原田マハ 1分間だけ 2007

1分間だけ


「1分間だけ」(著: 原田マハ)

原田マハさんの「1分間だけ」は、働く女性と愛犬とのリアル・ラブストーリーで、感情の深層に触れる一冊です。

あらすじ

ファッション雑誌の編集者である藍は、同居人の浩介とともにゴールデンレトリバーのリラを譲り受け、共に生活を始めます。この出来事が、藍の生活に大きな変化をもたらします。都心から郊外へ引っ越したため、仕事に打ち込みたい藍は時間に追われる日々となり、順調に見えた暮らしにも次第にしわ寄せが現れます。

感想

この物語の核心は、藍と浩介の関係の変化です。最初は愛おしく感じていたリラが、次第に藍の生活を縛る存在となり、彼女の心に影響を及ぼしていく様子が描かれます。藍は仕事に打ち込むことが生きがいであり、自分の価値を仕事に見出しています。しかし、浩介は仕事に対して消極的であり、そのことが藍にはふがいなく思え、二人の間に溝が生じていきます。


この溝が深まっていく過程が切なく描かれており、読者としてはその変化をただ傍観するしかありません。藍の苦悩や葛藤がリアルに伝わってくると同時に、リラとの関係も変わっていく様子が胸に迫ります。最初は癒しだったリラが、次第に負担に感じられるようになる。その変化が藍の心情を一層複雑にしています。

愛犬との闘病生活

さらに、リラが癌に侵されることで、物語は一層深みを増します。藍は愛犬との闘病生活を通じて、「本当に大切なもの」に気づき始めます。仕事中心だった彼女が、リラとの時間を通して見つけた新しい価値観や愛情の深さが、読者に感動を与えます。


まとめ

「1分間だけ」は、忙しい現代社会で生きる多くの人々にとって共感できるテーマを描いています。何を優先し、何を大切にすべきかを考えさせられるこの物語は、心に残る一冊です。切なくも温かいストーリーが、読後に深い余韻を残します。心温まる感動を求める方にぜひおすすめしたい作品です。

「1分間だけ」、そのタイトルが示すように、ほんの少しの時間でも大切なものと向き合うことの大切さを教えてくれます。読後に優しい気持ちを抱かせてくれる、原田マハさんの魅力が詰まった一冊です。

2009年の『カフーを待ちわびて』
からの2作目2007年の作品✨

是非

感想を聞かせてください⑅︎◡̈︎*

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?