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リーマン時に似て来ました~政策対応の拙さが

 2月29日、新型肺炎の対応に関して、安倍首相が「10日程度で追加の緊急対応策をまとめる」と表明したと日経電子版が報じています。1ヵ月以上前に、中国本土で感染者の急増や中国外の患者発生の報道があったのに、のんきな対応かと思います。この様子を見て、リーマンショック時の自民党政権の対応を思い出してしまいました。

 リーマンショック前の日本経済は、2008年2月を山とした景気後退局面にありました。もちろん、この山が暫定的に認定されたのは2009年1月29日の景気動向指数研究会でありましたが、景気動向指数に基づく機械的判断は2008年6月分から「悪化」を示してました。

 この景気後退に対応した経済対策が当時の福田康夫首相によって策定されたのは8月。「安心実現のための緊急総合対策」と題された経済対策は、既存経費の節減もあり、追加歳出は1兆円というしょぼいものでした。しかも、福田康夫首相はリーマンショック直後の9月24日に退陣し、後を継いだ麻生太郎首相のもとで補正予算が成立したのは10月16日でした。リーマンショック発生から1ヵ月遅れです(汗)。

 リーマンショックについても、当時の経済財政政策担当大臣だった与謝野馨は、日本経済への影響は「ハチが刺した程度」という認識でした。この認識は、2008年10月以降の鉱工業生産などのデータで悪化が示される中でようやく修正されましたが、次の補正予算が成立したのは2009年の1月27日でした。さらに、大幅な財政政策が組み込まれた経済対策が打ち出されたのは2009年4月でした。

 財政政策の分野では3つのラグがあると言われています。経済の厳しさを認識するまでに時間がかかる(認識ラグ)、予算化され、そのお金が実際に使われるまでに時間がかかる(実行ラグ)、経済への効果があるまでに時間がかかる(効果ラグ)です。リーマンショック前後の政権の対応は、この3つのラグを理解するうえで、良き(悪き?)題材です。

 翻って現在。景気動向指数に基づく機械的判断は2019年3月から「悪化」を示してました。5月から7月まで「下げ止まり」を挟んだものの、その後は「悪化」が続いています。にもかかわらずに、消費税率引き上げを強行しました。台風などの災害復旧に対応して2019年12月に決定した補正予算も、既定経費の減額による節約もあったので、追加歳出は3兆円程度でした。

 いまだに月例経済報告では「緩やかに回復している」と眠たいことを言っています。知り合いの役人は、景気認識が変わることで「来年度予算の組み換えをしたくないためではないか」と解説してくれましたが、昨日(28日)、予算案は衆議院を通過しました。

 安倍首相が10日程度でまとめるといった経済対策が、過去の失敗に学んでくれることを願うばかりです。今のところ、期待薄ですけどね。。。

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