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夜気
夜が息をして
山は息をひそめ
張りつめた夜気に触らぬよう
息を殺してむすめは歩く
喋る岩
想う岩
冷たい夜は岩が鳴く
岩の声はさざなみ立って
夜が身じろぐ
むすめは岩のひとつひとつに
指で白いしるしをつける
むすめのつけたしるしを目指し
天から雪が降りてくる
またひとつ
もうひとつ
雪が声を包んで溶ける
岩は鳴くのをあきらめる
夜気はほぐれてまろくなり
夜の眠りは守られる
むすめの霜焼けがひび割れて
ぽたりと赤いしるしが落ちた
むすめが黙って去ったあとで
雪が隠してくれるだろう
雪は幾重もしるしを覆い
やがて山ごと隠れるだろう
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