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そろそろ愛していいんだよ。


お久しぶりの永見です。

口をつぐんだ時や目を伏せた時に人それぞれ持つ空気が違うように、街もそうだと思う。

夜や平日のお昼のあんまり人が出歩いていない時間に感じる。そこに住む人の覚悟とか惰性とか喜びとか悲しみとか、そんなものがぶつかって混ざり合って、街全体をもったり包み込んでる。駄菓子みたいな甘さと、母親のような曲線で。

その空気を拒否したら、引き出しの奥に仕舞い込んであった恥ずかしい思い出を悪戯に引っ張り出されて、わたしの心臓はゾワゾワする。まだ試したことはないけど、それを全部受け入れてしまえば、もう会えない会いたい人と会えそうな気がする。街の角でばったりと。

街はなにか夢見ている。わたしは流されるまま、少し潮風混じりの、どこからか工場の音や汽笛の音が聞こえてくる夢の中で、不機嫌そうな顔をしている。「どうせ田舎なら、ヨーロッパの
田舎町がよかった」なんて思っている。

でもこの間、川が陽の光でキラキラしていた。その上を鳥が並んで飛んでいた。世界に悲しいことがあるなんて信じられないくらい穏やかだった。

ここを離れた人がよく言う「こんなところ」はとてもきれいで、愛していいんだ、と思った。

歳も性別も故郷も違う7人が、徳島という街でお芝居をつくっている。どんなものができるかな。やさしいお話だったらいいなあ。


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