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パイロット万年筆インキ青(70ml)とカスタム823

パイロット万年筆インキ青(INK-70-L・70ml)を購入しました。この70mlのボトルは、ブラック、ブルーブラック、そしてこのブルーの三色があります。パイロットのペン、カスタム823の推奨ボトルとされており、私もカスタム823を使いはじめた2019年9月に合わせて購入するべきか検討しましたが、まあ、まずは手持ちのインクでも十分ではないかと考え、見送りました。カスタム823には色彩雫の紫陽花を入れ、うん、とてもいいじゃないかと悦に入っていました。

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Pilot Custom 823 Medium nib / Pilot Iroshizuku Ajisai (November 2019)

早いもので三年が経ちました。ところが、不意に70mlのボトルを使ってみたい気持ちが再燃して、今度こそは実際に購入しました。このボトルは中央に円筒が仕込んであります。インクが減ってきても、下図の方法でその円筒に追い込むことで、十分な深さを確保することができます。

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これはカスタム823にかぎらず、どの万年筆でも使いやすいだろうと感じました。特にカスタム823は、いったん高く引き上げた尾栓を押し込むことでインクが補充されます。押し込むときに図らずも勢いがついて、ペン先を底にぶつけてしまうのではないかと不安を覚えたことがありました。その点、このボトルはインクの十分な深さを作れ、底までの余裕も保てるので安心感があります。やはり推奨されるだけの理由はあるのだとわかりました。

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Pilot Custom 823 Medium nib / Pilot Blue (October 2022)

さて、肝心のインクについてですが、とても気に入りました。色彩雫の紫陽花は、そこが好きな点でもあるのですが、いくらか華やぎを帯びています。もっと落ち着いた色調のこの青は、普段使いにはより適しているのではないかと感じました。いずれにせよ、インクの補充のしやすさもあるので、カスタム823には少なくともしばらくはこのボトルを使っていくつもりです。

なお、カスタム823については、初めて手にしたときに感じた「リニアモーターカーのような書き味」という印象が今も変わりません。後記はそのときのメモを若干修正したものです。それは大変に好もしい印象で、私が持っているペンのなかで、書き味が一番好きなものをいま選ぶならば、たぶんこのカスタム823になるだろうと思います。

 あるペンは書き味もそこそこよく、すらすら書けるので、原稿用に使ってみることにしました。ところが、頭で組み立てた文章を早く紙に載せたくて、書くスピードを速めたときです。手の動きに対して、ペンの走りが少し遅れてしまう感覚がありました。それは、ゆっくり書いていたときに生じなかったことです。
 今、原稿用に使っているのは、その問題が生じない、いわば「思考の走りを邪魔しない」ペンです。頭のなかの文章を早く紙に載せようと私が急いても、遅れることなくぴたりとついてきてくれます。
 さて、いよいよパイロットのカスタム823をその用途に使ってみました。うん、いいですね、ぴたりとついてきてくれます。行けるぞ、と書くスピードを上げたときでした。今まで体験したことのなかった書き味に私は驚きました。何というか、リニアモーターカーのような書き味です。リニアモーターカーに乗ったことはありませんが、SF映画の想像上の乗り物のように、地面や線路に接さず、浮いて走っているような感じです。
 これはいいぞ、と私はさらにスピードを上げました。すると、ある時点から、私が書いているのだという感覚はもはやなくなりました。そうではなくて、ペンが書くことを生み出しているような感じです。このペンは「思考を邪魔しない」だけでなく、「思考を導いてくれる」ペンでした。それは単に書き味が心地よいというだけではありません。病みつきになりそうな予感がします。(2019年9月)


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