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転売が発生する仕組みを個人的にまとめてみた

こんにちは、とどちゃまです。

何かと話題になる事が多い転売に関して、その発生について自身の考えをまとめたものになります。

取り急ぎ、なぜ昔は転売が起きにくい環境だったのか、そしてそれがどうして崩壊していったのかを知るところから始めたいと思います。

なぜ転売が発生していなかったのか

メーカーによる定価の強制

ひと昔前、メーカーは定価というルールで小売店の値段設定を縛っていました。定価で販売しない小売に対しては出荷停止措置などを行ったりする例もあったようですが、そういった行動を含めて昔の流通形態が商品の販売価格の固定を守るものだったわけです。

これは、どのお店でも同じ値段で売っているがために「こっちの店が良い」といった店舗の差別が起きず、ある程度需要がある製品であれば利益率を確保した上で定期的に売れるという、小売にとっても良い面もあった(もちろん悪い面もあったはず)であろうことは間違いありません。

それでは、なぜこの定価販売の環境が崩れてきたのでしょう。

定価販売の崩壊

独占禁止法による「再販売価格の拘束」の禁止

まず第一に、この定価販売を強要する行為が正当な経済競争を阻害する行為として、独占禁止法違反である事が明示されたことにあります。

メーカーが小売店の販売価格に言及する事自体が違法となったため、小売店が販売価格を自由に設定できるようになりました。これにより、低価格競争が起きるようになっていき、大量仕入れ大量販売の薄利多売方式が競争の有効手段となったわけです。

インターネットの普及ー通信販売媒体の変化ー

第二にインターネットの普及により、通信販売の媒体が変化しました。今の皆さんには想像がつきにくいかもしれませんが、30年前の通信販売と言えばテレビや新聞・雑誌の広告を見て、電話やFAXで申し込みというスタイルでした。

ところが、家のパソコンでインターネットができる環境になった事により、通信販売の主戦場はそちらへと移行していきます。

そして、携帯電話・スマートフォンの普及により、そのインターネットは日常生活の中に常態化していきました。肌身離さず持っているスマートフォンを見ればいつでもインターネットに接続してブラウジングが可能になり、ユーザーが通信販売広告に触れる時間も格段に多くなりました。

そして、小売業者はユーザーにより多くの買い物をしてもらうため、高頻度で価格競争を行っていく必要が生じていきました。

通信販売プラットフォームの登場

インターネット通販が始まった当初は、各小売店舗がそれぞれ独自の通信販売サイトを制作し、通信販売を行ってきました。ところがここに、通信販売プラットフォームが登場します。

Yahoo、Amazon、楽天などが続々とインターネット上で企業または個人が販売に参画できる仕組みをリリースしたのです。

これにより、より多くの企業が通信販売に参加できるようになりました。そして、それがまた価格競争の加速化につながるのです。

実は、このプラットフォームの登場によるポイントがもう1つあります。それは、相対的価格の可視化です。この要素は、本題である転売においてとても重要な項目になりますが、その話はまた後ほど。

個人売買プラットフォームの登場

そして近年最大の通信販売の変化は、この個人売買プラットフォームの登場です。

メルカリをはじめとした個人間売買のプラットフォームは、小売とユーザーではなく、一番人口の多いユーザー同士の売買という最も取引量が多くなる可能性が高いプラットフォームです。それにより、価格競争の加速、相対的価格の可視化とともに、商売を意識していない(=利益を求めていない)個人層の売買も含むため、より低価格での価格競争が発生することになりました。

相対的価格の可視化の影響

先ほど、転売において相対価格の可視化された事がとても重要だったと述べましたが、その点についてみていきましょう。

価格変動の高速化

価格競争が加速した理由は、インターネットの普及が加速してユーザーが通信販売広告を目にする事が多くなったからでしたが、プラットフォームができた事により、1つのサイトだけで価格の比較が直接目視できるようになりました。

通信販売プラットフォームではありませんが、誘導サイトとして相対価格表示をまとめたサイトなんていうものもでてきました。

こういったサイトやプラットフォームは、1円の差を如実に見て取る事ができるため、自店舗が価格面で他店舗に劣っている事が明確化してしまい、その改善を試みる事で全体的な価格変動の超高速化が起きるようになりました。

高騰と暴落の二極化

そして、その価格変動は値下げだけでなく値上げにも如実に影響していくこととなります。価格競争は顧客の確保のために基本的に値下げ方向で進行していきます。価格を下げることで需要が増し、薄利多売で商売を成り立たせる事ができるからです。

ところが、相対的価格が簡単に把握できるようになると、需要が供給を超えている場合にだんだんと販売価格が値上がりしてくのが、一目でわかるようになります。

ひと昔前であれば、「再販売価格の拘束」により販売価格が定価を超える事もありませんでした。しかし、その拘束が違法となったことにより、販売価格がメーカー希望小売価格(≒定価)を超える事もしばしば出てくるようになったわけです。

メーカー希望小売価格維持の難しさ

需要と供給の理論的観点から、適度な供給率であれば価格はメーカー希望小売価格で販売されるはずです。ところが、1%でも供給が需要を超えてしまうと、残った商品の価値はゼロに近くなり商品価格は暴落してしまいます。

それを嫌う小売業者は、売れ残りの雰囲気を感じると値下げを始めます。そしてそれは相対価格の可視化により同業者へ伝播し、その同業者はつられて価格を下げどんどんと価格が低下していきます。

一方、ユーザーも値下がりが明確に可視化されたことにより、待ってれば値下がるだろうという意識が働き、価格を安くすれば需要が上がる事は間違いないとはいえ、その需要の上がり方は昔よりも緩やかなものとなってしまっています。

こういった理由などもあり、供給は100%に届かなくても100%近くなってしまうと小売業者とユーザーの過剰反応によって暴落が発生し価格の維持は難しくなります。

ところが、この逆の反応もまた過敏です。

需要に対して供給が不足すると価格は値上がりしていきます。この値上がりの可視化は、「今買わないと値上がりする」事の可視化でもあり、値上がりに対するユーザーの需要の上がり方は昔よりも急なものなりました。

この価格の上げ下げを安定させるには、数%の供給量の変化では値段が変化しないくらいの大量の商品流通量が必要です。さらにそれだけ供給しても需要が下がらない商品=日用品レベルのものでなければ、ちょっとの供給量の変化で大きく価格変動が起きてしまうわけです。

プレミア価格

プレミア価格の発生

そういうわけで、流通量の少ない特殊な商品の供給量の変化は、如実に価格に影響を与え、暴落も高騰も流通量の多い商品に比べて多く発生します。

また、小売店の価格競争だけでなく、店舗で小売から買ったユーザーがAmazonやメルカリで販売することにより、価格調整の機会も格段に多くなりました。

こういった状況の中で供給が極端に不足したときに、価格がメーカー希望小売価格をはるかに超えるプレミア価格になる事が発生してきたわけです。

定価に縛られた人々

そして、ここにもう1つ要素が加わります。それは「定価という概念に縛られた日本」です。

日本の流通形式において、定価という概念はとても大事なものでした。販売価格はメーカーが決めて、それと違う価格で売る事はご法度という概念が、日本には長く続いていました。

最初のほうに書いたとおり、この販売価格をメーカーが決めたり言及する行為は独占禁止法で違反です。しかし、この禁止が為されるよりももっと前から定価の概念は存在していたため、日本では定価で売る事が「当たり前のこと」「正しい事」と認識されており、それ以外の価格での販売を「正しくない事」と認識する風潮が強く残っています。

これは、メーカー、小売、ユーザー、すべての領域にかなり根強く残っています。メーカー希望価格以外の価格で売る小売店を忌避するメーカーは多いですし、メーカー希望価格を以前定められていた定価とみなし、それ以上の価格には絶対にしない小売店はとてつもなく多いです。

ユーザーも、メーカー希望価格以上の価格をつけているお店を、すぐにネットなどですぐに叩く傾向がとても強く、日本にあった定価という文化がとても根強いものだと認識させられます。

現在では「オープン価格」という、メーカーは希望小売価格すら明示しない流通価格形式もでてきましたが、それでも定価という概念に縛られた日本ではまだまだ浸透していない概念です。

転売ヤーの大量発生

本来の需要と供給の観点から見ればプレミア価格になるべきはずのものが、日本独自の定価概念の遵守によって、あちこちで定価で売られている、なんて事が散見されるわけです。

こういった部分を見逃さず、利益確保できる商材として認識した人々が現れました。それが、「転売ヤー」の大量発生です。

昔は販売媒体が少なく、安く仕入れできたとしても販売経路が用意できなかったため、転売を実行に移す人が少ない状態でした。そんな最中に、小売や個人などが簡単に通信販売に参入できるプラットフォームがどんどんとリリースされてきたわけです。

興味がある人は簡単に参入してしまいますよね。

もちろん、日本だけでなく海外にも転売ヤーは存在します。同じようにインターネットが普及している国では同じような現象が起きています。ですが、定価概念の遵守のせいで、日本ではより簡単に転売できる環境が整っているのは間違いないでしょう。

見せかけの需要増加と価格の吊り上げ

さて、ここまで見てきた部分で言えば、メーカー、小売、ユーザーの意識改革ができていない部分を突いてきた転売ヤーが、必然的に表れたという状態です。

これだけだと、転売ヤーが完全な悪とは思えない人もいるでしょう。

それはその通りで、業として登録し納税さえしていれば、ここまでの部分で悪と言うほどの事はありません。メーカーと小売店とユーザーの弱点を突いてきて稼いでるやつがいる、というレベルでしかないのです。

では、転売ヤーの行為において何が一番の問題なのかと言うと、見せかけの需要増加や価格吊り上げを前提とした買い占めです。ひいては、価格吊り上げによるユーザーへの商品未到達は、これによる副次的効果となります。

例1)需要100、供給90、価格1000円の商材があったとして、その供給のうち10を買い占めたとしましょう。元来需要を満たしていないので通常販売の80は日本特有の文化からプレミアがつかずに1000円販売で瞬殺。残りの転売ヤー買占め分の10を需要20のユーザーが取り合いします。80の売れ行きにユーザーが不安を覚え、プレミア価格になる可能性が高いです。

これはいなくてもいい転売ヤーという中間業者が現れたため、ユーザーが釣り上げられた値段で購入させられる事になります。

例2)需要100、供給110、価格1000円の商材がありました。供給が上回っているため当初の実売価格の想定は910円くらいでしょうか。そして転売ヤーが供給のうち60を買い占めました。そもそもの需要に対して50という大きな割合で不足しているため、買い占めた60のうち50を1500円で販売しました。余った10は廃棄しました。

この例は、ユーザーからみたら大幅に商品が不足している状態を転売ヤーによってつくられ、飢餓感を煽られて1.5倍の値段で買わされた図です。さもありなんという例ではありますが、この例におけるもう1つの問題は、910円想定で110売れる想定だったものが1000円で110売れてしまった事です。

メーカーや小売から見たとき、この商材は1000円では100個売れずに価格調整をし910円を想定していたはずでしたが、転売ヤーによって購入され1000円で110個売れる需要があると誤解されてしまいます。

これらの例は、いずれも転売ヤーの一存でメーカー、小売、ユーザーに損を与える事ができる状態にあり、これが転売ヤーの存在の大きな問題なのです。

元来、メーカー、小売、ユーザーは全員が利益を得ているべき関係です。メーカーと小売は金銭という利益を、ユーザーは商品を適価で手に入れるという利益です。

しかしながら、例1ではユーザーは需要を元来手に入る金額よりも高額で購入させられ金銭的損失を与えられ、例2ではさらに転売ヤー自体が10の需要を創造してしまっている事により、今後の再生産時に転売ヤーの撤退することでメーカーや小売にいくらかの流通在庫の損失を与える事ができます。潜在的な損失です。

まとめ

そういうわけで、以上が個人的にまとめた転売発生の仕組みです。

元来ある流通の仕組みに損害を与えてくる可能性がある転売ヤーの存在は許すべきではない。一部の転売ヤーは、このあたり無自覚で行っている可能性もかなりあるのでしょう。

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