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【2020年 東大地理 解答解説】

第一問
設問A
(1)低平でなだらかなX山脈に比べ、内的営力による隆起量が大きく外的営力による侵食が進んでいるY山脈は高峻で起伏が大きい。

解説
大前提、X山脈は低くて起伏が少ないよ、Y山脈は高くて起伏が多いよ、ということを明示したい。
その上で、指定語句の内的営力でめっちゃ山が盛り上がっていて、外的営力で結構えぐれちゃってるよね!という解答を書けば正解になると思われる。

(2)火山フロント以西に位置し火山活動が活発で標高が高くなるから。

解説
大前提、「大きく異なる形状」ってなによ?ってことに答えなきゃならない。これは「標高が高いよ!」って話である。
それで、これは1行問題なので、その理由を1つか2つ答えればいい。火山フロントで地殻変動が活発で、活動的な火山だから標高も高くなるよね、という感じで答えれば正解になると思われる。

(3)戦後のベビーブームによる人口増加に伴う食糧不足が懸念された

解説
大前提、「社会的背景」を答えろと書いてあるのだから干拓が行われたとか水田が作られたとかは多分書かなくていいはず。なんで、戦後のベビーブームと食糧不足と書けばいいんじゃないかと思われる。
1行問題には大抵、2つの要素が求められる。ここではもしかしたら「水田が作られた」がもう一つの要因になっているかもしれないが、しかしこれは「社会的背景」ではないので、ベビーブームと食糧不足で2つの要因なんじゃないかな?と考えられる。

(4)Cでは水利に富む沖積平野が卓越し、水田稲作が、Dでは水はけのよい火山灰に覆われた台地が卓越し、畑作や酪農が盛んである。 

解説
大前提、cとdとの農業形態が異なっていると書かれているので、どんな点が異なっていて、それが平野とどう関係しているのかを述べなきゃならない。
そしてなぜかこの問題60字なので結構文字数がある。だから、平野の成り立ちと、それが原因でどんな農業があっているのかという特徴を述べるほうがいいと思われる。

(5)5×10^1

設問B
(1)断層に位置するため山がちな地形が連なり、海岸線付近まで山脈が迫っていて人間の可住地となり得る平野部が少ないという特徴。

解説
大前提、「地形的特徴」なのでそれ以外の回答は全部間違いになる。
その上で、「山がちで平野が少なくて可住地が少ないよ!」と答えれば正解だと思われる。ここでより上の答案を目指して「だから人口密度が高いよ!」みたいなことを書くと「地形的特徴」という設問要求からズレるので注意。

(2)名称:水 理由: 高知県は年中多雨かつ人口密度が低く水が余剰となる一方、香川県では瀬戸内海式気候で夏季に少雨かつ人口密度が高く水が不足するため吉野川のダムで水の供給を行なっている。

解説
「おお!?うどんか!?」と思ったのは内緒。結構難しいと思う。
大前提、答えは水であり、その「供給と消費」を答えなければならない。供給、というのは二つの解釈があり、一つは「高知県の水がどうして出ているのか?」というのともう一つは「高知県から香川県にどうやって水を供給しているのか?」ということ。恐らくは後者だと思うが、怖いので「季節風の影響で」と明示しておくべきかと思う。

(3)大市場の近郊で栽培し、輸送費を抑えられる茨城県は旬の春と秋、冷涼な高原で抑制栽培を行う長野県では端境期の夏に出荷する。

解説
大前提、2つの地域のレタスを、地形的要因と経済的要因の両面で答えなければならないためにポイントは4つとなる。
1 長野県の地形的要因:高山なので冷涼
2 長野県の経済的要因:市場にレタスが少なくなる端境期に売れる
3 茨城県の地形的要因:市場に近い
4 茨城県の経済的要因:輸送コストがかからない
これが明示されていれば答えになるだろう。


第2問
設問A
(1)家畜の頭数の増加に伴う過放牧により、牧草地が砂漠化する。

(2)これらの国では、古来から強かった肉食・乳製品の消費傾向が近年の食生活の多様化や健康志向、環境・動物保護意識の高まりに伴って弱まっており、低カロリーの野菜や魚介類の消費が増えたから。

(3)肉食傾向の強い白人が中心の民族構成で、かつ経済成長により肉食の文化が普及した他二国と異なり、ペルーは山岳地帯で自給的農業を営む先住民族中心の民族構成で、かつ経済発展の遅れにより肉食が普及せず、イモ類中心の伝統的な食文化が維持されているから。

設問B
(1)A―マレーシア B―ベトナム C―タイ D―インドネシア E―フィリピン
(2)経済成長・人口増加による需要の高まりから国内供給量は増えているが、狭い国土での生産が追いつかず、自給率は低下している。
(3)以前は輸入国だったが、高収量品種の導入や灌漑整備による生産量拡大で急増する国内供給量を賄うことができ、自給を達成した。

解説
(3)は、「緑の革命」よりも「灌漑整備」の方を優先した方がいいよね、ということでこの解答になりました。

第3問
設問A
(1)アー5 イー16 ウー6
(2)東西統一後、経済停滞で失業者が増えた旧東ドイツから流出して人口減少し、雇用機会に富む旧西ドイツへ流入して人口増加した。
(3)石油危機後の産業構造の転換で、北部は鉄鋼業の国際競争力低下で衰退し、南部は高度組立機械工業の発展で格差が生じたが、EU経済の中心として地域問わずサービス経済化が進み均一化した。

解説
国土全域に存在する各大都市に人口が分散している、という要素を入れている予備校もあるのだが、正直この要素はいらない気がする。過去問の連関で考えると確かにこの要素は東大が大好きなんだけど、流石に問題の要求と離れている気がする。
一応この要素を入れた方がいいという意見を擁護をすると、ドイツというのは地方自治が進んでいて、人口が南北問わず各都市に分散しているという特性があり、サービス経済というのは人口が多いところで発達する傾向があるので、地域間の格差が生まれにくいということの一助になっているのは間違いない。
ただ、うん、ちょっと問題と遠いな、という印象。

(4)東欧からの移民や中東・アフリカなどの紛争地の難民を受け入れた。

設問B
(1)高度成長期に産業構造が高度化し太平洋ベルトで重化学工業が発展したが、その核として雇用機会に富むのが三大都市圏だったから。

(2)東京圏はバブル経済の地価高騰で転入減少したが崩壊後は国際化、情報化進展で転入増加傾向にある。大阪圏は産業構造の転換が遅れて転出超過、名古屋圏は自動車関連産業が強固で変化幅が小さい。

(3)バブル経済時は地価高騰した都心部から郊外への人口移動が生じ、崩壊後は地価下落と再開発により都心部への人口回帰が生じた。

解説
大前提、東大の地理では「時期」が入っていたら必ず「どういう時期なのか」を答えていないと点にならない。そこでいくと(1)の「1960年代前半」は「高度経済成長期」の暗示で(3)の「1990年代初め」は「バブル経済崩壊以降」の暗示だと捉えることができる。
(2)は正直「どこまで書けるか」の勝負だが、「三大都市圏の動向をまとめて答える」という設問要求に沿う形で解答を作成した。


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