予備出題論点一覧表付き~優先的に書けるようになりたいもの探ってみた~パート2刑事系~

こんにちは、あるいはこんばんは。
アガルートにて司法試験・予備試験受験指導講師をしております、とげぬき法律事務所弁護士の寺岡です。
さて、今回は、

これのパート2ということで。
まずは上記記事をチラ見していただき、エクセルファイルも確認の上、本記事を閲覧することを勧める。
それではいってみよう
※公法系まで書くつもりだったものの好きだからか刑法で筆が止まらなくなったので刑事系のみにしている

刑法

総論・各論と分けるのが適切かどうかは別として、とりあえず便宜上その区別から。すると、
【総論】
・実行の着手の有無
・共同正犯(特に共謀共同正犯、その射程)
・抽象的事実の錯誤

を中心として、
・遅すぎた構成要件の実現
・間接正犯
・〇〇防衛
【各論】
・詐欺罪
・横領罪

をメインに、
・偽造罪
・放火罪
が出題されていることがわかる。

「そりゃ共犯は出るよね」
「財産犯中心に決まってんじゃん」
というのはそのとおり。が、

「実行の着手時期ってけっこう大事なのね」
「詐欺5回は出てるぞ」


あたりは若干の意外性あるのでは?
前者については、特に初学者は
「構成要件→違法性→責任」の徹底を言われる。これは誤りではないし、そのとおりである。
が、実際上、責任までいく問題は、誤想防衛の責任故意の話や原因において自由な行為くらいのもん。
違法性についても「正当防衛や緊急避難、正当行為、被害者の承諾」とたくさんあるように見えるが、どうしても身体犯で問題がつくられることが多いから、そう多くはない。
ゆえに、上記徹底は大事なんだけど、実際上は構成要件で終わる問題の方が多い
そして、構成要件は一般的に、
実行行為→結果の発生→因果関係→故意という流れがある。
が、特に実行行為は、細分化すると、
そもそも不能犯の可能性→(クリアしたとして)実行の着手の有無がある。
不能犯はあまり出ないので置いといたとしても、実行の着手の有無はめちゃくちゃ大事なのだ。
なぜか?結果不発生(あるいは因果なし)でも未遂までいければ、起訴できるし、立証されれば有罪にできるのに対し、実行の着手すらないと不可罰になる。
未遂か既遂かももちろん関心事ではある。が、どのみち有罪である以上、これは量刑の問題。一方、未遂か不可罰かは被告人も弁護人もめちゃくちゃ関心事が高い。そりゃそうだ。懲役かおとがめなしか、重要に決まっている。前科つくか否かという見方もできるだろう。
ゆえに、実行の着手時期は実務的にめちゃくちゃ重要といえ、これが実務家登用試験たる司法試験(の前身たる)予備試験でも問われている、のではないか。

あるいは、少ない予備試験の時間の中で、
「なるべく多くの知識が聞きたいなあ」
「でも全部構成要件しっかり検討させたら時間足りないよなあ」
「じゃあ、1つくらいは着手までで終わらせるのもアリだな」
こんな気持ちが試験委員にあるのかもしれない。

長くなったが、実行の着手は大事だということを再認識し、定義を覚え(密接性と危険性でいいから)、あらゆる罪のどの段階で着手が認められるのか判例学習を中心とし、評価ワードをおさえておくことを勧める。

なお、余談だが横領罪には未遂がない。ゆえに、未遂か不可罰か、ではなく、既遂か不可罰か、ということになる。ゆえに、既遂時期(遅くとも〇〇の時点でみたいな言い回しでいいから)は必ず特定すること!!約束だぞ。

あとは詐欺罪だけど、よく見る答案のよろしくないところをピックアップしておく。詐欺罪の書き方については教授や合格者等、お墨付きをもらっておくべき。
・”財産的処分に向けられた”に対応する当てはめがない
・”重要な事項”か否かについての”評価”がない
・財産的損害の有無を別立てしている(ダメというよりちょっと古い考え。近年の判例はそう書いていないはず。”財産的処分に向けられた”の中で論じれば足りるので無駄を省くこと)
・故意で満足して、不法領得の意思への言及がない(一言でいいから触れておきたい)。判例も必要としている(最決H16.11.30。嘘の支払督促を申立て、異議申立てさせないよう相手に届く支払督促正本を、債務者のふりして受け取る行為→「…廃棄するだけでほかに何らかの用途に利用、処分する意思がなかったときは、不法領得の意思がなく、詐欺罪には当たらない」)

刑事訴訟法

赤字のうち、
強制/任意
所持品検査
実質逮捕
は、別に見えるが考え方は同じ(所持品検査は行政警察活動の話だから厳密にいうと違うけど考え方自体は一緒と思ってOK)。つまり、全部強制/任意をやっているだけ。おとり捜査もそう。
他にも、X線検査、写真・ビデオ撮影(H27はちょっと毛色が違う)、GPS捜査、強制採尿(採血)…この辺は同じ。ゆえに赤色で表示している。
次に、訴因変更や伝聞はやはり赤色となった。
訴因変更については、特定、要否、可否+αのイメージ(争点顕在化義務とか)。H25→H29ときて、R4の司法でH29予備とほぼ同じような問題が出題された。予備単体で見れば、5年出ていないことになるから、来年予備で訴因が狙われてもおかしくはないので、「捨てる」という考え方はやめるように。
※R02の一事不再理も訴因変更の可否の考え方を使って書けるので、そういう意味ではちょびっと出たと捉えることもできるかもしれない

伝聞についても避けては通れない。最近、出てないねえ・・・

訴因も伝聞も、刑訴というより刑法。民訴は民法とうたった前回記事と似ている。

訴因わからない人は、まず起訴状のサンプルを見てみよう。
罪名に当たる構成要件が全て公訴事実にきちんと書かれているか確認してほしい。殺人なら、実行行為、結果、因果関係、故意に当たる具体的事実が必ずあるはず(というかなければその起訴状はアウト。逆に細かく書きすぎても起訴状一本主義からしてアウト)。

これが特定の話であるが、やってることは、構成要件すなわち、刑法。刑訴は刑法。

次いで、伝聞非伝聞。
最初に確認すべきは罪名の構成要件
伝聞非伝聞を検討する際、例えば、「あの人はすかんわ」の判例事案を解くにあたり、
「ええっと、罪名は強制性交等致死罪か」
「条文は…181条2項と177条前段か」
「構成要件は、①13歳以上の者、②性交等、③死亡の結果、④因果関係、⑤故意(致死であれば殺意は不要、それ以外の構成要件該当事実の認識、認容)だな」

------------------------ここまで完全に刑法-----------------------------
「+犯人性を立証しないとな」
「『あの人はすかんわ』で①~⑤と犯人性の中で何を立証しようと検察官は思ってるんだ?」
「犯人性かな?じゃあなんで犯人性が推認できるかを言語化すると…」
「ってことは、内容の真実性を立証して初めて犯人性が推認されるな!じゃあ伝聞だ!」or内容の真実性は立証せずとも犯人性は推認されるな!じゃあ非伝聞だ!」

伝聞非伝聞は、こういった思考過程で解くのである。
受験指導をするとき、
「今回の刑法の条文見た?構成要件確認した?」
と聞くが、「YES]だったことがほぼない。つまり、刑法から考えるという発想自体がない。

刑訴は刑法なのだ。

まとめ

・実行の着手しっかり当てはめできるように勉強しておこう
・詐欺罪は出来る人にお墨付きもらいましょう
・強制任意ばっかだからこれもできるように
・訴因も伝聞も刑法の理解が肝。刑訴は刑法。

とまあこんなところでしょうか。

やっぱ刑事系は書いてて楽しいなあ。
次回、公法系いきますね。
おわり。



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