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Paper Castle

真白い紙の真白なお城に
真白いお嬢さんが住んでいた

真白い部屋に真白い扉
紙テーブルに紙の椅子
切り絵のカーテンは花模様

真白い出窓を開けたなら
真白い紙の花畑
真白い紙の蝶々が
匂いのする花さがしてる

ある朝めざめたお嬢さん
紙のふとんをはねのけて
真白いベッドを飛び出した。

真白い庭の紙の木に
まんまるりんごの実がひとつ
真白い紙の葉っぱのなかに
真っ赤なりんごがただひとつ

りんごを見つけたお嬢さん
りんごに向かってこう聞いた
どうしておまえは真白くないの?

真っ赤なりんごはこう言った
わたしが真白じゃないわけは
わからないのですお嬢さん
ただ覚えていることは
お空を見ていたことだけです

真白いお嬢さんは城しか知らず
はじめてお空を見上げてみれば
はじめて目にする青い色

真白いお城の真白いお嬢さん
真白い階段を駆け上がる
真白い塔のてっぺんへ
お空の青に届くまで

らせんの階段ぐるぐるのぼり
歩けど歩けどお空は遠い

真白い塔のてっぺんへ
ようやく着いたお嬢さん
お庭で見つけたかがやく青は
とうに色があせていて

真白いお嬢さんはがっかりと
疲れでぐったりうなだれる
その足もとを照らすのは
りんごと同じ燃える赤

真白いお城は真っ赤に染まり
お嬢さんのほっぺも燃える赤

真白なお城をあとにして
赤いお空は地平にしずむ
お嬢さんは塔の屋根に立ち
遠ざかる赤へと手をのばす

真白い塔は翼をひろげ
真白いお嬢さんをすくいあげ
風をつかまえふらりと飛んだ

真白い紙のひこうきは
真白いお嬢さんをのせたまま
真っ赤なお空を追いかける
あしたのほうへ西へ西へ

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