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『ショートアソート』終演→次へ

todokeru,座興公演『ショートアソート』を終え一週間と少し経ちました。SNSでの取り急ぎの挨拶のみで大変失礼しております。代表・大木です。

お暑い中ご来場いただいたお客様、ご協力いただいた皆様、改めてありがとうございました。
皆々様がいらっしゃる事でtodokeru,は公演を打ち続ける事が出来ております。
重ねて感謝の意を表させていただきます。


『ショートアソート』は制作佐光が発案した公演で、若手を主体として公演を作るといった実験的な一面がある物でした。
石橋を叩いて渡らないスタイルの大木としては不安この上無しだったのですが、劇団の先を見る力を圧倒的に信頼している佐光の言う通りにやってみました。

結果として、


大・大・大正解でした。



…あれこれ何が良かったか、書こうと思っておりましたが、まあここで何を言っても仕方ないなと思ったので省きます。

おそらく今後の公演で層が厚くなったtodokeru,をお見せする、といった所でしょうか。
今後のtodokeru,にご期待下さい。


公演の内容に少し触れてみます。

今回は若手メンバー一人ひとりから原案をもらって(内容的に素案止まりの作品もありましたが)、それを元に10分前後の本を大木が書くという作り方をしていきました。

『喫茶店カサンドラ』:原案 ネネ

『喫茶店カサンドラ』より
ネネ扮するラオ美
ですやん扮するトキ子(誰かに似てると思ったらトキってよりリンだな)
ふじもん扮するジャギ男

喫茶店がベースのコントというお題でした。
ネネ扮する女性が彼氏に振られ、その理由を女友達に「私(の愛が)重いから」というのを「(身体が)重いからなんだ…」とミスリードを産んで話がズレていく、という様なもので書いていこうとしましたが、「今日日女性の身体が重いとかで笑い取ろうとしていいんだろうか。今令和だよ?」という自問自答の先に10秒で出た答えが「よし、この子北斗の拳のラオウにしよう」でした。何がよし、なのか未だにわかりませんが、あれやあれやとラオウ→ラオ美、女友達→トキ子に。
センシティブな感じは消え去りましたが北斗の拳をよく知らん子らと北斗の拳コントを作るという謎が生まれてきました。タイトルも北斗劇中にあるカサンドラ伝説から取ったのですが、カサンドラ症候群(パートナーや家族などが発達障害の一つであるアスペルガー症候群(ASD)のために、コミュニケーションや情緒的な相互関係を築くことが難しく、アスペルガー症候群の人の身近にいる人に不安や抑うつなどの心身の不調を来す状態のことを言います。)から取ってると思った団員もいて、なんか、なんかもうジェネレーションギャップってなんかもう、ってなりました。
で、ああいうコント(?)が誕生しました。
ネネ自身、コントの話が思いついたというだけでやる側としては苦手な部類の物を選んでしまった苦悩。ですやんという苦悩(笑)。そもそも笑いを苦手とする大木の苦悩。3人の苦悩の中を混ぜ合わせひいこらひいこらと稽古に勤しんでおりました。
実は稽古時間最長でしたがそれは実を結んでましたでしょうか?そう感じられたら良いのですが。


『ローリング・バス停』:原案 ほわ

『ローリング・バス停』より
A役のほわ
B役の大木

バス停で仲良く話をしているサラリーマンの2人。
実は片方のサラリーマンはもう片方の奥さんと不倫関係にある…という話でした。
そういう願望があるの?とほわに聞きましたがそういう願望は無いとの事でした。良かった。
とりあえずそれをオチとするのは不快に感じる方もいるかと思ったので、不倫してる側をもっとヤバい奴にしようという感じで落としました。やもすると中二感漂うオチであんまりというか嫌いな内容でしたが、ほわがやったら嫌らしくはならないだろうという勝算があったのでそのままいきました。個人的には勝ったと思っていますが、お客様にとってはどうだったでしょうか?
※数は数えてないですが、好きな話に挙げている方が多かった様に思います。はい勝ち勝ち。勝ちで。

大木のあやしい台詞回しにめげずブレず初舞台をやり遂げたほわ氏に個人的に大きな拍手を。


『私ならこう描く』:原案 久米春花

『私ならこう描く』より
劇中、子供の様にあどけない顔になるのが印象的
プラス、憂いの表情

原案がしっかりしていたのでショート〜で一番字数の多い本になりつつもあっという間に書き上げられました。これは書きやすかった。当人が「私」という役を演じるのをやり辛そうにしていたので思っていた様なストーリーラインにはなっていなかったかな?と思いますが、よくまあ逃げずに受け止めてやり切っていたなと感心しました。稽古当初は役に入り込めない時顔を真っ赤にして「少し時間を下さい」と時間を要求したりもありました。そんでその後ちゃんとやるからね。素晴らしい。まあ彼女なら出来るだろうという事で驚きはしてませんでしたが、団員たちが「この新入団員ヤバすぎる」となってました→いやみんなもっとがんばりなはれや。よく演じきっていたとは思いますが、久米春花という俳優としては伸び代の範囲内だったと思ってます。ハードル上げてる様ですが、素直に思ってる事です。彼女のこれからにご期待下さい。


『渡れない2人』:原案 鳥乃ふみ

『渡れない2人』より
松木役の西松君
五島役の永見

原案聞いた時に最初に思いついた話は、歩行者信号前に佇む中年の男(大木)の横にツアコン風の男と若くオシャレにめかし込んでる若い女(鳥乃)。女は中年男の亡くなった奥さんで、奥さんの式の帰り。男が用意した遺影が彼女が若かった20年前のもの(だから若く見える)。ツアコン風の死神に連れられて彼と一方的な最後の別れをしに来ており、丁度この交差点が彼岸になっている…といったものでした。
これは良いと思って書くぞーという気になってましたがキャストバランス調整して案を一掃。鳥乃&客演西松君とのフレッシュな話へと書き換えました。
が、残念な事に鳥乃は体調不良により降板。準フレッシュな永見さんに代役をお願いし、一週間前にして初稽古。よく、よく2人頑張って作って下さいました。感謝かんしゃ感謝。


『捨て犬駄文作家』:原案 藤井颯哉

『捨て犬駄文作家』より
後輩役の藤井 目がバキバキ
先輩役のふじもん

原案かなり精巧に内容を言うて来てましたが本人の意思が役に投影され過ぎる且つ、それじゃ辻褄が合わないと却下。主な設定とエッセンスを汲み取った上で書き上げました。
内容的にはトップクラスで好きな本となりました。
そうやのクセが強すぎて正直間に合わないというか仕上がらないとすら思ってましたが、本番一週間前にして劇的に成長。キチンと会話が出来る様になっていて通しの時にめちゃめちゃ感動して少し涙が出ました。
そう伝えると本人曰く「え、いつもと何か違ってました?」返せあの涙。
ふじもんは天才&変態の丁度良い塩梅の役を仕上げて来て(やはりコイツは引き算)なかなか気に入った一作でした。評価はそこそこでしたが。

『イボニンゲンとわたし』:原案 鈴江 咲紀

『イボニンゲンとわたし』より
「わたし」役の鈴江
イボニンゲン役の永見(センター)
一番人気だったのでもう一枚写真載せてやろう


原案を一番汲み上げた作品だと思います。ベースになる「わたし」役は鈴江の小さい頃の話を大木ヴィジョンで見たものです。ほぼ全キャストがアンサンブルとして出演。わいわいわっしょいと作ったのも功を奏してか一番人気作品でした。
まあそうなると思っていたのでトリにしたのですが。
やっていても皆楽しそうに演じていました。※個人的にはアンサンブルはふじもん&そうやのオタ風コンビが良かった。ああ良かった。

メインの鈴江&永見コンビにして良かった。
鈴江の破壊力を如何に引き出すかがポイントだったのですが、水面下での永見の働きかけと受ける鈴江の相性も良かったのか、結果的に今後の鈴江の成長に繋がると思ってるのでつまり期待してるので応えてもらわなかったら困るんですが?

はい、彼女の今後にも期待です。


『ヘンゼルくんのおかしさがし』:原案 フィン

『ヘンゼルくんのおかしさがし』より
ヘンゼル役のフィン
グレーテル役の永見


これは素案、ですね。原案は全く違う話でリュック背負った行き倒れた男の子が早口言葉を話すとお金をもらえるだとかいう神社を目指すとかいう「何を言ってるのかわからねーと思うが」のポルナレフさん構文使用案件でした。
これはヤバいと思いながらノリで書いてましたが「これはお客様がヤバい」となり削除。稽古序盤のフィンの体調とも照らし合わせて作品の幕間をしてもらう→そうこうしてる間に宣伝せなとの事で先に『ショートアソート』とタイトルが決まる→タイトルにちなんでお菓子に関するキャラに…ヘンゼルとグレーテル?→ヘンゼルにお菓子拾わせよう→フィンの原案のエッセンス…とりあえずリュック背負わせよう→んで、『ヘンゼルくんのおかしさがし』が生まれました。
結果は上々、なかなか評価が良かったです。
フィンも引き算の芝居を。抑揚強めで台詞を言うので「演劇臭さ」を取る事に特化。
あとフィンは物を雑に扱う癖があるのでほわが作った小道具をしばしば壊し、大木以上に田代や周りに叱られているレアな現場でした。


どうにかこうにかバラバラな作品を一つにまとめる事が出来て、良かったといった所でしょうか。
『ショートアソート』

スタッフワークがその一助となってたのは間違いない。皆良い仕事でした。



改めて、劇団を司るのは制作なんだなぁと思わされた公演でもありました。
コンセプトを定め物を作る事は出来ますが、そこに「劇団」を落とし込む事は作家、演出には出来かねるんですね。少なくとも僕は、ああは考えられない。

しかし、考えていきます。
次に繋げる為の若手主体公演でした。
今回を経て劇団員の成長を促し、且つ、シビアに与えられた責任を果たす事が出来る・出来ないの線引きも行ったのは何故か。
次の、本公演の為であります。

現在鋭意執筆中です。
お早めに公演の案内に繋げられる様、早めに書きます。


改めて、『ショートアソート』にご来場いただいたお客様。誠にありがとうございました。
todokeru,は即次に進んで参ります。
ご期待下さい。
では、また。


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