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割れる卵黄/かけた前歯

私の右前歯は欠けている。小学2年生のとき、公園で口を開けた状態で転倒。遊具に歯を打ち付けてしまったのだ。残念なことに永久歯だった。欠けた部分はプラスチックのようなもので補われている。私が口を開けるたびに、プラスチックだけが見られているような気分になる。

このプラスチック部分は日々汚れる。夫との何気ない会話で口を開けガハハと笑ったところ、「前歯、汚いんじゃない?」と指摘された。どんなに素敵な笑顔を振りまいても、みんなの視線はプラスチックにいく。それでも私は笑い続ける。

かくいう夫も、同じく右前歯が欠けている。理由は失念したが、我々はちょっと間抜けな夫婦である。しかし、盗み見た夫のプラスチック部分はとても綺麗だった。私は早々に歯医者に行く必要がある。

きのこバター醤油スパゲティ

突然だが、これは昼飯に食べたきのこバター醤油パスタである。そっと落としたはずの卵黄は、パスタの上で崩れて割れた。原因は一つ。卵黄ポケットを作らずに落としたからだ。

とろろ月見そば

こちらはいつぞやのとろろ月見そば。大変見事な割れっぷり、卵黄が分離してしまった。2つ卵黄を落として2つとも割ったかのような姿。事件感は否めない。

潔い割れ方、これは芸術に近い

とろろそばは好物につき、食べる機会が多い。そしてほとんど毎回卵黄をおとして月見にする。数多くの卵黄を割ってきたが、犯行現場として最多なのがとろろそばの上である。

ざるそばだろうが、割れるものは割れる

もちろん卵黄を落とすときは、慎重、丁寧、真剣そのもの。気持ちが裏目に出てるのかもしれない。

アボガドわかめうどん

お次はアボカドわかめうどん。白だしを使った和風仕立て。ミツカン様々である。
これはわりと上品に割れたほうだ。卵黄の形は辛うじて成している。私にしては上出来だ。

夫の花粉症の証(アレルビ)が
右上で日向ぼっこしている

ちなみにこの日は夫のも割った。夫は気にしない。だから妻も気にしない。

割れる卵黄とかけた前歯

卵黄が割れることはやはり少し悲しい。自分の手でドキドキしながら割るのとではわけが違う。自分の意思で、タイミングで割りたい気持ちはある。慎重さと工夫が足りないのだろう。学ぶ姿勢も足りてなさそうだ。

一方で割れたら仕方ないと思っている自分もいる。どうせいつか割るし、とか思ってる自分もいる。むしろそんな自分しかいない可能性もある。人間はよくわからないところがあり、無意識に矛盾を産んで生きていると思う。

ちなみに欠けた歯のことはすでに何も気にしていない。自分の人生の一部である。歯が欠けてしまうほどに前のめり性格だから、きっと卵黄も割ってしまう。歯が欠けてしまうほどの勢いの良さがあったからこそ、夫と出会えた可能性もある。そう考えると歯のかけた人生も、案外悪くない気がするのだ。



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