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物価、成長率見通しが変わらない中での政策変更か?~2024年7月の金融政策決定会合

 本日(7/31)、日本銀行が金融政策決定会合を受けて金融政策の変更(政策金利引き上げなど)を発表しました。それとともに、実質GDP成長率と消費者物価(生鮮食品を除く総合、以下コアCPIと記します)上昇率の新たな見通しも公表しました。
 一方、7月19日には内閣府が政府経済見通しの年央試算を公表し、その中で2025年度見通しの参考試算を公表しています。
 本日の金融政策変更については詳しい方がいろいろと書かれると思いますので、私は、政府と日銀、民間(ESPフォーキャスト調査)の成長率と物価見通しを比較してみたいと思います。


2025年度のコアCPI、日銀は2.1%上昇と予測

 金融政策決定会合の資料によれば、日銀はコアCPIの上昇率見通しを前回(2024年4月時点)の1.9%から2.1%へ0.2ポイント引き上げました。一方、民間(ESPフォーキャスト調査の7月集計)は1.89%です。4月集計は1.71%だったので0.18ポイントの引き上げです。引き上げ幅は同程度ながら、日銀の強気の見通しが目につきます。
 ちなみに、政府の年央試算は消費者物価(総合)の2025年度見通しを2.2%としています。政府が生鮮食品の上昇率をどう見通しているのかはわかりませんが、政府、日銀ともに同程度(2%台)のコアCPI上昇率を見通していると推察されます。だから、利上げの決定に政府も反対しないということなのでしょうか?

コアコアCPIの上昇率見通しは変わらず

 日銀はコアCPIとともに、消費者物価(生鮮食品・エネルギーを除く総合、以下、コアコアCPI)の見通しも「参考」として公表している。2025年度のコアコアCPIの見通しは1.9%と4月時点と変わっていません。「経済・物価情勢の展望(2024 年 7 月)」の基本的見解の4ページでは以下のように書かれている。これを読む限り、政府によるガソリン・電気・ガス代の負担緩和策の影響に関する見立てが変わったことが2025年度のコアCPI上昇率の上方修正の理由ということで、基調的なインフレの見通しが4月から変わったわけではなさそうです。

2024 年度と 2025 年度については、負担緩和策の段階的な縮小・終了が、前年比を押し上げる方向に作用するとみられる。エネルギー価格の変動の直接的な影響を受けない消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比は、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響が徐々に減衰することから伸び率が低下したあと、2%程度で推移するとみられる。

2025年度の実質GDP成長率見通しは民間よりわずかに低い

 一方、2025年度の日銀の実質GDP成長率見通しは1.0%。これも4月時点と変化なしですが、民間の1.07%よりわずかに低いです。民間も4月調査と変わっていないですが、政府の年央試算(1.2%)より日銀、民間ともに低い。ちなみに、日銀の2026年度の実質GDP成長率見通しも1.0%。これが、今後の日本経済の実力と日銀は見ているのでしょうか?

2024年度の実質GDP成長率はゲタの変化を素直に反映して下方修正か?

 日銀の2024年度の実質GDP成長率見通しは、4月時点の0.8%から今回は0.6%へ下方修正されました。これは、7月1日に公表された2024年1~3月期の再改定を素直に反映したものと考えられます。この再改定によって、2024年度内の各四半期がゼロ成長でも達成可能な2024年度成長率(いわゆる「ゲタ」)が、再改定前のマイナス0.6%から再改定後はマイナス0.8%へ0.2ポイント下方修正されたためです。言い換えれば、2024年度内の成長見通しについて4月時点から日銀は変えていないとも評価できます。
 
ちなみに、民間は4月集計の0.73%から7月集計は0.44%と0.29ポイントの下方修正。ゲタプラスαの下方修正で、現状を厳しめに見ているのではないかと推察されます。

(追記)流行るかも「オントラック」(On Track)?

 このnoteを書き終えた後、日経電子版の「NIKKEI LIVE」で日銀総裁記者会見を聞きながら、別のnoteを書いてました。記者会見の質疑で、「オントラック」(On Track)という言葉がたびたび出ていました。日本語で順調に進んでいるという意味だそうです。今後流行るかも?
 今回、成長率や物価見通しがほとんど変わらない中で日銀が金融政策を変更したのは、もともとの見通し通りに推移しているためなんだなーと記者会見を聞いて再確認しました。果たして、総裁の思惑通りに今後も日本経済は進むのか?ウオッチを続けたいと思います。


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