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床寝について

 床寝、してますか?

 私と言えば床寝のエキスパート。学生の時分より床寝を続けて十五年。少なく見積もっても週の半分は床で寝ている。
 布団やベッドで寝た方が気持ちが良いし疲れもとれるのは百も承知だが、床寝はやめられない。特に冬。ホットカーペットの上でドロドロのチーズになって寝るのが最高である。もうこのホカホカ絨毯の奴隷でいいって思いながら寝る。最高(最低)。

 そもそも、なぜ床寝してしまうのか? ぶっちゃけ「無精だから」の一言で終わると思う。しかし、もう一つ、「駄目なのはわかってるけど今これをしなければ自分死ぬ」みたいな、破滅願望? みたいなのがないでもない気がする。
 ネットフリックスとかYouTubeとかKindleとかスマートフォンとかの映像・画面をただ網膜に映しているだけの状態になって、やがて床の上で睡魔に屈服する。その瞬間、「ベッドに行け!」「布団を敷け!」「身体痛くなるよ!」と叫ぶ内なる己や、時には家に遊びに来ていた朋友などの声がもちろん聞こえる。それに対し「ウルセエ! 知らねえ!」で床寝でくたばる。
 本当は全部わかっているんです。しかしあの衝動には勝てんのです。「眠り」という副交感神経MAX、脱力の極致、気絶に向かいながらも、謎の衝動に突き動かされている。もうどうにでもなれ、眠いから寝る、今ここで。

 朝方、さすがに寒いな……とかで瞼を空けて時計の針が目に飛び込んできた時は割と絶望する。これからベッドに向かったとして、もうあと一、二時間しか寝れないじゃん、勿体もったな……。身体、バッキバキ……。またやってしまった……。
 過ぎた時間は戻らない。何故、ベッドに行かなかったのか? 何故、床で寝ることを選んだのか? その時ばかりは昨晩の自分が全く信じがたい存在にも感じるのだが、その日の晩にまた床で寝たりする。

 床寝をする人は、「絶対にそれしちゃダメだろ」っていうピカレスクムーブしちゃう人の気持ちがきっとわかる。あれは抑えがたい衝動。ってゆーか決定的な自殺行為を避けるためにやっているのかもしれないな、日常のピカレスクを。最悪なことに大地で床寝、つまり路上で寝たこともあるが、さすがにあれは日常化できない、冬とか寒いし、虫とかヤだし。だが床寝なら。

 果たして私は今日も床寝をするのかどうか、それはその時になってみなければわからない。

 

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