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#日刊よくできました 16

【目標を決めるのを忘れた】

昨日遅くまで本を読みながら寝落ちして、寝苦しい体勢で目を覚まし他のは朝10時前。今起きて1日を始めれば少しはまともな休日になる、とわかっていながらも二度寝する。頭はぼんやりして、腰のあたりにぴたりとくっつくように猫が眠っている。起こしたら悪いので仕方ない。目を閉じるとすぐに目覚ましがなって、かける必要もないのになんとなく、まともな時間帯に動こうとして昨晩かけたものだと察する。すぐに止めてなんとなくインスタグラムをみると、みんなclubhouseという新しいSNSに興味を惹かれている様子が垣間見える。なんとなく時代に乗り遅れているような焦燥を覚えるも、その焦りがどこからくるものなのかを遡って考えることが面倒になり、スマホを閉じてもう一度眠る。次に起きたのは12時で、猫ももういなかった。餌場の近くの窓際に座っていかにも猫らしいシルエットを作っている。水を一杯飲んで、玄米フレークとオートミールとフルーツグラノーラを1:1:1で混ぜたものに牛乳を注いで食べる。昨日調べた中で最も終了期日の近かった個展の場所を再度調べて、服を着替えてメイクをしていると、まただんだんと眠くなってきて、耐えきれずもう一度布団に入る。10分だけ寝よう、と思って目覚ましをかけたものの、次に目が覚めたのは16:00だった。外に出たかった一日が肉体のだるさや眠気に飲まれて錘をつけられたかのように身体を深海へ沈めていく。だんだんと日の光は遠ざかって、暗い暗い夜が近づく。どうしてわたしってこうなんだろう、と一日に一回は必ず思うセリフを声に出し、どこに行ったかわからない猫も何も言わない。再度行きたかった場所の営業時間を調べると20:00 までとわかって拍子抜けした。寝起きで乱れた髪を少し整えて、財布とリップクリームと読みかけの本をカバンに入れて家を出る。あまりに眠いからすっかり春が来たかと思っていたのに、普通に冬だ、寒すぎて途中コンビニで貼るタイプのカイロを買う。

表参道に着く頃にはすっかり日が暮れていた。CHANELやMoMAのショップが入ったビルの4階に上がると、ギャラリーがある。名和晃平さんの作品はいくつも見てきたけれど、いつも、妙な静けさと清潔感に満ちているのに、じいっと見つめているとそこには長い間手入れされていない深い森の奥の大樹や、生き物の一部を顕微鏡で覗いた時に見える神秘的な粘菌のねばついた生命の姿のような、正反対と思えた事象が浮かび上がってくるようなのだ。実際にテクノロジーや科学の領域の専門知識を用いて制作をするアーティストさんなので、きっとそちらの方面の知識や経験がある人にはより違った見え方があるのかもしれない、と思う。とはいえ、専門知識の無い私でもとてもわくわくさせられる作品ばかりだった。実験と結果、それらがはっきりと意図を持ってなされていくことの気持ちよさ。「Dr.STONE」という好きな漫画の中で、「(科学は)聖人様だろうが殺人鬼だろうが誰がやろうが必ず同じ結果が出る」というセリフが出てきたのだけれど、その時のはっとさせられる感じと似たような明快さを今日も感じた。ごく個人的な理由に基づいた何か、感情の機微やぶれによって左右される何かというのが、一旦なくなった世界のことを思った。それは遥か遠くから大きな目で生命の流れ、生まれ、種子を残し、朽ちていき、また新しい苗が育っていくような大いなる流れを眺めているような、そんな気にさせられる時間だった。

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