参院選、小池知事が選んだ今度の仮想敵は「大坂」みたいです

 参院選がスタートしました。東京選挙区には34人が立候補していますが、選挙ポスター掲示板は未だにスカスカの状態です。ポスターを貼るのは自治体の職員ではなく、本人や支援組織です。そのため、人手が足りない候補者はポスター貼りもままならないというわけです。34人が全員集合するのはいつになることやら。。。

 選挙期間中はメディアに規制がかかります。選挙区ごとに公平・公正に紹介される以外、候補者の映像や生の声は特出しでの扱いができなくなります。有権者はSNS等を通じて接することもできるとはいえ、実は選挙期間中というのは、有権者にとって能動的にアクションを起こさない限り、候補者の主張に接する機会が限定されてしまうのです。

 だからこそ、候補者はSNS時代であっても選挙カーによる街宣活動や街頭演説に力を入れます。そうしたなか、あの人も当然、はりきっているわけです。本気モードに入った小池知事は、愛弟子の荒木候補の応援に、都政そっち除けで全力投球で入れ込んでいます。公示日前の6月18日の夕刻に行われた新宿西口の応援演説を筆者も見てきました。

 声の張りといいマイクを持つ立ち姿といい、これぞ希代のポピュリストと聴衆をうならせるものを感じました。いの一番に小池さんが主張したのが、この2年間実施してきたコロナ対策の成果についてです。人口10万人当りのコロナ死者数が東京は大阪の半分以下だと、鬼の首でも取ったように自慢げに語っていました。

 確かに、全国平均と比べても大阪の死者数は多すぎます。でも、だからといって、東京の対策が大阪より格段に優れていたから死者数に差が出たと客観的に言える根拠はあるのでしょうか。第一、コロナ対策の有効性を死者数の比較だけで語ること自体、違和感を感じます。その一方で、昨年の夏、オリンピック開催中の東京では、自宅待機者という名の医療難民が万単位で発生しましたが、このことには一切触れず仕舞い。自分に都合の良いデータを引っ張り出してきて自慢話を吹聴しているとしか思えませんでした。

 大阪より東京はすごいんだぞ! このことはその時配布されていた荒木候補のビラにも明記されています。「国をリードするコロナ対策」の欄に棒グラフ付きで紹介されています。全国平均と比較して東京の死者数が少ないことを示せば事足りるのに、わざわざ大阪のデータを持ち出す意図は何か。もう完全に、大阪を拠点とする日本維新の会を意識しているとしか言いようがありません。

 吉村大阪府知事より都知事である「私」のほうが優れている。ひいては「私」が実質的に動かしている「ファーストの会」のほうが、松井大阪市長率いる日本維新の会よりスゴい。そう威張りたいのでしょう。一時期、維新との連携も取り沙汰された小池知事ですが、今回の参院選では玉木代表の国民民主党とがっちり手を組みました。保守補完勢力という同じカテゴリーの中で、つばぜり合いをやっているに過ぎないのですけどね。

 小池百合子という政治家は、常に「仮想敵」を設定し攻撃し続けなければ存在できないという宿命を負っています。2016年夏、都知事に初当選した際には、都議会のドンを仮想敵に定め、都議会自民党が進めてきた築地市場の豊洲移転を総攻撃しました。また、新型コロナの感染拡大の際には、ことごとく菅首相(当時)と対立していました。そして、めぼしい敵が見当たらなくなった今、何を血迷ったか、大坂≓維新を仮想敵に定めたようなのです。
 
 小池知事は、参院選で勝利して荒木氏を国会に送り込み、「西の維新、東のファースト」という構図を思い描いているのでしょうが、果たして小池知事自身にそこまでのエネルギーが残っているのか。敵を作り出すことだけでは天下は取れません。

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