を合わせればなかなか面白いじゃないか、と一八〇度反対の結論が導かれました。

Pilot Cocoon Medium nib / Sailor Shikiori Yamadori / MD Notebook A5

難点として冒頭に挙げた点の大半が私の誤謬や、万年筆ユーザーとしての未熟さが招いた事象であったことがわかりました。さて、このコクーンによる以前の筆記を見つけたのですが、こうして見ると案外に面白い濃淡が出ているぞと驚きました。

Pilot Cocoon Medium nib / Pilot Iroshizuku Shin-kai (August 2019)

どうも今となっては、このコクーンをあまり使いたくない事情が私にまずあって、そこに向けていろいろと難癖をつけていたのではないかと疑われます。その事情とは、おそらく他のペンを使いたいという気持でしょう。各々のペンを愉しむには、時間は限られていますし、あまりたくさんのペンがあっても困るのです。

思えば万年筆を使い始めた最初期は、次はあんなペンを、次はこんなペンを使ってみたい、と焦っていたように思い出されます。また、どちらのペンがよりよいだろうかと白黒をつけたがる傾向もありました。

改めて、私はこのコクーンが気に入りました。どちらのペンも素敵じゃあないか、と少し気持に余裕の出てきた今こそ、このペンを愉しみたいと思います。

Pilot Cocoon Medium nib / Sailor Shikiori Yamadori / Tsubame Notebook H30S

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