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わざわざ「おこげ」を作るために、鍋で炊いてます

 ずっとずっと前、1950年代の、4コマ漫画のサザエさん。
 サザエさんがワカメちゃんを連れて、ちょっとお金持ちそうな女性のところに行ったという設定。その女性に好きな食べ物を聞かれたワカメちゃんは、「ごはんのおこげと魚の目玉」と言う。サザエさんは恥ずかしさで真っ赤になり、その後ワカメに怒るという内容。
 
 時代が変わってオチが分かりづらいが、ようは、ワカメが貧乏人丸出しの食べ物を挙げてしまい、サザエさんが恥をかいたという意味だ。
 日々変化をつけられない貧しい食生活の中で、香ばしいもの、甘美なものは、それくらいだった。
 
 それから時が経って、「おこげ」は、日常の中で唯一香ばしいものというわけではなくなり、食事中のちょっとした楽しみ程度に、ランクが落ちた。お菓子が世間に出回り、「おこげ」の香りと歯ごたえを超えてしまったからだ。
 さらに、現在では、良質の炊飯器具によって、「おこげ」そのものが絶滅してしまった。
 
 正直ぼくも、ワカメちゃんほどのものではないが、「おこげ」は好物だった。ぼくの時代は、もう炊飯器だったが、品質が悪かったのだろう、ときおり「おこげ」ができた。
 
 その「おこげ」を食べたくて、ぼくは炊飯器は持っていても使わず、鍋でごはんを炊いている。
 鍋での炊き方は、簡単に書くと、蓋をして強火で沸騰させたあとに弱火で20分程度、そして炊きあがりの香りがしてきたら中火で1分。そこでタオルでくるんで蒸らし、しばらく経ったら完成となる。
 水の量は炊飯器と一緒だし、そう難しいわけではない。ガスの火を使っているから、離れられない不便さはあるが、その程度のちがいだけだ。
 
 この上記の手順中、最後の中火を長めにするとおこげができる。

 画面から香りが漂うような、魅惑的な眺めだ。色の付いた部分は焼きおにぎりの食感だが、醤油の邪魔が入らない分、純粋なお米の甘味が味わえる。



 
 鍋で炊けば、炊飯器の無味乾燥な機械音も聞かないで済む。鍋の蓋がカタカタと鳴る音は、気分的にもいい。
 
 いいことばかりだが、デメリットもあって、作りたてを食べすぎてしまう。ちょこちょことお代わりを繰り返し、腹が痛くなることもある。
 
 しかし、この香ばしさはおススメだ。自炊されている方は、ぜひ鍋炊きで「おこげ」の素朴なお菓子感覚を味わってほしい。


駄文ですが、奇特な方がいらっしゃいましたら、よろしくお願いいたします。