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#84.雑談 介護を始めてみて思うこと⑨

今回は、介護をしていてイライラすることについて。

1つは注意しても直らないうえに意味がわからない言い訳をされる瞬間。

認知症の婆さんは、リビングにあるものをポケットに入れて、勝手に自分の部屋に持っていく。持っていかれて一番やっかいなのは封筒だ。家主ということもあって、婆さん宛てに来るものがある。どうでもいい書類も多いが、介護関係の書類もあったりするのでこれを持っていかれたら大変。リスとかが自分のエサを隠すのと同じで、婆さんは自分の部屋に持っていったら上手に隠す。ちなみに本人は隠している自覚がないだろうし悪意もない。

婆さんがリビングで封筒を開け始めたら、私は「世帯主だから婆さんの名前になってるだけなんだよ。みんなが読む大事な書類だから、ここに置いておいてね」と伝える。その場では婆さんも「わかった」と言う。でもちょっと目を離すとそれを持っていこうとする。厳しめに「さっき持ってっちゃダメだって言ったでしょ!」と言うと、婆さんは「じゃあ連絡しなきゃいけないね!」と逆ギレし始める。ちなみにどこに何を連絡するのかは全くわからない。注意されると無言で封筒を置くこともある。孫にキツく言われるのはバツが悪いのだと思う。

おそらく短い時間で婆さんの記憶はリセットされている。封筒を持っていこうとして注意されたことや、封筒を開けて中身を確認したことさえも忘れている。本人の中では新鮮な気持ちで初めて見る封筒なのだろう。私もイライラしても仕方がないことはわかっている。だが似たようなことが何度も続く。そして私や家族とて、いつも身体の調子が良くて機嫌がいいわけではない。めちゃくちゃ具合が悪かったり機嫌が悪かったりするときに、こういったものを目にするとどうしても怒りの感情が込み上げる。

持っていかれると困るものは婆さんの見えないところに保管しておくのが賢明だ。ただそれは注意していてもやっぱり完璧にはいかない。母親の記憶力も弱まってきているので、「婆さんの見えないところに保管しようね」という約束をしても忘れていたりする。婆さんを叱っても仕方ないし、母親に文句を言うのもなんか違う。じゃあ四六時中、私が郵便物担当として受け取りから保管までできるかといえば不可能。だから保管を引き続き重視することに加え、婆さんの部屋のチェックもするしかない。介護は「どうせ完璧にはできない」「どうせまた忘れる」と思ってやったらいいのかも。諦めつつ残されている時間を一緒に楽しむ姿勢でいたい。

それから介護をしていてもう一つイライラすることがある。それは介護の大変さを理由に、自分の本来やるべきことを先延ばしにしてしまうこと。私はずっと先延ばしにしていることがある。そろそろどうにかしないといけない。だがまだ動けない。そんな自分にイライラしてしまう。いっそのこと今はそういう時間、家族への恩返しの時間と思って立ち止まっていた方がいいのだろうか。

自分自身、壊れていた身体が回復してきたタイミング。そこで親の老化と祖母の介護に直面している。高齢化社会の日本。こんなことは私の身にだけ起きているわけではない。もしかしたらお隣さんもお向かいさんも同じ状況かもしれない。多くの同級生もそうかもしれない。だが一体なぜこのタイミングなんだと頭を抱えてしまう自分がいる。

続く。


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