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ポール・マッカートニーが書きたかった曲、好きなラブ・ソング。

Q:自分にとって、とりわけ大きな意味を持つ曲は?(2001年)

A: スティングの〈フィールズ・オブ・ゴールド〉、あの曲は本当に好きだ。昔はよく「自分で書きたかったと思う曲はありますか?」とよく聞かれた。その度にビリー・ジョエルの〈素顔のままで Just The Way You are〉と答えていた。すごく良くできた曲だ。で、今”自分で書きたかったと思う曲”はまちがいなくこれだ。エヴァ・キャッシディのバージョンも素晴らしい。

Fields Of Gold  Sting

Fields of Gold  Eva Cassidy 

〈虹の彼方に Over The Rainbow〉もすごく好きだよ。希望と信念に満ち溢れている。シニカルな70年代、苦しかった80年代、そして90年代を経た今もずっと歌い継がれている。素晴らしいよ。希望はいつだってどこかにあるんだ。ジュディ・ガーランド、アレサ・フランクリン、レイ・チャールズ。エリックも歌ったし、ハワイのイスラエルのも絶品だよね。

Over The Rainbow / The Wizard Of Oz  Judy Garland

Over The Rainbow  Israel "IZ" Kamakawiwoʻole

ボクのよりいいYesterday

マーヴィン・ゲイも大好きだ。半端なく入れ込んでるんだよ。イエスタデイがMTVで何かの賞をとった時「知ってますか?この曲は、あらゆる人たちがカバーしてるんですよ!シナトラ、エルヴィス、マーヴィン・ゲイ、レイ・チャールズも」って言われてさ、レコードを揃えてもらったのさ。中でも一番、良かったのはマーヴィンのやつさ。ボクのよりいい!とにかくクール!

エルヴィスのバージョンは怪し気だったな、歌詞もあやふやで。でも彼のことは大好きさ。

ナット・キング・コールも大好きさ。特に最近、よくかけるようになったんだ。子供の頃から大好きで、フォースリンロードのキッチンでラジオから流れてくる彼の声を聞いていた。あの時代の曲、どれも素晴らしいね。

サッチモの〈この素晴らしき世界に What A Wonderful World〉も絶品。「Good Morning Vietnam」でロビン・ウィリアムスがベトナム戦争中のDJを演じていて、この曲が使われている名場面は忘れようがない。

今は、昔と比べると、ずっとジャズを聴くようになった。マイルス・デイヴィス、チェット・ベイカー、みんな最高の男たちだ。ビートルズ時代のぼくらはジャズとあまり縁がなかったけど、今はホントに好きだな。この間、〈デュークス・プレイス〉というデューク・エリントンとルイ・アームストロングのレコードを聴いたんだ。すると音がほとんど一つしかない感じで「デュークのところへ!Down To Duke’s Place」とルイが歌って「まかせたぞ、デューク!Take It Duke」って声をかける。デュークはピアノで、ニクイのが、一本指でデデンデンデンと弾くとこでね。もっと弾きまくるのか?と期待しても、やっぱりデデンデンデンって、涼しい顔でさ、そこがまたいいんだよ。

Q:1976年にパンクが登場した時、大きな分裂ができて、自分はいよいよ古い方にいってしまったという気持ちはありましたか?

A:退屈な老いぼれどもってことだろ?そういう言われ方だった。年齢差があったことは事実だ。連中は、僕らが10年か12年前にやってたことを繰り返してた。それが、連中に切れ味をもたらしてた。若さってやつさ。それが最初の印象かな。僕らもお払い箱か?とも思ったけどダムドのラット・スキャビーズみたいなドラマーをみると、なんだただのキースムーンじゃないか?そんなの何年も前にやってるぜ、って思った。ちょいと早いだけ。連中のライブは20分で終わってた。それもビートルズがやってたことだ。

妙な話なんだけど、当時ボクが出した唯一のレコードが〈夢の旅人 Mull Of Kintyre〉でね、正直、からかってやれって気持ちもあった(笑)。だって、パンク全盛期に、スコットランド風のワルツを、みんながやたらツバを吐きまくっている時代にリリースしたんだぜ(笑)。長女のヘザーは、すっかりパンクに夢中でね。その手の知り合いが多すぎた。ビリーアイドルとデートしたりね。父親としては、最高にありがたい話じゃないか(笑)。パンクに詳しくてね。でもパンクの友だちの中にはジュークボックスで〈夢の旅人〉をかける子もいるって言ってた。ものごとは白黒ハッキリしてるんじゃなくて〈夢の旅人〉とパンクは対立してたって事でもなかったんだ。あの曲は、どんなパンクレコードよりヒット(イギリスで歴代最も売れたレコード記録)した。僕らも〈へルター・スケルター〉や狂ったように絶叫する〈アイム・ダウン〉やジョンの〈アイ・ウォント・ユー〉とかさ。だから脅威に感じたことは一度もなかったかな。キースは単純に怒ってたよ。自分のドラム・スタイルをパクって奴らに退屈な老いぼれ呼ばわりされてたからさ。連中にあったのは、怖いもの知らずの若さだけだったのにさ(笑)。

パンクで一番のお気に入りは、セックスピストルズのプリティ・ヴェイカントだった。

Q:他人が書いたラブ・ソングで特に素晴らしいのは?(2005年)

まいったな。化けの皮が剥がれちゃうな、でも正直に言うと、例えば〈王様と私〉ユル・ブリンナー、ロジャーズ&ハマースタイン、彼らの曲作りは本当に素晴らしい。男女の仲を書かせたら、もうね。Something Wonderfulをくちずさむ。
ホーギー・カーマイケルの〈スターダスト〉もオールタイムベストの1曲。メロディが素晴らしい。
STARDUST  Hoagy Carmichael

〈ザ・ベリー・ソート・オブ・ユー〉も最近、好きになってきた1曲だ。シナトラ、ナット・キング、トニー・ベネットが取り上げるイギリス人の書いた曲だし。THE VERY THOUGHT OF YOU  Tony Bennett & Paul McCartney

〈A Lovely  Way To Spend A Night〉も大好きだ。ロウソクの火を灯して、恋人とワインを飲みながらディナーを楽しむ時、これに勝るレコードはない。

ほかに何があったっけ?〈Are The Stars are out tonight?〉と歌い、そうだ〈瞳は君ゆえに I Only Have Eyes For You〉! 

でも、これはアーティー(アート・ガーファンクル)が決めてくれたなぁ。
I Only Have Eyes For You 瞳は君ゆえに Art Garfunkel

そしてね、ジョンの〈ジュリア〉も大好きだよ。びっくりするくらいきれいな曲だし、ボクにとっても特別な意味を持っている。ジョンのお母さんのジュリアも知ってたし、ジョンがジュリアを大好きだったのも知ってたからね。彼女が亡くなった悲劇的な状況も。だから、何年もたってジョンがこの曲をレコーディングしたのは特別なことだった。フィンガーピッキングのスタイルも好きだし。とても優しい曲でジョンにとって大きな意味があった。ジュリアは素晴らしい女性だったし、曲そのものもすごくいいと思う。

Let It Be セッションでポールはJuliaをもじった曲を即興的に歌ってい
Oh Julie,Julia The Beatles

確か、ロックンロール・ホール・オブ・フェイムのセレモニーでブルース・スプリングスティーンが僕にこう言ってきたことがあったんだ。「〈心のラブソング〉って曲があるじゃないですか?あれが出た時は、ちょっと女々しすぎると思ったんです。当時はピンとこなかったんだけど、今は凄くよく分かります。いい曲ですよね」ってことが、よくあるんだよ。きっとブルースは恋に落ち、子供を作り家族になって、当時は大勢の人たちを困惑させたあの考えを、前よりも受け入れられるようになったんだよ。だから、ボクが言いたいのはこれに尽きる。ラブ・ソングは永遠なんだ。誰も恋しない時代が来ることは絶対に無いと思うし。少なくともぼくはそう願ってる。
Silly Love Songs 心のラブ・ソング Paul McCartney &Wings

この曲は、ずっとライブで演っていない。もしかしたら1976年以降、一度もやってないかも?リンダが亡くなってから演らなくなったのか?久しぶりに聞いてみたい。John Pizzarelliという人がカバーしたバージョンをたまに聞いている。きっとポールも好きなカバーだと思う。締め括りにピッタリだ。
SILLY LOVE SONGS  John Pizzarelli


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