豚モツ業者が検証する『ベトナム人の豚盗難事件』 その2 腹割り
その1では、豚をどのように豚舎から連れ出し、そして運んだのかということを書いた。
まず豚を運びこんでくるだけでもこれほど困難なのだが、それを解体して売るとなると、もっとたいへんな作業が山となっている。こちら砥城は交通事故で更新が滞ったが(被害者)、続けてこの事件を検証して、書いていこうと思う。
豚を運びこんだのは、盗難した者たちのアパートだろう。それがもし2階であれば、力自慢の男数人が運ばなければならない。同じ重量でも金庫など形が固定されたものより、感覚的重量は倍加される。豚が死んでいたとしても、かなり大きな音を周囲に響かせることになる。周囲もベトナム人で固まっていたのだろう。
解体したのは、水で流せるという点で風呂場が有力だ。広さから考えればブルーシートを敷いた部屋ということになろうが、部屋では水を流せない。狭くて作業をしにくいだろうが、やはり風呂場と考えるのが妥当だ。解体作業は大量の水を要する。それに、部屋よりも風呂場の方が、血がこびりつきにくい。
通常の屠畜作業では、電気ショックで気絶させた豚ののどを割いて血抜きをしながら絶命させたあと、豚を逆さに吊るす。吊るし方は以下のとおりだ。
まず、屠場にはY字フックがたくさん用意されている。Y字フックはゴムホースくらいの太さの鉄でできた、大きさ30センチくらいの頑丈なものだ。枝分かれした上部両端が、くるりと返っている。先が尖っているが、さほど鋭くはない。そして下部が輪っかになっている。絵が下手で申し訳ないが、以下のようなものだ。観賞用でないので、これで十分理解していただけると思う。鉄でできてあって、かなり重い。
そのY字フックの両端に、絶命した豚のアキレス腱の箇所を切って引っ掛ける。そしてフック下部の輪っかを、ベルトコンベアーから垂れるかぎ針に掛ける。豚の血抜き場所ではベルトコンベアーは低くなっているので、足の部分をちょっと持ち上げればかぎ針に掛けられるのだ。ベルトコンベアーは斜めに上がっていきながら進み、豚はそれに引きずられながら足を上にして上がっていく。
吊るすまでの作業は、以上だ。屠場では次々処理していく関係でこうするが、今回の事件では1頭2頭という数なので、吊るしなどしなかっただろう。寝かしたまま作業しても、数が少なければ特段問題ない。
吊るされた豚は、その後腹を裂かれることになる。これは次回で。
(つづく)