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1世帯あたりの新聞発行部数、0.5部割れが間近

 FBの友人が以下の記事をシェアしていました。毎年の新聞発行部数の減少が続き、「本年中に一般紙は3000万部台を割り込むことが確実。高度経済成長以前の水準にまで落ち込むのも時間の問題になってきた」とのこと。前職で新聞業界で働いていた私としても気になる話です。

 ただ、私がもっと気になったのは、一般紙の新聞発行部数を世帯数で割った値(以下、一般紙の新聞購読率と呼ぶ)が2021年で0.53と、0.5割れが間近になっていることです。日本は人口減少社会と言われているが世帯数は年々増え続けており、近年でも年率0.7~0.8%と緩やかながら増えています。新聞購読率の低下を食い止められれば、発行部数の減少も食い止められるのです。

 見方を変えると、それが部数減少トレンドの始まりを気づかせるのを遅らせたのかもしれません。以下のグラフは日本新聞協会のホームページに掲載されている2000年以降のデータを用いて描いています。新聞の部数自体は2007年ごろまで横ばい圏内を維持していましたが、一般紙の新聞購読率は2001年には1を割り、明確な下方トレンドを描き始めていたのです。

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 実は、前職で2度ほど(2003年と2007年)、部数予測の業務を依頼されたことがあります。上記の記事に刺激を受けて、そのころの資料を古いハードディスクから引っ張りだして見てみました。具体的な数値は書けないのですが(守秘義務?(笑))、一般紙の新聞購読率の低下トレンドを延長し、新聞業界全体のマーケットが縮小することが確実に見込まれる中で、前職の新聞がシェアを高めていかないと部数減は必至と結論付けています(予測期間は2015年まででした)。

 ただ、私の見込みも今から振り返ればだいぶ甘かったと思います。2000年から2010年までの10年間の一般紙の購読率は0.158低下しました。それに対して、2010年から2020年までの10年間の低下幅は0.276と2倍弱のテンポになっているのです。ここ数年は1年あたり0.04ポイント前後の低下幅です。下記のリンクの記事のように、2030年には一般紙の発行部数は2000万部を下回るのではないかとの予測も出ていますが、購読率低下の勢いを見ると悲観的な見通しとは言い切れませんね。

 一方で、新聞のデジタル化も進んでいます。私は退職後も前職の新聞を購読していますが、紙はかなり前にやめて、電子版のみにしています。このように媒体は変わっても、新聞の機能自体が続くことを願っております。

(追伸)
 思い出話。2003年の予測を経営幹部の前でプレゼンした際に、「これだから悲観論者は」と幹部のお一人に怒られたのを覚えています(笑)。ただ、2007年に依頼をいただいた際は、「君が言った通りになったから」と担当者の方から言われました(笑)。さらに、私が前職を辞めて大学に転じる直前の2011年1月に3度目の依頼をいただいたので、作業ファイルをすべてお渡ししました。その後、どういう予測をしたかは知りません…

 

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