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事業の成長構造を理解してレバーを明確にする

注)この記事は”10Xに入社して見えてきたPMFの実現方法”のパート3となります。パート1から読まれることをオススメします。

サマリー


事業を継続的に成長させるためには、その成長構造を理解して適切なレバーを引くことが重要である。10XではStailerのFlywheelを定め、全ての機能・非機能の開発をこの構成要素となるレバーに紐づかせている。今回はSelectionの具体例を紹介し、どのように組織の中で取り組んでいるのかを説明する。

事業成長の鍵となるFlywheel


10Xの話をする中で、少しだけAmazonの話をさせてもらいたい。

Amazonでは成長のレバーとして、Input MetricsとOutput Metricsを明確にわけていて(例えそれが小売であろうと、Prime Videoであろうと、Alexaであろうと)、事業部は明確にそのInput Metricsにフォーカスする。

これは、Output Metrics(売上、株価、NPSなど)はコントローラブルでないため、事業責任者は総じてInput Metrics(Selection, Pricing, Delivery Experience, etc.)にどれだけ注力できたかを見なさいというわけだ。
Bezosに関する記事で色々なところででてくるものだが、こちらの記事を例としてあげておこう。

Senior leaders that are new to Amazon are often surprised by how little time we spend discussing actual financial results or debating projected financial outputs... We believe that focusing our energy on the controllable inputs to our business is the most effective way to maximize financial outputs over time.

Jeff Bezos

ここで10Xの話に戻るが、事業の大小や業界に関わらず、事業の成長構造を理解し適切なレバーを引いていく(引けるようにする)ことが着実に事業を成長させていく近道であると思う。

10Xの事業の成長構造を言語化したものがこちらの矢本の記事にあるStailerのFlywheelだ。

どれだけ希少なアイデアや、技術的に優れたアイデア、他社が成功したアイデアであっても、この2つの構造から外れたものは事業に対して再現性のある形でインパクトを生み出すことは難しいです。人間も事業も、重要なのは骨格です。

10X創業者CEO 矢本

記事の中の矢本の上記の発言にも見られるが、我々が開発する機能や非機能の価値は必ずこのFlywheelの構造のどこかに紐づいている。
この成長構造と理解し、成長に向けてレバーを引ける(冒頭のAmazonの例で言うInput Metricsに注力できるようにする)ように機能と非機能を進化しつづけられていることが、Stailerの一番の差別化要因だと思っている。

そこには深淵なる世界が広がっている


このFlywheelは10Xのデザイナーが綺麗なアウトプットを作成してくださったおかげもあり一見完成してるんじゃないかと思うのだが、一つ一つのレバー(四角い箱)に目をやると、そこには深淵な世界が広がっている。

例えばSelection(商品の品揃え)を見てみよう。
僕の以前の記事にも書いてあるが、Amazonに在籍したかなりの長い期間、僕は消費財事業部のSelectionの専任として合計で10,000時間ほど寝ても覚めてもSelectionのことばかり考えていた。
正直、消費財事業のSelectionに関しては、グローバルでも誰にも負けないだろうなと思える程には突き詰めたつもりだが、それでもまだまだやりのことしたことが沢山ある。
そんな余地が少なくともこの四角い箱の数だけまだ潜んでいると思うととてもワクワクする。

Flywheelの具体的な取り組み(Selectionの具体例)


ここまではほぼ矢本のブログの焼き直しだが、今回の連載のお題である「PMFをし続けるために10Xがなににどうやって注力していて、どうやってそれを実現しようとしているのか」に沿うために、もう少し具体的な話をしていこうと思う。

リアル店舗の小売の方々もバイヤーの長年の職人の勘やデータを基に品揃えの施策を打っている。
リアルとECの大きな違いとして、商品を軸として全てのデータポイントが追えることが一つある。
よくカスタマーの購買行動を軸としてファネルを作成すると思うが、あれの商品版ができると思えばわかりやすいと思う。

下記の”セレクションファネル”と書いた横軸に沿って、いくつか小売が考えるべきポイント(論点のようなもの)を記入してみた。
実際にはもっと色々とあるのだが、今回はサンプルとして見ていただきたい。

ECでの品揃えの分析の一例として、右上の赤枠で囲った部分を使って説明してみよう。

どの小売の方々とお話ししていても、意外と皆さん、ご自身の店舗やECでどれくらいの品揃えがあるかどうか把握されていない方々が多い。
なので、店全体でどれだけの品揃えがあって、そのうちどれくらいの商品が見られていて(w/ impression)、そのうちどれだけ買われた実績があるのか。これを可視化してみると、非常に驚かれることが多い。

こちらは実際のとあるパートナー様のデータを使って簡易的にSelection Funnelを表示したものだ。

例えば、この店舗では”お酒・水・飲料”のカテゴリーに合計1758 SKU存在しており、そのうち1度でも表示された商品は1,060 SKUで、つまり39.7%にあたる698 SKUは見られていないので、実力も発揮できていないこととなる。
さらにいうと、その1,060 SKUの見られているSKUの中で実際に買われた実績があるのは立ったの77 SKUしかないのだ。
また、”ペット用品”は948 SKUある中で、898 SKUが見られているため、”お酒・水・飲料”カテゴリーよりも幅広くサーチされている可能性がありそうだ。
そして、”ペット用品”は全体の93.7%は注文が入っていない中、”お菓子・製菓材料”カテゴリーは77.9%と、比較的幅広く買われる傾向にありそう。

上記はほんの一部のデータをつかって、少し無理やり喋っているのだが、このように、僕たちの仕組みでは商品軸だけでもこの詳細までDive Deepできる。
これはひとえにこのデータを整えてくれた(しかもお願いしてから立ったの数週間で)うちの優秀なData Engineerの方のおかげである。

Selectionの戦略話しますよと言うと、「どの商品をいれたら売れるんですかね!?」と聞かれることが多いが、そんなことは僕にはわからない。
そして、多分そんな一発逆転ホームランみたいなのはそんなに転がってない。でも僕たちは、SelectionというInput Metricsに注力した場合に、どれくらいの効果があったのかどうかのDive Deepをすることができる。
どのカテゴリーの品揃えが今他の店舗と比べて高いか低いのかの横比較もできるし、特定のカテゴリーのSelectionを増やすなどのアクションを実施した際に、時系列で追いかけながら、どれくらいカスタマーに見られていたのか、売れていたのかを測定することができる。

このような取り組みの積み上げにより、我々の小売パートナーのSelectionを改善させていくことができるのだ。

どうやって取り組んでいるのか


上記でSelectionの例を挙げたが、決して僕が一人でやっているわけではない。
現在10Xの中では”Flywheel Development”の取り組みとして、下記のそれぞれのレバーに関して様々な職種のメンバー(Biz, PdM, Data Analyst, Data Engineer, SWE, etc.)を中心としたいくつものTeamが組成され、継続的に機能・非機能を進化させている。

これを読んでくださっている皆様で、ほんの少しでも上記の取り組みに興味を持っていただければ是非カジュアル面談させてください。

また、おそらくどのような職種であっても必ず上記のどこかに関係する取り組みを行えると思っています。
現在たくさんのOpen Positionがあるので、ネットスーパービジネスを10xさせるための探索的な一歩を一緒に踏み出してくれる人、是非下記を覗いてみてください!

さいごに


今回の記事ではFlywheel Developmentの中でもSelectionの具体的な取り組みを例に「PMFをし続けるために10Xがなににどうやって注力していて、どうやってそれを実現しようとしているのか」を説明してみた。

次の記事では、Flywheelを進化させるためには食品スーパーの事業を深く理解することが必要不可欠なのだが、それを補うための小売の専門性を持ったメンバーを集めてRetail Strategy & Operationsという組織を作り上げたことについてお話ししようと思う。

Twitter(https://twitter.com/mani_0417)でも色々つぶやいているので、是非フォローください。

おしまい

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