予備出題論点一覧表付き~優先的に書けるようになりたいもの探ってみた~パート3公法系~

こんにちは、あるいはこんばんは。
アガルートにて司法試験・予備試験受験指導講師をしております、とげぬき法律事務所弁護士の寺岡です。

さて、

上記記事に続くパート3は公法系。これにて一区切りつくわけで。
前置きはなし、早速見てみよう。

憲法

憲法には色をつけていない。というのも、

「表現の自由はたくさん出てる!」

などと今更言うてもな、と。
ちょっと面白いのが、平成27年までは意外と統治分野からの出題があるということ。
そして、平成28年以降は出ていない(平成30年の冒頭でちょびっと出てるけど純然たる統治というか、裁判所法だし…)というのも特徴。

もちろん統治が出ないとは言い切れない以上、短答対策しっかりして少なくともどういう論点なのかそれなりに言える準備はすべきだろう。
が、メインはどうしたって人権分野だし21や22メインで学習した方がいいのもそのとおり。

予備過去の中で、実践的な問題といえるのは
H23、26、28、29、30、R01、02、03であろう。
14条、19条、20条、21条、22条、29条を学ぶことができる。
21条に関しては複数回聞かれているものの、見方を変えると、21条以外は1回ずつしかできない。
ゆえに、過去問”だけ”では足りない。生存権もないし。
そうなると問題集や司法過去を解いて作法を身に着ける必要があろう。

学習の順序としては、
①まずは典型的な21条論で憲法答案の型を身に着ける(知る権利や集会等、複数やりたい)
②その上で、経済的自由たる22条でバージョン変化(特に目的認定)
③次いで、13条、14条、19条、20条(89条も)、29条あたりの型を身に着ける。
④ここまでそれなりに書けるようになったら、15条、23条、25条、28条といった
”ちょいマイナーだけど出たら文句言えないし、手薄ゆえに勝手に上位に上がる系”
も最低限身に着けておく
⑤④よりさらに可能性低い統治分野について(部分社会の法理、国政調査権、憲法と条約との関係、公の支配などなど)最低限の論証だけでも覚えて何となく吐き出せるようにしておく

こんなところかと思う。

行政法

処分性、原告適格、裁量、個別事情審査義務(≒法規命令と行政規則)あたりを赤に、理由呈示の瑕疵を青とした。

全ての予備校の指導カリキュラムも知らなければ、法学部、ロースクールのそれも知らない。が、行政法は7科目中7番目に学習することが多く、法学部でも1年次から行政法の授業がある、というのはなさそう。そして、複数のロースクール入試でも課されていないことも考えると、

行政法は後回しでいーや

こういった受験生は多いだろう。
その結果、行政法のレベルは他科目に比して相対的に落ちるし、
「処分性、裁量、原告適格やっときゃいいんでしょ」
という発想になってしまうのではないか。

どの科目で点数を取っても同じなわけで、あえて手薄な行政法で手堅くAを取りに行くという戦略はアリではなかろうか。私も1回目受験で行政法でAがきたことがのちの大きな自信に繋がっている。

たしかに、行政法は難しい(と感じる)。が、民法・商法・民訴とパラレルに考えてみよう。
民法…実体的な問題
民訴…手続的・訴訟上の問題
会社法…訴訟要件、実体上の違法、手続上の違法の問題全部ある

これに対し、行政法では主に
①訴訟要件に関する問題
②本案勝訴要件に関する問題
 ②-1実体上の違法に関する問題
 ②-2手続上の違法に関する問題
が問われる。
①に関してはまさに民訴で学習した訴訟要件。訴えの利益とか当事者適格やったよね。会社法における決議取消しの訴え(会社法831条1項柱書)であれば「株主」か「3か月以内」かなど。
これの行政法バージョンが、
処分性や原告適格ということになる。

次に、②については2つに大別される。②-1については民事系でいうところの民法に近いが、これも会社法における決議取消しの訴え(会社法831条1項1号)とパラレルに考えるといいかも。学習したと思うが、

「決議の方法の…法令」違反と、
「招集の手続の…法令」違反とがある。
前者につき、例えば、定足数足りてなかった等がある。

これを行政法バージョンにすると
・要件充足性
・裁量
・信義則
・比例原則
・平等原則
このあたりが実体法上の違法ということになる。

②-2はまさに「手続」に着目する点で、民訴に近いか、あるいは、上記で述べたとおり、「招集の手続の…法令」(会社法831条1項1号)違反とに近いのかな。
これを行政法バージョンにすると
・理由呈示等ということになる。

上記が適切なたとえか悩ましい。
が、まとめると、
①訴訟要件と本案勝訴要件とを区別する(入口か、中身の問題か)
②前者につき、取消訴訟における訴訟要件を学び、特に処分性や原告適格の型を身に着ける※訴えの利益も判例に即して学習しておく
③後者につき、実体上の違法と手続的違法を区別する。
(実体上の違法として、裁量の型を身に着けておく)
※法規命令と行政規則の違いも必ず身に着けておくこと
(手続的違法として理由呈示の型を身に着けておく)
④取消訴訟以外の抗告訴訟について、違いを理解し(でなければ訴訟選択の問題を解くことができない)、訴訟要件を1つずつ条文に即して当てはめられるようにしておく
⑤取消訴訟以外の抗告訴訟について、本案勝訴要件の当てはめも出来るようにしておく
⑥さらにほかの論点もつぶしていく(違法性の承継、行政指導、国賠等)

こういった流れで(実際はある程度並行すると思うが)学習しておくことをお勧めする。

①がわかれば、何が問われているのかがわかる(書けるかは別)
②がわかれば、H23の説1、H25の説2の一部、H27の説1、H29の説2、H30の説1、R01の説1、R02の説2が解ける
(つまり過去問の半分の問題のうち、その半分が解ける)
③がわかれば、H24全て、H26の説2、H27の説2、H28全て、H30の説2、R03の説2が解ける

この時点で、H24、H27、H28、H30は全部解けることになる。

④がわかれば、H23の説2、H25の説1、R03の説1が解けることになる。

この時点で、H23は全部解けることになる。

⑤がわかれば、H25の説2が解けることになる。

この時点で、H25は全部解けることになる。

ここまでをまとめると、
①~⑤でH23、H24、H25、H27、H28、H30は全部解ける。

最後に⑥で他の細かい論点をさらっていけば、残りの
H26、R01、R02、R03も解ける
といった理屈(もちろん現場思考もあるけど)。

そして、それぞれの学習は必ず”論証”としてではなく”判例”として行うことが何より大事。明らかに判例を意識した問題が出題されるし、司法試験においては令和2年から

”〇〇に関して判断した判例(最判〇年〇月〇日)を参考に検討してください”
なんていう誘導がされている(つまり、これを見て「あ、あの判例ね」と気がつけなければ誘導に乗ることができない(ただし、受からないとは言ってない。みんな出来てなければ相対評価以下略))。

また、予備においては、⑥までやってR01~03ができる。すなわち、

”おおっと、ちょっとそこは若干対策漏れてたな”みたいなところが出題されている印象。また、いわゆる論点というより行政法の基礎的な考え方(委任条例やら付款とか条件とか)を問うている感じがしており、論点主義からの脱却を感じさせる。

なお、令和4年の出題趣旨はまだであるが、出題自体は④、⑤からであった。が、ちょっと手薄になりがちなところからの出題であったことから、難易度は難しかったといえよう。

そうすると、近年の傾向も併せると、②③あたりで済ませておけばOKとはならな。ちゃんとやり切ろうね。


以上、圧倒的に筆が進んだ行政法であったが(笑)、これにて7科目終わり。
学習の参考にしていただければ。

おわり!

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