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検査のために下着の中を見られた話

 プライベートパーツに関する話題が主になります。性被害などのトラウマがある方はご注意ください。
 また、個人的な体験談ですので、医学的な正確性に欠ける部分があります。病気について疑問点や心配なことがある場合は専門医にご相談ください。




 最近、学校の検診において医師が同意なく児童の下腹部を診察したという事件が報道されている。

 この医師は性分化などを専門としているらしく、その研究や、思春期早発症という病気の発見のために行ったとのことらしい。

 わたしは小学校低学年の頃、思春期早発症の疑いありということをかかりつけの小児科医に言われた。その時に感じたことについて書きたいと思う。また、この事件で被害を受けた子どもたちのショックについて、ほんの僅かではあるが通じる部分があるかもしれないと思うので、このタイミングで文章を書こうと思った。
(正確にはもしかしたらこの病気ではないかもしれない。子どもに説明するためか、「身長が伸びなくなるかもしれない病気だ」としか言われなかったからだ。しかし当時の状況を考えて思春期早発症だったとするのが妥当だと思う。)

思春期早発症について:

 かかりつけ医はおそらく聴診のときに乳房の早期発育を認め、この病気を疑ったのではないかと思う。主治医も女性だったため、上半身を見せることに恥ずかしさを感じたことはなかった。乳児の頃からお世話になっている先生だということもあったかもしれない。

 このかかりつけ医は思春期早発症に関しては専門ではなく、専門としている病院で診断を受けるように言われて紹介状を書いてもらった。

 紹介された病院には医師が(おそらく)一人しかおらず、男性だった。そこで詳しく検査することになり、手のレントゲンを撮影したり、血液検査のための採血を行ったりした。その中に陰毛の確認もあった。
 診察の前に、看護師から「診察のためだからパンツ下すね。ちょっとだけだからね」と言われた記憶がある。それにたぶん頷いたのだが、そのあと間髪入れずに下着の中を見られた。それが幼いながらにとても不快だった。今でも思い出して嫌な気持ちになる。

 もちろん、必要な診察だったということは当時も今も納得している。看護師に「説明」され、わたしも両親も口頭ではあるが承諾した。だから手続きとしてはどこにも問題はないはずだ。それでもとてもショックを受けた。

 その理由のひとつは、その「説明」や納得したからどうかの確認を形式上だけで済まされたことにあると思う。子どもだから分からないだろうと思われたのか、子どもに性の話をしたくなかったのか、「身長が伸びないかも」というようなことだけを説明され、細かい話は親に向かってされていた。わたしにとっては、わたしの病気について大人たちだけで秘密の話をしているように見えた。しかも何やら成長に関わることらしい、性に関することらしいという雰囲気だけが伝わってくる。そのせいで不信感や羞恥心を抱いた。
 納得したかどうかの確認についてはかなりうやむやにされたと思う。看護師と医師に囲まれて、いいよね、という口調で許可を取られても、子どもは頷くしかないと思う。少なくともわたしはそうだった。考える時間すら与えられなかった。診察が終わってから、嫌だったな、という感情が湧いてきた。

 それに加えて、異性の親が同席していたのもショックを大きくした原因だと思う。小学校低学年ならいいだろうと、両親も医療スタッフも思ったのだろう。わたし自身もその時は疑問に思わなかった。しかしデリケートな診察の中で異性の親がいるという状況は心理的にはよくないものだっただろうと思う。同性の親だけが同席していた場合を想像してそう感じる。

 診察が終わり、家に帰ると、親が大変な病気じゃないからと励ましてくれた。親から見てもわたしの落ち込みようは相当だったのだろう。しかしわたしは病気であったことに落ち込んでいたのではなく、あっけなくプライベートパーツを見られたことに落ち込んでいた。当時はそれを自覚する能力も言語化する能力もなかったから黙っていたが。

 結局、わたしは診断こそおりたものの、成長ホルモンなどの治療は行わなかったので、その後その病院に行くことはなかった。ちなみに平均身長は超えたのでこの判断は結果オーライだった。全て結果論に過ぎないが。


 このように、確実に病気の診断のために必要である状況であってさえ、プライベートパーツの視診は手続きの仕方や患者本人の感受性によっては大きなショックを与える。今回の学校検診のように、一切説明がなく、また必要性もさほどない状態での診察では児童たちのショックはかなり大きかったのではないかと推察する。

 正直あまり思い出したくもない事件なのだが、この病気になる子どもは一定数いるので、体験談として残した方がいいのではないかと思って書くことにした。

 あくまでも個人的な考えだけれど、こうして欲しかったな、という改善点を挙げてみる。

  • 同性の医師に診察して欲しかった。

  当たり前といえば当たり前の希望かもしれない。しかし当時行ける範囲の病院は紹介されたこの病院しかなかった。地域医療の問題、医師の男女比の問題にも関わるだろうが、可能であれば同性の医師がいる病院で診察を受けるのがよい。本来なら「可能であれば」ではなく、「必ず」というのが患者の権利だと思う。しかし現実的に必ずそうできるとは限らない。

  • 包み隠さず説明して欲しかった

 年齢によって適切な性教育の内容や理解できる範囲は異なるだろうが、それでも理解できるような説明を受けたかった。少なくとも大人たちだけで何事かを秘密のうちに進めているような、そんな雰囲気を出してはいけないと思う。そのような態度は子どもにとって不安や不信の元となり、診察によるダメージが大きくなるのではないかと思う。
 また、その際にどのような診察が行われるかについても説明があると良いと思った。特に男の子では触診もあるだろうと予想されるので、事前にその理由を話しておくことでショックが和らぐと思う。

  • プライベートパーツについての説明が欲しかった

 上記と重複する部分もあるが、当時のわたしには、プライベートパーツを勝手に触られたり見られたりされない権利があるということ自体知らなかった。だから医師がわたしの身体を診たり触ったりすることは当たり前で、嫌な気持ちになる自分がおかしいと感じた。

  • 同性の親のみ同席して欲しかった

 診断を受けるのは小学校低学年であることが多いと思うが、それでも異性が同じ診察室にいること自体恥ずかしかった。現代でも、男の子に母親が付き添うということはよくあるかもしれない。その場合はその場にいても良いか尋ねて、返答によっては席を外すのが良いのではないかと思う。また、看護師も診察室にいることがあると思うが、看護師の性別についても気を遣った方が良いと思う。親が席を外して子どもだけにすることには危険性やデメリットもあると思うので、子どもを説得したいということになるかもしれないが、そこもやはり分かってもらうことが重要だと思う。

  • 納得するまで待って欲しかった

 子どもがプライベートパーツの診察について許可を出す時、周りの大人の顔色を窺ってしまうかもしれない。そのことに気を留めて、もし少しためらっているような感じや、納得していない感じがあればその気持ちを受け止めて欲しいと思う。最終的には診断のために必要なことであるから、いずれにせよ診察は行うことになるとは思うが、その過程で子ども自身が納得できたかはとても重要だろう。

  • 診察後のフォロー

 診察のためには見せる必要があったが、本来他人に見せない、触らせない権利があるのだともう一度説明しても良いと思う。どうしても、不快感は残ってしまうと思うので、その感情は正当なものなのだと共感して欲しい。

プライベートパーツについて:

 この記事ではわたし個人の体験から、思春期早発症の診察を受ける子ども目線で改善点について考えてみた。20年ほど前の話なので今ではすでに改善されていることも多々あるかもしれないが、家庭での性教育や病気の説明などは保護者によるフォローが必要になると思うので、少しでも参考になればと思う。

 重ねて、学校検診の場においてはさらに慎重な説明と同意の有無の確認が必要であることを書いておきたいと思う。今回の事件でそれが全くなかったことは非常に大きな問題だし、二度と起きてはならないことだ。被害を受けた子どもたちには十分なケアがなされることを願う。


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