小池知事の都職員「総動員」計画が暴走中です

 7月の最終週のある日、ニュース番組を見ていると、私が現役時代に部下だった職員の顔が大写しになりました。あれ、何やってるの?
 場所は新宿駅南口の甲州街道沿い、8名ほどの都職員が横一列に並び、コロナ感染拡大予防を呼びかけているニュース映像の一コマです。感染対策の徹底のフリップを持つ職員、ハンドマイクで声高に訴える職員、さらには道行く人にマスクを配布する職員まで。

 今さらマスクかよ、と思わず失笑してしまいましたが、そもそもこの空騒ぎはいったい何なのか。感染者数が連日、過去最高を更新する中、職員を動員してまでこんな子供だましのパフォーマンスをする意味がどこになるのか、全く理解できません。
 いやいや、指令を出した小池知事も具体的な効果があるなんてコレぽっちも思っていません。要は「見栄え」の問題です。第7波に対して手をこまぬいて何もしないわけにないかない。都職員達のパフォーマンスをメディアに撮影させてニュースとして流す。「やってる感」だけは醸し出せるという寸法です。

 しかし、小池知事のパフォーマンスの度に駆り出される職員はたまったものではありません。コロナ感染初期の時期を思い出してください。若者を中心に路上飲みなどが問題視された時期です。都職員が2名一組になり、渋谷駅周辺にちらばって街ゆく若者に声を掛けてアンケートを行っていました。当時は大々的に報じられましたが、あのアンケートの結果、具体的に都の施策にどう活かされたのでしょうか。凡庸な結果しか得られなかったことは言うまでもありません。

 まあ、アンケートをやったからといって若年層の行動が変わるはずもない。実施する意味などどこにもない。小池知事にとっては、都職員をモルモットのようにパフォーマンスに総動員して、一定のメディア露出効果はあったかもしれませんが、動員された職員はいい面の皮、無駄な仕事をさせられたに過ぎません。
 しかも、都職員は総じて真面目ですからパフォーマンスと分かっていてもクソ真面目に命じられたことを淡々と実行してしまう。手を抜くと言うことを知らない。小池知事サイドもこうした都職員の特性を十分把握した上で、総動員令を発しているのです。

 小池知事の職員総動員的な動きはこれだけではありません。
 午後3時前、都庁舎内にラジオ体操の音楽が大音響で流れます。職員は仕事の手を止めて立ち上がり、ラジオ体操で体を動かす。東京2020大会のレガシの一環として、オリパラ1周年に合わせて全庁的に強制しているパフォーマンスです。
 しかも、このラジオ体操、9月初旬まで続けられると言います。つまり、1年前のオリパラの期間中は誰がなんと言おうとやり続けるらしい。五輪レガシーにこだわる小池知事の一声で、数万人の都職員が総動員され、毎日ラジオ体操を踊らされる。馬鹿馬鹿しさを通り越して、不気味さすら感じてしまいます。

 権力者の一声で、数万人の人間が自分の意思とは関係なく動かされる空恐ろしさ。極端に言えば、北朝鮮のマスゲームを思い起こさせます。
 このラジオ体操、中小企業のオーナー社長が自己満足で社員に命じるのとは訳が違う。都職員は都民への奉仕を義務づけられていますが、小池知事への奉仕が求められているわけではありません。
 しかし、小池知事は事あるごとに都職員に総動員を仕掛ける。職員は明確な拒否の意思を示すことなく、唯々諾々と指令に従う。なぜなら、総動員令に従うのが一番楽だから。小池知事が牛耳る都庁の実態は、(大げさかもしれませんが)支配と管理が社会の隅々にまで入り込むSF的な近未来世界に近づいているように思えてなりません。

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