見出し画像

シェイビングサンタナイト

年の瀬ですね。
今更ですが、クリスマスの話を。

娘には、毎年サンタさんへ手紙を書くように言っている。
今までは疑いもなく、12月の頭にはせっせと手紙を書いて、クリスマスツリーの下に置いていた。
翌朝「お母さん!手紙がなくなっている!」と頬を蒸気させ、お返事は来るかなぁとソワソワイブの夜まで待っていた。

手紙の内容は主に欲しいものが書いてあるのだが、彼女は時々悩みごとも書く。
数年前には「お友達に嘘をついてしまいました。プレゼントはいりません。嘘ついたことを謝りたいです。勇気をください」なんてことが書いてあって、母さんは感動で、星空に向かってお手紙を朗読したい気持ちになった。

その時は、筆跡がバレないよう英語で返事を書いた。(もちろんカンニングしまくった)
「お母さん、英語読めない…」という彼女と一緒に英単語を調べながらつなげあわせて「とにかくあなたは素晴らしい、僕の力を借りなくても大丈夫だよ」ということが書いてあると伝えた。
「サンタさんになんて書いたの?」と白々しく聞くと「お母さんには内緒だよ」と言ってはにかむ笑顔がたまらなかった。


さて。今年だ。
彼女ももう10歳になった。
現実とファンタジーの狭間をゆらりゆらりと行ったり来たり、その存在を疑いまくっている。

「やっぱりお母さんだよね!?」
「お母さん、英語書けないけどー?」
「ほなちゃうか〜」

「やっぱりお母さんだよね!?」
「お母さんだったら毎年プレゼントは本にしたいんだけど」
「ほなちゃうか〜」

というミルクボーイなやりとりを何度も繰り返し、そのまま手紙を書こうとしない。
いや。そろそろ書いてもらわないと困る。
「ね、そろそろ手紙書かないの?」
と聞いても、何やらニヤリとしたままである。
「そうやって私の欲しいものを聞き出そうとしてるんでしょう?」と言わんばかりだ。

こうなったら打ち明けてしまおうか。10歳といえば頃合いかもしれない。
そういや私がサンタの正体を知ったのは、早朝、プレゼントが枕元に無くて布団の中で半ベソになっていたら母がガバァ!と起きて、ものすごい早業でプレゼントを置いたのち二度寝に入ったのを目撃した時だ、確かあれも10歳ごろだった。

さてどうしたものかと思っている間に、冬休み直前になってしまった。
こうなったら、母の勘で行くしかない。
もうずっと明けても暮れてもスライム作りに励んでいる娘。
今やすっかり配合にも慣れ、絵の具を足し、ハンドソープやらボンドやら混ぜこみ、手触りがどうの、伸びがどうのとなにやら実験めいた雰囲気を醸し出している。そのうち爆発させるんちゃうんか。
それから、小学生のくせに、凝ったネイルにも興味深々で、週末ごとにカラフルな爪を自慢してくるので、そこに的を絞ることにした。

温度で色が変わるパウダーや、透明度の高い着色剤が入ったスライムキッドと、マニュキュア数本、大人っぽいマニキュアスタンド。どや!!

鼻の穴を膨らませて包装したイブの夜、ついに娘が手紙を書いた。

「サンタさんへ。いつもプレゼントくれてありがとう。
質問だけど、サンタさんは本当にいますか?
いるなら、友達にヨギボーあげてください。
私は、シェービングフォーム10本ください。それから赤のマニキュアが欲しいです。
マシュマロ3つ置いておきます」

待て。
まず、友達にヨギボーを贈ることで真偽のほどを確かめるのヤメロ。
あと、マシュマロ3つ、クリスマスツリーに敢えて隠すのヤメロ。
そしてシェービングフォーム10本て。

あ、体毛をね、剃ろうというのではないんです。
スライムに混ぜるとフワフワしたものができるはずなのだと、そういや前から説明してました。YouTube先生に教えてもらったそうです。
しかし、小遣いで買うにはちょっと高いと判断したらしい。

いやでも10本。
なんというか、もう買い占めるレベル。
スライムこれ以上量産しないで欲しいし、お店の人も驚くよね。
どんだけ剃るのかな、あ、もしかして仕事納めのサンタさんが使うのかな?なんて、新たなファンタジーまで生まれそう。

慌てて返事を書いた。
「もうプレゼントは用意してあるんだ、君が喜ぶことを祈っているよ!
お友達の担当サンタにも伝えておこう。
もしかすると彼も、もうすでに用意してしまっているかもしれないけれどね!」

サンタさんて、担当制だったんだ?て書いた私が1番思った。

クリスマスの朝。
彼女は頬を赤らめて「お願いしたやつより素敵なのが届いた!」と言った。
そして奇跡的に、ファンタジー疑い仲間である友達の家にヨギボーが届いたらしい。
シェービングフォームはお年玉で買うんだと、その後スライム博士は呟いた。

疑いが晴れたのか、そういう演技だったのか、本当のところ母には分からない。
だけどあともう少しこんなクリスマスの朝が見たいのだと、私もサンタさんに願わずにはいられない。だってあの顔が、私が貰える1番のプレゼントなんだもの。
まぁ、母さんにファンタジー力が無くなっても、プレゼントは用意しちゃうと思うけど。

ちなみに父さんは「下手にクリスマスに口を出すとボロが出る」ということで、毎年見守りを決め込んでいます、だって彼はサプライズに向かない男。



さてさて。
これにて、今年のnoteは終了になります。
あとはのんびり読みに伺えれば良いなぁと。

みなさま、良いお年をお迎えください。
今年も一年ありがとうございました!!

2022年12月
とき子

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?