インナーチャイルドとの暮らし ①

 ふと、わたしはわたしの中に小さな子どもがいる気がした。いわゆるインナーチャイルドというやつかもしれない。今まで本で読んでその概念は知っていたけれど、あまりしっくり来ていなかった。けれど、ようやく、というか、そういうタイミングなのか、インナーチャイルドのイメージが浮かんできた。

 その子は2、3歳くらいの女の子だ。俯いて体育座りをしていて、こちらを振り向いてはくれない。黒い髪は肩の辺りで切り揃えられてさらさらと流れるように滑らかだ。
 もしかしたら何かぬいぐるみを持っているのかもしれない。自分の中になにかを抱き込むようにして、小さな身体をもっと小さく縮こまらせている。

 その子に話しかける。自分が恐れていること、今感じている不安を重ねて、大丈夫だよと言う。あなたは何も悪くないし、わたしが必ず守るからね、と言う。その子は小さく頷いたけれど、納得しているからではないように見えた。とにかく、大人の言うことには何でも頷くのがいいと思っているみたいだ。

 わたしがそうされたかったみたいに、その子を後ろからぎゅっと抱きしめる。抱きしめているのはわたしなのに、わたしも抱きしめられているような気がした。大丈夫だよ、何も怖くないよ、と何度か呟く。また返事はなかった。まだ何かを怖がっているようにも、何かを諦めているようにも見える。ほとんど反応はなくて、こちらを振り向くこともない。

 彼女との日々はきっと長くなると思う。だから、すぐに返事をしてくれなくても、振り向いてくれなくても構わない。

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