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俺は鉄砲の男

半袖で外に出ると少し涼しい。

黒い折りたたみ傘を開き、新宿へ向かう。

9月の半ば気温は20度、これを常にキープしてくれたら嬉しいのだけど、地球はそんなに優しくない。
 

バス停で傘を抱えながら天鳳を始めるとすぐにバスが到着した。
親番で先制リーチをかけながらバスに乗る。世界一面白い最高の神ゲーだ。だが、すぐに追いかけられパツで掴んだ牌は


追いかけられてこれ引くと負けたなって思う。あるある



パチンと跳満打ってそのままラス

ツイッターで「天鳳は牌操作がキツ過ぎる、フリー雀荘では起きないことが起きる」とツイートし、クソゲーをやめてまとめサイトで暇を潰しながら新宿へ向かう。

はぁ…今日のセットは勝てるだろうか。

メンツはイツメン


三神 俺 園田 中村

どいつもこいつも強敵揃いだ…大丈夫かな…

俺、鉄砲なんだけど

「鉄砲」とは諸説あるが、賭博用語で文無しが打つ博打のことを言うそうだ。どこに飛ぶかわからない(勝つことも負けることもある)から「鉄砲」というんだとか。

まあ、最悪の場合は弁護士に相談しようと考えている、慰謝料も請求しよう、そもそも負けなければ良いのだ。俺は強いと3回心のなかで唱える。

立川駅に着き、新宿行き中央特快に乗ると席が空いていない…早速つかん。

座ってる学生の前に立ち、目を細めて睨みつける。負けたら飯食う金も払えねーんだぞ…と頭をかいた。

28歳も半分過ぎ30歳も近くなるのに貯金は0。人生お先真っ暗すぎる…お前らは良いよな…バカみたいな顔してゲラゲラ笑って幸せそうで。

まあ、いい。だからこそ目の前の勝負に熱くなれる 貯金なんかいらない、人生なんてどーにでもなる、常に勝てばいい、勝てば。

いつの間にか中野を過ぎていた、新宿はもう近い。




新宿東南口へ向かう途中でアイスコーヒーを買った。いつものルーティンだ。コーヒーで寝ぼけた頭をシャキッとさせる。当たり前だがコンディションの調整は成績に関係してくる。



麻雀はその日だけの成績ではない。少しづつの期待値の積み重ね、つまり、当たり前を積み重ねることができるやつだけが最後に勝つ事ができると常々思う。最後まで積み重ね続ける。

雀荘のあるビル前につくと、エレベーター待ちをしている中村がいた。
黒いマンハッタンのトートバックにシャツといったラフな格好だ。背は高く180ほどあるが細いのとスマホを見るために猫背になっているのでそこまで大きくは見えない。

外川 「よぉ」

中村 「ウィッス外川さん」 

中村は麻雀を通して最近知りあった。
昔はサッカーの強豪チームにいたという話を本人から聞いたことがある。だから、というわけでもないのだが爽やかなイケオーラが出ている。

ちらりとこっちを見るとすぐに苦い顔でスマホを見つめている
スマホを覗き見るとオーラスでラス目が立直をかけた所だった。

なんとなくラスになって欲しいなと見ていると一発で「チュピ

3000/6000の親被りで中村がラスになる

「はあああぁぁぁ……」

とクソでかい溜め息をついた中村に、ぶふっと少しコーヒーを吹いてしまった。


外川「あちゃ〜きちぃねぇ〜😅」

と、思ってもいないことを言い、共にフォーシーズンへ入っていく。中村が、あれは俺は悪くないだろ…とぼやいている。

フォーシーズンは7席ほどのセット専門の雀荘で、タバコの匂いが染み付いた昔ながらの心地良い空間だ。大学生の頃からこの雀荘でセットをしているがセット料金も安くかなり気に入っている。


実家のような安心感


店の奥に今日のセットメンバーの園田がいた。静かな空間に外の光が入ってきて気分が良くなる。後一時間もすればすぐに満卓となりガヤガヤとした雰囲気になる。

卓と卓の間をすり抜けるように歩いて近づく。

外川 「園田さん、ちわっす」

園田は手を上げてやぁ外川くん、と返してくれた。

園田の年齢は2個上だが上下なく気さくに話してくれる良い先輩だ。最近体重を気にして炭水化物を抜いているようだが、変化は見えない。

中村は「ちゃす」と小さくつぶやくと、スマホを見ながらラスになった牌譜をナーガで検討するのに夢中になっていた。

歩きながらスマホを触っているせいで、椅子に足を何度もぶつけながら歩いている。

園田さんのサイドテーブルを見ると牛乳、コーヒー、レッドブル、お茶が並んでいた。新しく物をおくスペースはもはやない。

外川「色々飲むんですね」


「ドリンクバーみたいでしょ?」

イメージ図



と、にこにこ言うので

外川「ホントそうっすね、色々飲めていいな~~😆」

と適当に返事を返しておいた

「三神さんはいないけど場決めしようか」

東南西北を裏返してガチャガチャと混ぜると園田が手製のコーヒー牛乳を飲みながら牌を卓に強く叩きつけた。

心底嫌そうに「移動めんどくせ〜」とサイドテーブルの飲み物を抱えて移動している。バーゲンセールの時のおばさんのようだな、と思った。

中村はスマホを見て「なんだよこの下家下手すぎんだけど!ミスりすぎだろ!なんでリーチなんだよ!!」

とキレていた。

中村「これだから特東の連中はマジでキモいわ…」

外川「中村さん牌を引いてもらえますか?🙂」

と作り笑いをしながら言うと

中村「あっ牌引くのね」

と牌を引きヅモする。

中村「俺はこのセットでは勝てるんだけどなぁ…天鳳だと周りが下手すぎて…だからさぁ…逆にさぁ…」

外川「だよね、わかります。あ、中村さん西家ですね、あっち座ってくださいね」と喋る暇を与えないように誘導した。

三神以外の三人の座る場所が決まりチップ、祝儀牌の確認などの用意を終わらせる。

いつも自分から積極的に卓のセッティングを終わらせていく、少しづつの善行の積み重ねが運となって返ってくると思っているからだ。

運よ、俺に味方しろ…と、念を込めて牌を軽く混ぜ、祝儀牌をかき集めて456のタンピン三色の形を作りじっと見つめる。



サカポー曰く運を貯める。



これは俺の心の師匠であるサカポーがやっていたルーティンで真似をしている。ここでも積み重ねる、俺は手を緩めない。

全員分のチップを配り終えた時点でエレベーターのチン、という音がした。


三神「うぃー」



三神だ、2個上の彼とはもう付き合いが長く、8年以上このセットで遊んでいる。背丈は小柄で痩せているが元ラグビー部だったらしい。全くそうは見えない…


最近ゴルフにハマっているので、刺さるとすぐにゴルフに行けば良かったと言う。
このグループの代表であることから彼の発言が絶対である。彼に対して異論は許されない。口喧嘩で勝てた事は一度もないくらい弁が立つ。行きたい飯屋も基本三神が決める。

ビニール袋片手にふてぶてしい態度で歩いている。

すでに5分は遅刻しているが全く悪びれていない。片方のイヤホンを外しながら、まるで自分が国王かのような振る舞いで卓の前までつく。


三神「席、決まってんの?」

と空いた席に煙草と昼ごはんの入ったビニール袋を置くと。

三神「トイレ、腹壊れた多分5分」

お腹を擦りながらUターンしてゆっくりトイレへ向かっていった。毎度の事なので何も言わないがトイレくらい家出る前にして欲しいと思う。

まあいい、とにかく麻雀が打てる。

普段このセットで打っているレートは
7000/2000/-3000/-6000のチップが500イェンというオーソドックスな新宿東風をベースにそれを2倍にして遊んでいる。祝儀牌は赤が3枚緑5mが一枚だ。

通称 苔



フォーシーズンが昔フリー雀荘だった時に上記のルールで遊べたのだ。三神からこの雀荘とルールを教えて貰ったのが8年前頃だが、飽きずに続けている。

我々はフォーシーズンの文字数が多いので、四季と言い換えている。
その倍で遊ぶので、四季倍という名でセットを毎週日曜立てているのだ。

大学生の頃は東南の面前祝儀だけやっていたのだが、社会人の今となっては東南は時間のかかるゲームだなと感じてしまう。

四季倍は完全順位戦で成績の管理も簡単だ。収支戦は細かい数値を自分で計算しなければいけないのだが、俺の脳みそが計算を拒否してしまうため、俺はこのルールをとても気に入っていた。

メンツ集めから場所決めまで全部自分で行い麻雀をする。他に趣味がない俺にとっては大事な事である。

 

三神は代表取締役なので、ちょっとやそっとのウンコ位我慢する。怒らせて卓が立たなくなる事はあってはならない。

10分後、快便だったのだろう、ご満悦な顔の三神が戻ってくると、ゲームがようやく始まった。




          西家中村

      北家園田    南家三神

          東家外川


東一局 ドラ7s



500/1000の一枚を園田がツモり

全員一枚持って集合!」 

と、嬉しそうに叫ぶ

騒ぐなアホ、やかましいわ。心の中で思うが「ハイ」とすぐに点棒を支払う。

東風は最短4局でゲームが終わるので安手でも価値が高くなる。


どこかで和了らなければ現状4着のままゲームが進んでしまうので気合いを入れ直した。

東ニ局 ドラ9p

字牌の整理が終わると自分の手牌はそこそこまとまっていた。

12245g678m 3357s 23p から打1mとした。



四季倍では赤が5に一枚づつと白ポッチ(リーチ後オールマイティー)+5mには緑が入っている。

一枚の価値は5000点相当で緑は10000点相当になる。

かなりの勝負手だ絶対に和了りたい。

打牌候補は 1m、3s、7s

とあるが俺は3sは選ばない。ポン材として残すことでタンヤオを強く見れるからだ。

ニチャアと笑う。

俺、これに気づけるのウマすぎなんだが⤴

打7sは現状6ブロックある手を5ブロックにでき一気通貫なども見れる…が

園田が打った3sを一呼吸置いて

ウォン!

と鳴く。


園田「ウォンってポンって事ですか?」と聞くので

外川「そうだウォン⤴」


と返すと誤ポン罰符を払わされそうになった。この卓は本当にマナーに厳しい。

3p→2pと払っていくことでタンヤオで進めていく。

俺はゲームをしている間、人の手出しツモ切りはほぼ見ない。

その時間があるなら自分の打牌の美しさについて考えるほうが楽しいからだ。

゛ふふ、俺うますぎワロタ🤗 ゛

と心の中でつぶやく、ゲーム中はポーカーフェイスを貫く。

22455g678m 57s ポン333sの形から

園田さんが無言で3mを横に曲げて置いた。

ドリンクバーのコーヒーと牛乳を合わせてコーヒー牛乳を作るのに夢中になっている園田さんに

外川 「ウイッチですか?

と聞くと

園田 「リーチリーチ♪」

と出来立てのコーヒー牛乳を飲みながら曲げてきた。

余計に苛ついたがこういうリーチ確認は大事だ3mは誰だって鳴く。が、その後の打牌が変わることがある。

このゲームでは例えば35mと持っているところから3mを切って単騎待ちにし無理矢理赤や緑を狙うことがある。

外川「チィ」

出てるかもわからないような声で鳴く。

24で鳴き、パシっと俺が切ったのは2m


赤5mを引いたときに打8でスライド出来るからね。と、心のなかでドヤる。

あっ!と、園田さんが俺の2mを指差し



「それオン♪」

開かれたのは

1366999m 234567p

裏ドラをめくると俺の手元に来るはずだった赤5mがいた。

「マンガンの3枚ぃ〜!」

と喜んでいたので

「ゴーニーの2枚ですね、運、いいっすね」

と無愛想に返した

こうなるとかなりの無茶が必要になってくる。ゴミを払うように牌を卓に落とした。 

東3局 ドラ9s

西家の手牌で

145m 33589p 789s 西西の配牌

ドラが9sとなりドラメンツが組み込まれている好配牌だ。w西(四季東風は西が場風)なのでマンガンに是非ともしたい。

3順ツモ切りが続きそろそろ引けよっ!と、ゆっくりツモる手に力が入る、ミチッ…と引くと違和感のある盲牌の感覚だ!! みど…

中村「ポン」

おいおいおいおいおせーよ何してくれてんだよ… 

あの感覚はほぼ間違いなく緑5mだったのに。

つまんねーなぁとツモると西!これも嬉しい。

打5pとすると下家の三神もカン5pを仕掛けた。

かなり局面は動き4順目にして終盤戦の雰囲気になる。東風は緊迫した局面が多いのがスリリングで楽しいんだよな…と牌をグリグリ


鉄砲キタコレ



俺は一泊置き 

外川 「フゥィッッチえっす!」と叫んだ。

入り目Sクラスの牌かつ、愚形解消の良形残り。人生単位で負けたことない。

俺は真顔で歌い始める。

外川 「右手はパーで左手もパーで何作ろ〜何作ろ〜♪」



手作りの基本



5秒ほどかけながらグリッグリに盲牌する。指が痛くなるが脳から変な汁が出てるのでふわふわとした感覚が心地よい。


ツモ2m は?バカタレ 一発でツモれやとブチギレ強打する。

周りは俺が歌い始めたことで警戒している様子だ、あれはダルいだのツモられそうな気がするとか言っている。

次のツモ番になる。盲牌した瞬間にコトっと手牌の横に牌を置いた。

引いた牌はすぐにわかったからだ。



ポッチって良いよね



外川 「ツォ…!」裏ドラを高速でめくると東がめくれた。

外川「2000/4000、一枚ぇす…!」


「はぁ…つかんわなんでこれでマンガンなの?」


「きついよマジで😆」


「しかも東て…南だろ普通は…誰が南持ってんの?」

と、高速で詠唱すると


園田が南の対子を見せてきた

外川「うわっキッツ園田さん麻雀うますぎだろ…」

園田 「何がきついの?」

と聞いてくれたので、丁寧に解説することにする。

外川 「いやね、俺は裏ドラに南がいたら裏3になって倍フォー!になるじゃん?」

「そしたらHGのモノマネしながらバイフォ〜‼って言えたのに…」



倍フォ〜⤴



園田「そう…残念だったね外川くん」


明らかにイライラしているのを見て、俺の顔は恵比寿さんのようになる。



本当に残念でした…



外川 26800

中村 20500

三神 22500

園田 30200

迎えたオーラス


東4局 ドラ4p
 

出和了り3900条件気合で決めるぞと手牌を開く


5r5g57 5r7889s 24p 東南 


のほ〜⤴っとテンションアゲアゲDJアゲタロウになる俺。クールに、クールになれ。


5ブロックあるタンヤオドラ3しかも祝儀牌もガメてるかなりテンアゲな配牌、決めきりたい!

だが、親の園田は自分に対して絞ることも予想される。冷静に急所のみを見極めなければ…


5巡後俺の手牌はこうなった


45r5g57m 55rp 246s チー678p


一つずつ前進している俺の圧力に周りも怯えてるのが感じられる。


この手はツモる…!この手で和了れなかったら今日は負けだな…と覚悟を決める。


応えるように出る5mをポンし


45m 55rp 246s ポン5r5g5m チー678p


オレハモウマッスグイクゾとマシーンのように打牌していく。


三神が吸っていたアイコスから口を離し


三神「リーチ」


ここに打ち込むとラスになるが俺は引けない…気合いで和了るぞと気持ちを入れ直す。


するとここまで静かだった中村が長考を始めた。ちょっとまってね…と何やら手牌をじっと見つめている。


カチャカチャと手牌をイジりたおして2分ほどたっただろうか…


外川「中村さん?僕の切り番ですか?」


と、聞くと中村は


中村 「ちょっちょっと待ってマジでわからん…」


と、数学の難問を目の前にしているかのように悩んでいる。


園田 「外川くん、もしかして僕の切り番??」


と、同調してきた。

三神 「新聞ください」


三神は聞こえないくらいの声で、カウンターにいるフォーシーズンのマスターにお願いする。


多分みんな暇なんだろうな、と思った。


断腸の思いで中村に


外川 「中村さんの切り番ですよ」


と伝えると


中村「わかった!リーチ!」


と2pを切ってリーチした。


園田は手牌から安全牌を切り、


迎えた俺のツモ番…引いてこい!!



こういうので良いんだよ。




外川 「アイヤーーーー!!」


と、2sを叩き切った。 


二重に重なった声が俺の心臓を強く動かした


中村&三神「「ロン」」


その先の事はよく、覚えていない。流れるように負けは重なり終わる時間になる。


外川 「無理、マジで無理」 

「終われないって」

「助けて」 

と、何度も命乞いをするが予定があるからと、続けることが出来なくなった。



オーマイガーやね



三神 「今日も中村の一人勝ち、か」


園田 「中村くんホントに強いわ」


中村 「うーーーんまだミスも多くってしけポッチも何回かしたし…」


と、反省会が始まっている。 


俺はその隙に荷物をまとめて帰ろうとするが、清算終わってないよ。と、引き止められた。


まだ弁護士事務所は空いているだろうかと考えながら財布を出す。


外川「悪い、俺、鉄砲で来た」


と伝えると、周りからは新宿のホームレスに向ける目で見られた。


外川「中村さぁん!」

床におでこを擦り付ける。誠意を伝えなければと思う。


外川「オデハァ!こんなにもカスだけどぉ!!」

「絶対返すからぁ!!」


中村は俺の肩を叩き、次で良いよ。と優しく声をかけてくれた。


俺が女じゃなくてよかった…と思った。好きになっちゃうよ…


俺が恋する女の子の目で中村を見つめていると


三神 「ちょっと待ってルーレット回すぞ」


ああ、そうだった最後にやらなきゃいけない事があったんだった…


フォーシーズンの場代はパック料金なのもあり、かなり安い。確か4人で6〜7千円程で10時〜19時まで遊べる。


割り勘でもいいのだが、勝って場代を払って帰るのも違うなといつからかルーレットで負けたやつが場代を払うのが定まりになっていた。


セッティングも終わり魂を乗せる。ここで勝たなきゃ…一生負け組! ルーレットを回す。



くっだらねぇゲームだよ。



空っぽの財布から虎の子の一万円を出す。


今月は4000円で残りの2週間ほどを過ごすことになった。もう、無理だなぁ…ギャンブル辞めよう


周りは晩飯どうする?等と話している。


俺は行けないよ…と言うと周りのみんなが温かく


「ルーレットで勝てば只だよ!」


と、助言してくれた。負けたらどうするんだろう…?


とりあえず外に出ようとエレベーターが来るのを待つ間、マスターが「今日は誰が勝ったの?」と笑いながら聞いてきた。


中村が嬉しそうに

中村 「今日は誰も勝てませんでした」

「あと5万イェンは勝てないと勝ちになりません」


と、ドヤりながらマスターに答えていた。


外に出るとかなり涼しい。負けすぎて灼熱になった身体に染みる。


ふらふらと皆に付いていき西口のラーメン屋の前でルーレットを回す。


息を止め、手を指鉄砲の形にし、ルーレットに狙いをつける。



大丈夫、俺なら撃てる。






俺は笑顔でラーメンをズバズバ啜る。

「美味い美味い!人の金で食うラーメンがいっちばん美味い!」

「ご飯お代わりお願いします!!」


被弾した中村は少し悲しそうな顔をしていた。
























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