わかんないよ

 僕には「正しさ」というものが分からない。常識的にこうすべき、あるいはすべきでない、そういうものが判断できない。

 いちおう、周りを見て大丈夫かなとかやめとこうかなとか判断することは出来る。けれど、そこに自信は全くない。だから別の誰かに「きみは間違っているよ」と言われたら、そうなんだ、僕が悪いんだ、と思う。

 それは幼少期から色んなことで怒られてきたからだと思う。理不尽なこともたくさんあった。だから、していいこと、いけないこと、の区別は父親が起こるかどうかに依存していた。そして父親は気分次第でどんな行為に対して怒るか変わる。だから僕にはして良いことと悪いことの区別がつかない。

 今だって、怒られなければOK、怒られたらアウト、として考えている。そして過去に怒られたことを逐一思い出してはこれは怒られることなんじゃないか、と怯えている。

 こういう理由で、こうしましょう、これはしてはいけません、みたいなことを考えられなくもない。でも基本的には全部悪いほうに考えて、怒られないことだけを目的に判断してしまう。

 だから僕には善悪の区別とか倫理的な判断とか優しさとかそんなものは持ち合わせていない。教えてもらえなかったから。理不尽に怒られてもそれが理不尽か分からないし、怒られなかったら別にいっかって思ってしまう。

 自分の信念とか正しさとか常識とか、そんなものが全然分かんない。ただひたすら怒られるのが怖い。怒るくらいなら殺してくれよ。怒られるのは死ぬより嫌だから。

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