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お買い物

毎日毎日懲りもせず、チラシが投函される。仮想空間も宣伝、広告ばかりだ。
本日限り。限定〇名様。お買い得品。希少品。ボーナスポイント。生活応援。ポイント還元。満足価格。半額。限定価格。会員限定。キャンペーン等々。
販売促進のためのマーケティング理論に裏打ちされたセリフがこれでもか、と立ち並ぶ。




チラシを全てチェックし、食料品や消耗品などの最安値スーパーを一日かけて渡り歩く主婦の話はいつどこで耳にしたのだったか。ずいぶんと以前だったと思うが、現在も似たような行動をしている人が多いのだろうか。安い、便利がその購買行動の動機である。




その安い牛肉はなぜ安いのだろう。その安い野菜はなぜ安いのだろう。その安い衣服はなぜ安いのだろう。効率的に生産したから?スケールメリットを活用したから?コストを徹底的にカットしたから?最新の物流網で運んだから?




劣悪な環境で生活を強いられ、微々たる給与で非道にこき使われる子どもたちを見たら何を思うだろう。ホルモン剤や抗生剤を大量に投与され、全く動けない環境で育った不健康な牛や豚や鶏を見たら何を思うだろう。劇毒の農薬を最新設備で大量に効率的に噴霧する農業を見たら何を思うだろう。
国内外の生産現場の実情はあまり知らされない。知らされないからといって知らないままでいいのだろうか。




動物や植物の自然な成長に任せ丁寧に育てる畜産や農家の肉や野菜の価格は、大手スーパーのものよりなぜ高いのだろうか。オーガニックな生地を使い手作業で作られた衣服の価格はなぜ、大手ファストファッションのフリースより高いのだろうか。そして、安い商品を売っている方がなぜ、莫大な費用のかかる広告や宣伝をTVなどの大手メディアにうてるのだろう。安い商品のどこにその費用が反映されているのだろう。いったいどちらが本当の生きた価格なのだろう。




お買い物は投票だと云われはじめている。どの作り手を応援するかを決める重大な日々の投票なのだ。虐げられている未成年の子どもや経済的に苦しむ従業員を安く長時間こき使い、安くても利益がでるように出来上がった便利なファストファッションを購入すれば、あなたはその残虐な行為を応援したことになる。自然の摂理にのままに紡ぎだされた原料でキチンと丁寧に作ったものを作り手から直接買えば、あなたはその作り手の誠実な行動を応援できたことになる。その毎日の選択が、社会を再構築してゆく。




目の前の商品がどこでどうやって作られたものなのかに関心を払う。そうすると、驚くほど何も知らされてないことに気づくだろう。「伝えない事」に意志さえ感じるに違いない。商品の表示に疑問を持つに違いない。そしてそれは一業者のせいだけではなく、社会に意図的に仕組まれていることに気がつくはずだ。




毎日のお買い物に責任を持つ。その行為が毎日の自分を創り家族を創り、ひいては世界を創る。それはぼくたちの手の中にある、未来社会への投資なのだ。

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