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#4 岸田國士「劇の好きな子供たちへ」より/どさんこ役者の東京アドベンチャー 演劇編 

ききまぐれ朗読へようこそお越しくださいました。

こちらでは、著作権フリー電子図書館青空文庫から芸能や演劇に関する書籍を
ご紹介しつつ、わたしの演劇思い出ばなしを投稿しています。

今回は演劇芸能朗読&演劇思い出ばなしの第3回目。
岸田國士さんの
「劇の好きな子供たちへ」
3 劇のほんとうのおもしろさはどこにあるかの前半です。

本文はこちらをご覧ください。

本当に、このエッセイは子ども向けに書かれているためか、言葉づかいがやさしくてわかりやすく、目を開かせてくれることばかりです。

特に目を引いたところを
抜き出します。

この「セリフ」はこの場合どういうふうにいうのがいちばん正しいかを考えることはもちろん必要だが、正しいばかりでは劇としてはまだたりない。いちばん面白いいい方をはっきりつかまえることが、なによりも大事なのである。そして、いちばん面白いいい方とは、子供たちにとって、いちばん自然ないい方だということを忘れてはならない。

青空文庫

セリフのというのは、どうしても細かい「言い方」というものに、
固執してしまいがちなんですが、演じ手にとっていちばん自然な言い方を、
自分でさぐりなさいということなんだと思います。

セリフの言い方について、思い出したことがあります。
友人の主催する公演に出演したときのことです。
わたしの役は
何百年かの未来、東西に分断されたニッポンの東側の女総統。
女帝西太后の未来版ということで、
アメフトのヘルメットを改造した冠を装着するという、ものすごい役でした。
彼女は、総統になる前に、自分の部下と恋人同士でした。
恋人はサイボーグ戦士になる決意をして、彼女とは離ればなれになることに。
その、別れの回想シーンがありました。
(最後のセリフ以外は台本通りではありません)
女「どうしても、行くのね」
男「もう、決めたんだ。許してくれ」
沈黙
女「私は、あなたと一緒に生きたかった…!」

この、最後のセリフが、どーーーーしてもしっくり行かず、
本当に悩みました。

このセリフだけ、何百回つぶやいたことか。
シャンプーしながらつぶやいていて、いつまでも髪をすすいでいたこともありました。
稽古では、感極まって号泣しながら言う、ということはあったものの、
それでもしっくり来ない。
挙げ句のはてに、語尾の
…!(3点リーダーびっくりマーク)
に何か鍵があるんじゃないか。
そういえば、この台本は、
…!
がやたらとあるぞ、と、台本のなかの
…!
を全部ピックアップして、分析してみたり。。
そこまで悩みに悩んだものの、
本番もしっくりくることは無く、舞台写真を見ると、
眉間にクッキリたてじわが…………。
眉間は心の窓です。
大好きなSFものの、悪役なんて、頼んでも貰えるものじゃありません。
にがーい想いで全日程を終えました。
いや~、打ち上げのお酒の不味かったこと。
はい。懸命なみなさんはもうお分かりですね。
重要なのは言い方ではなく、やっぱり役づくりなんです。
言い方の研究より、
この、自分とまるっきりかけはなれた、軍事政権の女権力者、
という人物をもっと造形する作業に時間を費やせば、
自然な言い方が出てきたんじゃないかと思うんです。

さて、ちょっと、長くなりましたので、第3節の後半は、
次回にしたいと思います

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