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フェーダーRemix制作日誌

2月

札幌の音楽レーベルobake maskのオーナーDOG NOISEさんから連絡をいただく。remixにラップをのせるとのことで快諾。詳細を聞いたらトラックも自分で作成とのこと。最近は全然制作していなかったというのと自分で作ったトラックに自分でラップを乗せることに若干の抵抗があった(自分の純度が高くなりすぎる為)が、remixであればそれも軽減されるだろうという気がする。ハナカミリユウさんの世界をどこまで壊さずかつ変えられるかというのも楽しそう。締切6月とのこと。幸い3カ月以上あるのでトラック1カ月、歌詞と録音1カ月、ミックス・マスタリング1カ月で考えとく。DOG NOISEさんには原曲の歌詞とstemをお願いした。

原曲であるハナカミリユウさん(macで入力すると花神龍となってちょっとかっこいい)のフェーダーを聞く。

何回か聞いたら「もう終わり」みたいなイメージだったので終わった後のイメージで作ろうかなという気になる。まあ実際作っていくうちに変わるのですが。あとは繊細なトラックなのでそこはちょっと逆を取りたい。なので終わった後かつ太目なトラックという無茶な構想となる。Drillとかそっち系にして繊細ウワモノに太い土台みたいな感じで作りたい。早くも世界観を壊しかけている。そんなものである。


いいタイミングなので買ってけどインストールしてないプラグインをインストール。XOとscaler2。あとリリースしたばっかのwavesのcosmosとcr8も。プラグインを使いこなせるほどdtm出来ないのだがつい買ってしまうのはよくないなぁ。
DOG NOISEさんよりステムをいただく。他人のステム聞くのたーのしー!トラックがたくさんある!ステムは制作者のハナカミリユウさんのマインドがより感じられる。ウワモノから作ることが多いのでステムを聴きながらこの辺をあーしてこーしよーとか考える。でもまぁ大体完成したら当初の構想など霧散します。
考えているうちに今回の依頼がremixであることに気が付く。自分のやろうとしていることはremixを逸脱しているのかもしれない…。remixとはなんなのか。そもそもラップを載せる時点でいわゆるremixにはならない。もとのボーカルを活かしつつラップを足すというのも考えたが原曲の世界観をハナカミリユウさんの意図しない形に改変してしまう可能性があるのでちょっと。やるなら言葉を抜き出しでアクセント的に使うかカットアップになるかなー。でもそうなるとやっぱremixではないのでは。まぁ作るだけ作って怒られたら謝ろう!という気持ちに。

Drillを聞きまくる。spotifyのプレイリスト共有機能は便利だなぁ。原曲のウワモノとボカロ部分をうまいことサンプリングなどしつつ方向性はDrillにしようかなーという構想を練る。なのでDrill成分がありつつも湿度が高い感じにしていきたい。

製作開始。原曲のstemから切ったり貼ったり加工したりしてウワモノを作る。ドラムとベースは自分でやるので後回し。DJ、ラップ、トラックメイクをやるけどトラックメイクが一番性格が出る。DJは外向き過ぎてるしラップは内向き過ぎている。トラックメイクはフラットな感じ。自分のやり方だとトラックメイクは一番厚い部分が最初にできてそれから引き算している。一般的なやり方なのかは知らない。すべてがすべてに影響するので例えばウワモノできた→ベースできた→ウワモノ変える→ドラムできた→ベース変える→ドラム変える。とかそんな感じをおさまりがよくなったと感じるまでやる。

ところでインストールしたcosmosが起動したら即フリーズする。謎。cr8がよさそうなだけに使えないぞ。となってしまった。再インストールしてみようかな。xo立ち上げてサンプルをD&Dでcr8に持って行ければ代わりにはなるか。

なんかmacでも使えるフリーのボカロがリリースされたっぽい。なんかうまく使えないかな~。余裕があったら自分のラップのボカロバージョンやってみたい。ただボカロにラップができるのかという疑問はある。余裕があったらね。

制作を続ける。原曲から色々持ってきて何となく形になってきたので下の部分に手を付ける。今回の肝である808bassにまずは取り掛かる。spliceでone-shotを探してdrill特有のグライド感を出しつつ何パターンか作る。サンプルが綺麗だったのでサチュレーションとかfilterとかizotopeのviynalなどを噛ませて汚してみる。しっくりこない。後回し。続いてドラム周りの制作。これがめちゃくちゃ大事。これがだめなら全部だめ。ところが全然うまくいかない。考えたら今作ってるトラックのBPMがdrillの140/70と全く違って87なのでdrillのパターンを持ってくると全然うまくいかないのである。これに気づくのに2時間くらいかかった。ビートはやり直し。自分の中でビートは自然と頭を振れれば合格としているのでそこになるまで続ける。こういう時に理論が入っていないとしんどいなーと思う。

ちなみに。ableton liveを使っているのですがここまでセッションビューで制作している。tipsとかtwitterとかみていると最初からアレンジメントビューで作っている人が多い気がするが自分はセッションビューが好きなのでいつもセッションビューから作っている。セッションビューにいろんなパターン作ってそっからアレンジメントビューに持って行って修正していくって感じ。

3月

何パターンかできたのでアレンジメントビューに移行。テトリスのようにイントロから組み立てていく。大体この辺で違和感が出るので修正を重ねる。bassを組み替えたりドラムを組み替えたり。色々する。

DOG NOISEさんから「締切やっぱ4月下旬で!」と連絡が来る。まままままじかよ。リスケを行いトラック3月中旬まで、リリックとレコーディング4月上旬まで、mixとmasterが締切までとした。ちょっと時間が無いので出来るだけ巻きでいく。というかトラックの基本的なパターンはできているのでトラックとリリックは並行でもいいかもしれない。

上旬。ざっくりトラックができた。ここから音の抜き差しとかはあるけど大きくは変わらないと思う。多分。ということでここから作詞に入る。予定より巻いた。とはいえ作詞はうまくハマらないと2か月くらい平気で出来ないので気を付けなければいけない。

ところでトラック、作詞、ラップ、何ならmix、マスタリングも自分でやるとなるとどこで終わらせるのかという問題があることに気が付く。特にラップの部分については終わりがない。完璧だと思っても次の日聞いたらもっとうまくできるのではと思ってしまう。悩ましい。

時間を見つけて作詞。自分で作詞は行うのだが、原曲ありきでの作詞になるため完全に自由というわけではない。自分なりに原曲を消化してそのうえで作詞している。この感覚なんか覚えがあるぞと思ったらIdiot Popさんに呼んでもらってnear hereの作詞をした時もこんな感覚だった。あの曲は前作のgrils収録のミス・ユーって曲に対するアンサーソングだったのでミス・ユーを受けての作詞であった。あの曲は作詞能力を大分高めてもらった曲なのでIdiot Popさんにはとても感謝している。リンク貼るのでよかったら聞いてくれ。

↑の曲を受けての

こちら。というかこれ2018年なのか。オレ2018年の時点で咎メルだったのか…。

2日後。歌詞がフック以外かけた。あれめっちゃ早い。今回の構成は原曲のつくりも踏襲してバース1→フック→バース2→フックなのだがバース部分ができてしまった。あとはフックを書いて歌詞を調整(ラップしやすいように語順入れ替えたりとか単語変えたりとかアクセントとか間とかいろいろ考える)すれば録音できる状態となる。でもフックを書くのが苦労しそうだなー。

何日か後。フックがかけてしまった。あれなんか早いぞ。録音する前にトラックに合わせてラップをしてみて言葉の調整を行う。同時にトラックの調整も行う。自分で作るとここら辺の調整が楽にできるんだなーと思った。

ちょっと時間が空いたのでCevio Proにラップをさせてみる。めっちゃむずい。無理。ちょっとあきらめる。これは時間がかかるぞという感じ。そもそもラップをさせるのがめっちゃむずい。

Cevio Proについて考える。ポチポチmidiを打っていたのだがラップを反映させるのがむずい。思いついたのだが、自分でラップを録音→LiveでMIDI化→Cevio Proに読み込ませる→歌詞入力→調整ではどうか。そもそものMIDI化が上手くいかないような気もするけど時間できたらやってみよう、

中旬。レコーディング。自宅で。フックとバースとダブルを2,3パターンずつ録る。1時間くらい。ラップが乗った状態で何度か聞いてトラックをいじる。さらに各トラックを聞きなおしてEQとか何となくいじっていい感じにしてみる。主にハイとローを捨てる作業をした。ここからミキシングなのだが全然わからん。とりあえず昔買ったizotopeのmpsを2.1→4.1にアプデした。ボーカルの処理をちょっとフィルターがかった感じにしたい。前にDJ.DAI君と作って術の穴からリリースしたvoidみたいな感じ。試行錯誤した結果わからなくなってしまったのでDJ.DAI君に直接聞こう!となった。

       ※これ。公募通った時職場で小躍りした。

3月の3連休。ここでいったん曲を仕上げたい。とはいえmixとかマスタリングとかよくわからん勢の私。ネットをさまよい何となく把握する。とりあえず大事なトラックからやる。帯域をかぶらせないようにする。とかそんな感じらしい。なのでトラック毎にEQいじったりフィルターかけたりリバーブかけたりする。要はいい感じになればいいんですよね?よね?各トラック調整してマスターにozoneいれてLUFSを-14にしてtonal balance controlで帯域チェックしてinsightでボリュームやらをチェックする。とりあえずこんな感じかなというのができたので21日の夜。マジで3連休が終わってしまった。

macが2018のmbp i5-2.3GHz 16GBなのだが各トラック(今回は30トラックくらい)にizotopeを刺すと重くて話にならなかった。スペックの限界なのかもしれん。M1なのか。それかM2なのか。Liveが10のままなので11にすれば軽くなるのか。

翌日通勤時に曲をチェック。ラップが気になる。処理がとかじゃなくてラップそのものが。えーこれラップ録りなおし?ラップ取り直したら全部やり直しなのでは?これは辛いぞ。うまくラップ出来なかった自分が悪いのである。あとちょっと低音が多い気がする。キックというより808bassだなこれ。これは調整しよう。

制作に使ってるmacとm1 macbook airのベンチマークを比較したらダブルスコアで負けてた…。ちょっと買い替えを考える。このタイミングはちょっとあれなのでM2のmacbook airが発表されたら真剣に検討しよう。VDMXでもちょっと負荷を感じるしな。

3月末。再レコーディング。何テイクか録ってバース・フックごとにベストを選択。調整をして前回のものと聞き比べ、前回の方がいい…なんで…悲しい…。とはいえまぁこういうことはよくあるのでもやもやしたまま前回のテイクに決めるより新しく録って検討した結果前回のテイクがいいとなった方がメンタルによい。他のラッパーの曲と比べるとラップが小さい気もするけど自分の技術ではこれ以上は難しい感じがする。思うにミキシングとかマスタリングは主観的にやってはいけないので第三者に任せた方がいい気がする。オンラインマスタリングも検討した方がいいかもしれない。ミキシング・マスタリング請け負ってくれる人を知らないわけではないが正直なところ1曲やってもらう価格の相場観が分からないので気軽に頼むこともできない。

前述のCevio Proを再トライ。ableton liveでボーカルトラックをMIDI化してcevioに読ませる。歌詞をひらがなにして歌詞を読み込ませる。全然ダメだった。全然。驚くほどにダメ。これにてCevioへのトライ終了。この曲が完成した暁には時間つぶしにやってみることにした。

再mixした曲を確認。他のHIPHOPと比べると音が違うな。これはどういうことなんだ。-14lufsがいけないのか?リファレンスに使ってる曲をinsightに読ませてピークとかチェックしてみよう。

配信系ならとりあえず-14lufsでいいってことだったんだけど今回はbandcampの配信のはずなのでそうなるとかってにノーマライゼーションが入らない可能性がある。それであればこちらである程度音量で隠しておかないといけないのでは?と思った。bandcampのlufsの基準とかあるのか?
調べたら特にノーマライゼーションとかはしてない、お前のアップロードしたデータがすべてだ!ということらしい。それなら音圧あげていかなきゃ。
↓こちらを参照

https://get.bandcamp.help/hc/en-us/articles/360059685233-Is-there-a-required-LUFS-setting-for-my-audio-files-

と、いうことでやはりリファレンスのlufsやピークをizotope insightで測定→それを目指して調整とする。週末やろう。

平日だけど1時間くらい時間ができたのでリファレンスの測定、ピーク-0.1だった。音デカ…。それに合わせますよ!いいですね!と音をでかくしたらなんかバランスが変。もう全然わからん。客観的にチェックできる人が必要だ!DJ.DAI君に相談しよう!となった。

4月

締め切りは今月下旬。早めに仕上げたい。相変わらず色々調整している。がやはり自分では判断できなくなってきたのでDAI君に相談。それまでいったん自分のベストを出しておく。

某日。DAI君の家に遊びに行く。ミックスした曲何パターンか聞かせてアドバイスをもらう。曲聴きすぎて正解がわからんくなったので非常に助かった。

そしてアドバイスを基にちょっといじって完成した。トラック、リリック、ラップの合計時間よりもミックスとマスタリングの時間が圧倒的にかかった。すごい難しかった。

下旬。DOG NOISEさんに提出。その後2mixで再提出。マスタリングまでこっちでやったけど他のトラックとの兼ね合いがあるのでマスタリングやってくれるらしかった。なるほど。確かにその通りだ。今後は提出の状態を確認してから制作することにしよう。というかそれが普通なのかもしれない。ここら辺わからん!なぜならあわてんぼうなので!

7月

そんなわけでリリースされた曲がこちら!

ちなみにリリックビデオも大変にかっこいい仕上がりになっています

リリックビデオの歌詞の表記とか改行とか確認させてもらったけどやりとりしてる最中「DOG NOISEさん他の曲の分も全部作ってるの…?大変すぎじゃない…?」ってなった

おわり


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