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人生初の、怒り

※この記事はフィクションです

かなりムカついたことがあるからちょっと聞いてほしい。

バイト先で挨拶を無視されたんです。
しかも2回。

私が働いているバイト先では、従業員とすれ違ったら「お疲れ様です」と言うのがルールである。これはおそらくほとんどの職場がそうなのではなかろうか。

だが、休憩から自分の持ち場へと帰るときに私が「お疲れ様です」と言っても、そいつ(同僚と2人で作業している)は2人で喋っている。

私はとっさに『いや、私の声が小さかったのかもしれない』と思った。私は元々声が通りづらいので、そういうこともあるだろうと自分の持ち場に帰っていった。

作業を終え、また店外へごみ捨てに行く時に、私はまたそいつとすれ違った。今度はかなり大きな声で挨拶をした。だがそいつは何も言わない。同僚も。

『いじめだ…』私は寒気がした。

相関図

「いや、そんなんでいじめって言われたら敵わんわ」などと思った人もいるかもしれないが、やられた人がいじめだと認識したらそれはもういじめである。私はいじめられているので、然るべき対応を取らなければならない。
今回は見逃してやるが、次同じことをされたら上に報告するつもりである。

私は絶対にこのバイトを辞めたりしない。
辞める前に辞めさせる。
殺される前に殺す。

私って怒れるんだ

「怒震涙止」という言葉がこの世にはある。
私はずっと「なぜ怒ったら震えるんだ」と思っていた。でも今ではとてもよく分かる。人間は本当に怒った時には指が震える

だが、99%の怒りの中で私は1つ、ある種の感動を覚えていた。

それは、「私って怒れるんだ」ということ。実は私の心には「怒り」という感情が搭載されていないのではないかと、密かに悩んでいたのである。

私は今まで人に対して怒ったことが無かった。
基本的に自責思考罪を憎んで人を憎まずをモットーとしているからである。

今回のことも、少しでも私に落ち度があったならこんなに怒ってはいないだろう。しかし私は何も悪いことをしていない。

心当たり

心当たりといえば「1週間前、仕事が終わらないそいつを尻目に定時で上がった」ことぐらいだが、そもそも私とそいつは部署が違うので手伝う義理などない。

しかもそいつが残業してる理由なんだと思う?

1時間遅刻してるからなんだよ!

自分1時間遅刻してるくせに、残業しそうだからって私に手伝いを求めてくるんだよ!ムカつくよ!

化け物だ…

私のバ先には、化け物がいる…

怒りを楽しむ

私は自分の持ち場に急いで戻り、くっそデカい溜息をついた

「マジかよ…あんな奴実在するのかよ…スカッとジャパンの前半じゃねぇか…」

「やること小学生だよ…そんなんでよく大学受かったよな…」

「てか自分のことぐらい自分でやれよそもそもよぉ…それで給料もらってんだろ…」

「まず遅刻すんなよ…遅刻理由が学校の授業なら前もって対策出来ただろ…」

など

と、全てを口に出した。(私の部署はワンオペなので大丈夫)
口に出すことで怒りを増幅させようと試みた。

パンピなら怒りを鎮めようとするところであろうが、私は違った。初めての怒りを心ゆくまで堪能しようと思ったのである。

冷めゆく怒り

私は自分の周りに炎を燃やしながらバイト先を後にした。自転車に勢いよく飛び乗り全力で漕いだ。

自転車のスピードが早まれば早まるほど、耳のそばで鳴る風も強くなっていく。冷たい風だった。それにあてられ、私の怒りもだんだん鎮まってきた…

「アカン!!!!!!!!!」

私は自分の心に薪をくべ、怒りの炎を燃やさん燃やさんとした。

怒りが鎮まったらその時点で私の負けである。家族の元へ帰るまで、この怒りを保持しなければならない。

そうしてなんとか怒りを保持したまま家に帰った私は、家族にこの事を言い散らかしたのであった。

後日談

次の日バイトに行ったらみんな普通に挨拶してくれました。許す♡

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