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うつ病と診断されたパートナーが4年ぶりに外出した話

私自身は原稿料未払い約80万円問題、家族は知的障がいの兄を抱えた7040問題に直面しているという話をしました。
今回は、私のパートナーの話です。


元TOKIO山口達也さんの酒気帯び運転による逮捕

先日、元TOKIOの山口達也さんが酒気帯び運転でバイクを運転し、車に追突したことで現行犯逮捕された。2018年には、女子高生に女子高生への強制わいせつ容疑で書類送検され(後に不起訴処分)、ジャニーズ事務所を退所したの記憶はまだ新しい。

双極性障害と診断された山口達也さんは、カウンセリングにも通っていたという。TOKIOがジャニーズ事務所の事実上の子会社となり、山口達也さんを迎え入れようと対策を練っていた矢先の再びの事件だ。一連の報道を見ていたパートナーは、「カウンセラーと向き合えてないのかもね」といった。

かくいう、パートナーもうつ病だ。正確には、4年前うつ病と診断された。

パートナーがうつ病を発症するまで

「懲戒解雇になるかも」とパートナーから電話がきたのが、暗雲のはじまりだった。詳細を聞けば、部下がパートナーを内部告発したというのだ。しかも、課長ではなく部長に直接メールしたことで発覚。課長が内状を知らされる間もなく、部長は専務に専務は社長にと、またたく間に話が広まった。

パートナーは本社に呼ばれて審議を受けることになった。もちろん、彼は懲戒解雇されるようなことはしていない。していたのは直属の上司だった課長だ。課長が昇進して責務を引き継いだパートナーは、課長のしたことに気づいていながら触れなかった。隠していたわけでもなく、かといって誰かに話すわけでもなく自分の胸の中にしまっていたのだという。


取締役を含めた審議会の前日、パートナーは課長に呼び出された。「何もいうなよ」と、念押しされたらしい。パートナーは頑なに口を割らず、知らないを貫いた。そのあと、部長が(栄転ではあるが)仙台へ異動となり、パートナーは埼玉の奥地へ異動となった。

一番の首謀者である課長だけが、何の被害もなく生き延びた。「裏切られた」と感じたと同時に、部下も上司も信じられなくなった。誰もが簡単に裏切ってしまう、社会の理不尽さと恐怖に胃の腑がすくみあがってしまったと彼はいった。

缶ビール500ml×6本を摂取するアルコール依存の日々

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それから、眠れない日が続いた。埼玉に異動になったことで、通勤時間が1時間30分かかるようになった。彼は、わずか2時間ばかりの睡眠で出勤した。体は疲れていても頭が冴えて眠れない。

少し眠りたくて、お酒を飲むようになった。それでも眠れない。しかし、アルコールによる酩酊状態は嫌なことを忘れるのに最適だった。こうして、パートナーは毎晩仕事から帰ったら500ml缶のビールを6本飲むようになった。

毎晩、へべれけ状態で朝4時ごろまで飲んだ。同じ話を愚痴を何度も繰り返していた。私は『今、彼は闘っている。話を聞いて欲しいんだ。聞いてあげよう』と出来る限り付き合った。

しかし、1カ月もしないうちにうんざりしてしまった。私は3人の子どもをワンオペ育児していて、合間にライター業をはじめていた。家事と育児と微量ではあるが仕事をこなして、夜にはもうへろへろなのだ。

へろへろの状態から毎晩酔っ払いに付き合わされ、ほぼ同じ話を死ぬほど聞かされる生活にほとほと嫌気がさしてしまった。私のこころは、自然と彼から離れていった。そんな生活が3カ月ほど続いた。

かぜの初期症状のような不調が続く

ある日、パートナーが腹痛を訴えた。またある日は、37度台の微熱。ある日は、頭痛。ある日は、強い倦怠感。軽い咳もあり、風邪の初期症状のような不調が毎日続いて、私は常備していた漢方や鎮痛剤を渡した。

今思えば、これはうつ病の身体症状と一致する。

パートナーには、食欲減退(食べても食べても減り続けて20キロ減)・不眠・疲労感・頭痛・発熱・腹痛のうつ病にある精神的症状・身体的症状の両方が出ていた


彼は鎮痛剤を服用しながらアルコールを摂取した。彼の体調不良は、異動先でのストレスや1時間30分という通勤時間もわざわいしているのだろうと思った。ある夜、彼は腹部に激痛が走り、私を起こしたらしいが私はまた酔っ払いの愚痴だろうと思って寝てしまった。

彼は、常備していた鎮痛剤を何回も飲んで夜を明かした。そのまま、会社に出社したが痛みは治らず、外来を受診すると入院することになった。鎮痛剤を濫用してしまったせいか、大腸に穴が空いてしまったという。そこから便による細菌感染で腹膜炎のような症状になったそうだ。

彼に与えられたのは、1週間の絶食と点滴だった。
よし、やった。良かった!これで、アルコールから離れられる!と思い、今がタイミングかと、私は彼に精神科に行こうと声をかけた。

しかし、彼は「知らない人に自分のことを話をして、いったい何がわかるのか」と、頑なに拒否する。「ついて行くから。私が話せることは話すよ」とも提案したが拒否された。私がこころのシャッターを下ろしてしまったように、彼もこころを閉ざしてしまったのだ。

産業医から休職を言い渡される

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無事退院して、1カ月後。
本社への書類の提出がまったく出ていないこと、電話で話しても声に覇気がないこと、翌日に催促するとそれすら覚えていないこと。もろもろ仕事に支障をきたすようになり、課長が不審に思い産業医と面談を指示した。彼は、産業医と面談をしたその日から休職扱いになった。

彼は今、山口達也さんの気持ちが痛いほどよくわかるという。きっと山口さんは自分のしでかしたあやまちに後悔の念しかなく、やりきれず、孤独で分かち合える人すらいないんじゃないかという。パートナーもうつ状態が続いたときは、孤独を感じていたらしい。

そんなパートナーが、なんと4年ぶりに休日に外出をした。「え?」と思われるかもしれないが、パートナーが休日に外出するのはとてもめずらしいことなのだ。

これまでも、出かけたことがないわけではない。それは、近所のコンビニにタバコを買い行くだったり、親戚の冠婚葬祭だったりと必要性な事柄に限られた。例えば、休日に子どもを連れて遊びに出かけるとか、映画やショッピングを楽しむことはない。娯楽の少ない4年が過ぎた。

ある日突然、アジを釣りに横須賀へ

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そんな彼が突然出かけた。釣りだった。
正確には、早朝5時半に起きて横須賀から漁船に乗ってアジを釣ってきますツアーに参加してくるね、だ。

4年ぶりのフルスロットルで、こちらは唖然。見守りモードで、普通に子どもと多摩川でサッカーをして帰ったら、アジ10匹を連れて帰ってきた。というか、アジをさばこうとして包丁で指を切っていた。

お天道様の下で活動できるなんて!なんというすばらしいアクティブ体験!なにより本人が「楽しかった」というのだから、これは上々だ。休日に出かけたいと思える気分になれたのが、うれしい。

ちなみパートナーは休業中に病院に通い、うつ病の薬とアルコールを併用して服用していた(絶対ダメ)。休職したことで病状がひどくなったのか、体が異常に重くてだるい・めまいがする・まっすぐ歩けない、とよく家の中で転倒していた。

この状態では仕事ができなくなると、3カ月間薬を服用した後、自らの意思で飲むのをやめた。しかし、ビールだけは絶対にやめなかった。今もやめてない。500mlのビール缶を1日2〜3本飲み続けている。

医師の診断も信じない、薬もきちんと服用しない、完治していないのに仕事に復職するなど、彼はめちゃめちゃな生活を送っている。それでも、4年という月日が彼を癒し、少しずつこころが回復傾向にあるのだ。

うつ病と診断されたとき20キロ減った体重も、今は10キロ増えて60キロをこえた。夜は21時〜3時くらいまで途切れることなく眠れている。休日は、これにプラス14〜17時に昼寝をしている。

これがいいのか、悪いのか私にはわからない。ただただ、彼が思うようにやればいいと思う。それが、こころの回復につながるなら。医師もカウンセラーもなしでここまでこれたのは、金銭的に働かねばならない状況に追い込まれたことも原因かもしれない。

きちんと通院していれば、もっと早く寛解できていたのではと思う。
けれど、もう彼を責めることだけはやめよう。虹がかかった空を見上げて「いい気分!」とこころまで晴れわたる日を願っている。きみの笑顔まで、歩いて行こう。

そんな私は、今こんな気分。

本当はこの歌、KinKi Kidsバージョンしか知らないのですが、吉田拓郎さんバージョンを見つけました。

アジ釣りは、神奈川県横須賀市走水港から出船する「健洋丸」です。

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グレーゾーンの知的障害者の家族のコミュニティや生活のあり方などをもっと広めたいと思っています。人にいえずに悩んでいる「言葉にしたい人」「不安」を吐き出せるような場所を作りたいです