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140.第5章「映画とテレビでトップをめざせ!不良性感度と勧善懲悪」

第19節「東映製作巨大ロボット作品③特撮ロボシリーズ」

〇巨大ロボット特撮のはじまり

 1957年12月東宝製作の特撮映画地球防衛軍』が公開され、異星人によって電波で操縦される巨大ロボットモゲラ」が出現し大暴れしました。これが日本映画初の巨大ロボットの登場となります。

 1960年2月には日本テレビ系月曜19時30分から横山光輝原作、松崎プロダクション製作のロボット特撮鉄人28号』(1960/2/1~4/25 全13話)が放映され、テレビでも人と同じ大きさではありますがロボットが現れました。
 実写版放映の3年後の1963年10月フジテレビ系日曜20時にてTCJ製作の巨大ロボットアニメ鉄人28号』(1963/10/20~1965/11/24全97話)が放映されます。

 東映動画(現・東映アニメーション)は、1966年4月NET系土曜20時からスタジオ・ゼロ原案のロボットアニメレインボー戦隊ロビン』(1966/4/23~1967/3/24 全48話)にて、主役の人型ロボットたち4体の他、ロケット型ロボットペガサス」と大型ロボットベンケイ」、2体のロボットを登場させました。

『レインボー戦隊ロビン』
©東映アニメーション

 一方東映1967年10月、『鉄人28号』の横山光輝原作で本格的な巨大ロボット特撮『ジャイアントロボ』(1967/10/1~1968/1/24 全26話)を製作、日本教育テレビNET)系水曜19時にて放映されます。

『ジャイアントロボ』
©光プロ・東映

 この作品では、『スパキャッチャーJ3』や『悪魔くん』などの特撮を担当した矢島信男矢島設立の特撮研究所がロボット特撮を受け持ちました。
 高視聴率で人気も高く局側からは継続の要望も出されましたが、この時代は特撮作品のビジネスモデルができておらず、東映は制作赤字の累積により継続を断念します。

 そして1972年12月フジ系月曜19時で放映の東映動画制作『マジンガーZ』(1972/12/3~1974/9/1 全92話)から巨大ロボットアニメブーム始まりました。

 1977年3月、3作の東映動画制作巨大ロボットアニメ(『惑星ロボ ダンガードA』『マグネロボ ガ・キーン』『超電磁ロボ コンバトラーV』)が放映されるブームの中、実写では『ジャイアントロボ』以来の東映巨大ロボット特撮大鉄人17(ワンセブン)』(1977/3/18~11/11 全35話)がMBS・TBS系金曜19時にてスタートします。

東映ビデオ『大鉄人17』DVD Vol.1
©石森プロ・東映

 この巨大ロボット作品の特撮も『ジャイアントロボ』の特撮を受け持った矢島信男特撮研究所が担当しました。
 かつて『キャプテンウルトラ』(1967/4/16~9/24 全24話)で合体メカ特撮を担当した矢島特撮研究所は、1978年東映が製作し東京12チャンネル系で放映されたマーベル・コミック提携作品『スパイダーマン』(1978/5/17~1979/3/14 全41話)にて変形する巨大ロボットの特撮技術にもチャレンジしました。

① テレビ朝日(ANB)系土曜18時『バトルフィーバーJ』(1979/2/3~1980/1/26 全52話)

 1979年2月テレビ朝日系土曜18時枠にて、東映製作巨大ロボットアニメ『闘将ダイモス』の後番組として「スーパー戦隊シリーズ」第3作『バトルフィーバーJ』が始まります。

1979年1月発行 社内報『とうえい』第222号

 第1作の『秘密戦隊ゴレンジャー』以来「スーパー戦隊シリーズ」は、東映エージエンシ-の買切番組という形で進められ、テレビ朝日東映東映エージエンシ-が製作しました。

 この『バトルフィーバーJ』は、『スパイダーマン』同様マーベルと提携した作品で、原作がこれまでの石森章太郎から八手三郎に替わります。
 当初『秘密戦隊ゴレンジャー以来のチーフプロデューサーだった平山亨が企画骨子を作りましたが初期段階で降板。吉川進折田至が引き継ぎ、この作品以降吉川が「スーパー戦隊シリーズ」のチーフプロデューサーとして活躍して行きました。

 今作の制作にあたり、これまで撮影を行ってきた東映生田スタジオが閉鎖されたため、東京撮影所東撮)の東映テレビ・プロダクションテレビプロ)が受け持つことになり、これ以降「スーパー戦隊シリーズ」の制作はテレビプロが担当します。

 脚本はメインの高久進上原正三を中心に江連卓曽田博久が書き、メイン監督竹本弘一などのメンバーで固められ、キャラクターデザインは『スパイダーマン』から参加した企画者104 久保宗男野口竜増尾隆之、キャラクター制作は『仮面ライダー』『秘密戦隊ゴレンジャー』のエキスプロダクション、ミニチュアモデルなどメカニックはヒルマモデルクラフトが制作しました。

 『スパイダーマン』に登場した巨大ロボットレオパルドンのヒットを受け、ポピー(現・バンダイ)の村上克司がデザインし矢島信男特撮研究所が撮影したバトルフィーバーロボは、第5話から満を持して登場。「スーパー戦隊シリーズ初登場巨大ロボットは子供たちの人気を集め、フィギュアや巨大母艦など玩具が大ブレイクしました。

バトルフィーバーロボ
©東映

 また、当初ビッグアクション高橋一俊が担当していた技斗は、『スパイダーマン』の撮影が終了した第7話からジャパン・アクション・クラブ (JAC)の金田治に移行し、以後、「スーパー戦隊シリーズ」の技斗及びスーツアクターはJACが担って行きます。

『バトルフィーバーJ』
©東映

 音楽は渡辺宙明、主題歌の作曲・編曲も手掛け、オープニングの作詞は山川啓介、エンディングは八手三郎、歌は『光速電神アルベガス』のMoJoが歌いました。

東映ビデオ『バトルフィーバーJ』DVD Vol.1
©東映

 『バトルフィーバーJ』は高視聴率をあげ、玩具も大ブレイクします。
 後楽園ゆうえんちの野外ステージで行われた有料ショーは1年間で35万人の大ヒットを記録、現在では東京ドームシティアトラクションズシアターGロッソまで続く名物イベントとなりました。

② テレビ朝日(ANB)系土曜18時『電子戦隊デンジマン』(1980/2/2~1981/1/31 全51話)

 1980年2月、大ヒットした前作に続き「スーパー戦隊シリーズ」第4作『電子戦隊デンジマン』がスタートします。  

1980年2月発行 社内報『とうえい』第235号

 この作品もマーベルとの提携作品でしたが、第1作『秘密戦隊ゴレンジャー』で使用された「戦隊」が番組タイトルに使用され、以降のタイトルの定番形式となったことで「戦隊シリーズ」と呼ばれるようになりました。
 プロデューサーは前作に続いての吉川進が一人で担当、脚本も上原正三をメインに、江連卓曽田博久高久進と前作と同一メンバーが書き、メイン監督も竹本弘一が演出し、キャラクターデザインには前作担当の野口竜久保宗雄増尾隆之渡部昌彦が加わりました。
 戦隊ヒーロー自身はポピーが最終的にデザインし、以降の作品からは巨大ロボット同様初めからポピーが関与、デザインするようになります。
 キャラクター制作も前作同様エキスプロダクションが行いました。

東映ビデオ『電子戦隊デンジマン』DVD Vol.1
©東映

 『電子戦隊デンジマン』に登場する巨大ロボットダイデンジンは、戦闘母艦デンジタイガーから発進する巨大戦闘機デンジファイターが変形して完成します。
 デンジマン5人のヒーローはダイデンジンのコクピットに乗り込み、へドリアン女王が率いるベーダ―一族怪物と戦いました。
 へドリアン女王には『5年3組魔法組』に出演していた曽我町子が扮し、人気を集めました。

へドリアン女王(曽我町子)と部下のヘドラー将軍(香山浩介)
©東映

 音楽及び主題歌の作曲・編曲はシリーズ第1作から続く渡辺宙明。主題歌の作詞は小池一夫、オープニング、エンディングともCMソングの歌手でテレビアニメ『サイボーグ009』のオープニングを歌唱した成田賢が歌いました。  

東映ビデオ『電子戦隊デンジマン』DVD Vol.2
©東映

 この作品からヒーローマスクにゴーグルが使用され、敵の等身大怪人が倒されると直後に巨大化、ヒーローが操縦する巨大ロボットと戦うパターンが誕生します。

 1980年7月公開の「東映まんがまつり」ではオリジナルの劇場版『電子戦隊デンジマン』が上映されました。

1980年7月公開 『電子戦隊デンジマン』竹本弘一監督

 この作品も大ヒットし、「スーパー戦隊シリーズ」の形式定着します。

③テレビ朝日(ANB)系土曜18時『太陽戦隊サンバルカン』(1981/2/7~1982/1/30 全50話)

 『電子戦隊デンジマン』終了後の1982年2月、シリーズ第5作マーベル提携『太陽戦隊サンバルカン』が放映されます。

1981年1月発行 社内報『とうえい』第247号

 この作品には東映サイドのプロデューサーとして、チーフの吉川進に加えて新たに鈴木武幸(後に東映専務取締役就任)が参加、メインライターは第1作から続けて上原正三が担当、曽田博久高久進酒井あきよしなどが執筆します。
 第1作からメイン監督を担当してきた竹本弘一がパイロット作品4話で体調不良のため急遽降板することになり、社員監督の小林義明や新たに加わった円谷プロ作品で実績のある東条昭平服部和史平山公夫奥中惇夫加島昭が監督を務め、終盤では『仮面ライダースーパー1』の撮影が終了したベテラン山田稔も参加してつないで行きました。
 企画者104ポピー特撮研究所エキスプロダクションなどこれまでのチームが同様に制作にあたりましたが、キャラクター制作の前沢範らがエキスプロから独立し、1981年2月レインボー造型企画設立してこの作品の造形を担当、以後のシリーズ作品は前沢が制作を請け負います。

 音楽も主題歌の作曲・編曲と合わせて渡辺宙明がこれまでと同じく起用され、オープニング、エンディングとも作詞山川啓介、歌は串田アキラが初めて歌いました。 

東映ビデオ『太陽戦隊サンバルカン』DVD Vol.1
©東映

 この作品の主役は、イーグル(赤)、シャーク(青)、パンサー(黄)、動物をモチーフとした空・海・陸の3軍を代表する兵士3名で、「スーパー戦隊シリーズ」唯一の最終話まで男性のみ3名の主役となります。

バルパンサー(黄)・バルイーグル(赤)・バルシャーク(青)
©東映

 また前作で評判だった曽我町子演じるへドリアン女王が第5話から再登場し人気を呼びました。
 嵐山長官を演じた名優岸田森は、番組終了後の1982年12月に食道ガンで43歳の若さで逝去されました。 

嵐山長官役岸田森(左端)
©東映

 この作品に登場する巨大ロボットサンバルカンロボは、バルイーグルが操縦する大型戦闘機コズモバルカンバルシャークバルパンサーが操縦する重戦車ブルバルカンが合体して誕生する「スーパー戦隊シリーズ初の合体ロボでした。

サンバルカンロボ
©東映

 コズモバルカンブルバルカンを収納する巨大母艦ジャガーバルカンと併せてポピーの玩具は大ヒットします。

巨大母艦ジャガーバルカン
©東映

 『太陽戦隊サンバルカン』は、平均視聴率12.5%と好成績を残し、「スーパー戦隊シリーズ」人気が定着、この後、東映巨大ロボットはこの実写シリーズで定番化しました。

トップ写真:スーパー戦隊シリーズを確立した『バトルフィーバーJ』©東映