トークイベント「AIの話をしよう」③対話型AIを使いたおそう
8月20日(火)ポートカケガワにて開催したトークイベント「AIの話をしよう」の報告その3です。
その1、その2は以下の記事をご覧ください。
その1では、生成AIでできることをおさらいして、さまざまなアプリケーションとその活用シーンを紹介しました。
その2では、近年のAIトレンドとこれからについて戸田の所感を書きました。
本記事では、ここまでのお話を聞いて(読んで)「よし!それじゃ早速AI活用するぞ!」という勢いになった方が何から取り組んでみるのがよいのかを解説します。
3-1. はじめの一歩 オススメは定番のChatGPT
結論から言えば、ド定番中のド定番で恐縮なんですが、やはりChatGPTを使いたおすのがいいのではないか、と思います。
ChatGPTが爆発的に話題になったのですでに一度は触ってみたことのある方も多いかもしれません。そもそも、AI自体はまったく新しい概念ではなく、ChatGPT以前もさまざまな分野で使われてきました。
その中で、これだけ話題になり、普及したのは、自然言語で話す対話型AIが大変賢くなったのが大きな理由です。
これまでAIとやり取りするためには、プログラム言語、つまりコンピュータと話すための外国語が必要だったのが、人間の言葉を話してくれるようになったことで誰でもお付き合いしやすくなった、ということですね。
というわけで、もしこれまであまりAIに触れていなくてどんなもんなん?と思っている方には、まずこのトレンドの発端となったChatGPTを使っていただくのがよいのではないかと思います。
あと、これも重要なんですが、使っているユーザ数が圧倒的に多いということは、行き詰まった時にググったりしたとき日本語の情報が豊富にあって手詰まりしにくい、というのもあります。
3-2. さっそくChatGPTに質問してみよう
さて、じゃあ早速ChatGPTのアカウントを登録していただいて、AIとチャットしてみましょうか。
最初のチャットは何がいいでしょう?
そうですね、まずはごくごく簡単な質問を、ということで、「掛川駅まで新幹線でいきたいです。どの新幹線に乗ればよいですか?」みたいなことを聞いてみました。その結果が以下です。
……まちがっとるやんけ!
(掛川市民以外の方に説明すると、掛川駅に「ひかり」は一本も停まりません。「こだま」だけなのです。悲しいね)
乗換案内アプリで調べたら一発でわかるこんな簡単なこともわからんのか……とちょっとガッカリしちゃいますね。
もしかしたら以前にChatGPTを触ったことのある方も「AIは全然正しいことを答えてくれない!」などと言って使うのをやめてしまった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そう、実はChatGPTは個別具体の細かな知識を教えてもらうのには向かないAIなのです。
3-3. ChatGPTは確率で続きを書く機械
「賢いって聞いたのに話が違う!」……とお怒りになるかもしれません。
が、このAIの賢さというのは実は「知識の豊富さ」というわけではないんですね。最近のAIが賢くなったのは人間の言葉や文脈を理解して推論できるようになった、ということなのです。
ChatGPTをはじめとした大規模言語モデルの生成AIは、インターネットなどから集めた大量のテキストをトレーニングされています。
で、このトレーニングというのはどういうものかと言うと「手前の文章から続く文章がどのようなものか推測させる」というものなんですね。
「こういう言葉、こういう文が来たってことは、次はこういう言葉が続くはずだ!」というのを計算して、最もその確率が高いものを生成している、ということです。
すごくざっくりとした例ですが、「寒いね」と言えば「いや、めちゃくちゃ暑いっすよ」と返ってくる確率より「寒いね」と返ってくる確率の方が高い、だからAIも「寒いね」と回答するわけです(AIが寒さを理解しているわけではない)。
というわけで、ChatGPTに何か個別具体的なことについて質問して知識を教えてもらう、という使い方はオススメできません。
めんどくさい作業を依頼したり、あるいは思考整理の壁打ち相手として相談したり、という使い方がオススメです。
3-3. プロンプトの3R(リクエスト・ロール・ルール)
では、試しに「なんかいいビジネスアイデア考えてくんない?」と依頼してみましょう。
かなりいい加減な依頼なのですが、ものの数秒で5つのアイデアを考えてくれました。
スクリーンショットでは切れていますが「ローカル製品のオンラインマーケットプレイス」「高齢者向けテクノロジー支援サービス」「リモートワーク用の小規模オフィスレンタル」「環境配慮型のパッケージデザイン会社」「AIを活用した中小企業向けの人事コンサルティング」の5案です。
数秒で考えたにしては十分なクオリティで「すごーい!」となるかもしれません。が、これから自分の時間とお金を取り組むのにはやや不安というかめちゃくちゃありがちだな……というアイデア群な気もします。
それもそのはず、こんな雑なお願いの仕方だとAIも考えるための材料が足らず、ある程度の回答しかできないのです。
そこで、よりよいアイデアを出してもらって一緒に考えるために、プロンプト(指示文)を工夫してみましょう。
プロンプト作成についてはさまざまな改善提案が世界中で試行錯誤されており、日々発見がありますが、ここではごく簡単に3つの要素を紹介します。
プロンプトの3R
Request (依頼)
「アイデアを出してください」「プロセスを整理してください」Role(役割)
「あなたはプロマーケターです」「あなたはベテランエンジニアです」Rule(ルール)
「できる限りコストを抑えて」「技術者でなくてもわかるように」
この3つの要素を入れたプロンプトを次の通り作成しました。
1. Request (依頼)
私は現在新規事業開発に取り組んでいます。 今後有望な事業を検討するため、アイデアを5つ程度提案してください。
2. Role(役割)
あなたは成功した連続起業家であり、現在は世界の投資環境、市場環境に非常に詳しいベンチャーキャピタリストとして振る舞ってください
3. Rule(ルール)
私はソロ起業家であり、初期投資を大きくすることもできません。 そのため、一人で少額の予算で始められ、比較的早期に売上が立つものを考えてください。
このプロンプトを使って、再度ビジネスアイデアを提案してもらいましょう。
今度は「ローカルガイド付きバーチャルツアーサービス」「AIを活用したパーソナライズド学習コンテンツ作成」「健康志向の宅配食サービス」「オンライン個別コンサルティング」「二次流通プラットフォームの運営」という5つのアイデアを考えてくれました。
今回はこちらの制約条件をふまえて、そうした観点も盛り込んだ提案をしてくれていますね。
ただ、やはりまだありがちというか、「え、めちゃおもしろいアイデアじゃん!」という感じでもないようですね……。
でも、ここで諦めてはダメなのです。ChatGPTは対話型AIですから、これをベースに対話していくことでどんどんブラッシュアップしていくことができます。
3-4. 対話しながらステップ・バイ・ステップで進めよう
というわけで、先程のアイデアをよりブラッシュアップしていくために、ChatGPTくんとお話していきましょう。
まず、以下のように自分の地域特性を伝え、再度検討してもらいました。
「素敵なアイデアをありがとうございます。が、すみません、どれもあまり興味を惹かれるものではありませんでした。言い忘れたのですが、私は静岡県掛川市という地域に約10年住んでいます。こうした地方都市ならではのビジネスや事業は考えられませんか?」
回答結果は次の通り。
あ、ありがち~~!そんでもって儲からなそ~~!!
あんまり地域にこだわらないほうがよいかも?と思い、以下の通り追加でチャットを送っています。
「いずれも少額で始められるものの、利益が上がりにくいビジネスモデルばかりに思えます。利益率の高いビジネスモデルを目指してください。また、私は地方自治体の政策形成や企業の人材育成研修、コンサルティングなどの経験があります。こうした経験と生成AI技術を組み合わせた新たな事業を検討してください。」
こちらの回答結果は以下の通り。
お!まだまだありがちといえばありがちですが、先程までのアイデアと比べると具体性が上がり、金の匂いもして、ちょっとおもしろそうなものになったのでしょうか。
こんな感じで対話しながら、人間側も考えながらディスカッションしていくことで、AIの回答も人間の考えも、精度がどんどん高くなっていきます。
自分の思考を拡張するツールとして、こんなふうに対話型AIを使いたおしてみてはいかがでしょうか?
その4に続きます!(次で最終回です)
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