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第31話「遠い記憶」2 小林昭人

「閣下の御懸念は理解できますが、私、マハラジャ・カーンは公事と私事を混同するような者ではありません。今のジオンはそのようなことが許される状況ではない。」
 マハラジャはハッキリと良く通る声で言った。その水色の瞳が澄んでいるのを見て、ブルックスはこの男は嘘を言っていないと思った。
「その言葉、信じたいと思う。」
 では、と、バルコニーで踊っていた少女を招き寄せ、手を引いて去っていく男の姿が消えるまで二階の窓から見送っていたブルックスは、男の真意が何であれ、この仕事は連邦軍人ジーアイの誇りに賭けて、公平フェアネスに、かつ誠実フェイスフルにやろうと決意した。
 そして事実、ブルックスはそのように行動した。

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8,447字
「ATZ」vol.5は、第27話~32話までの6話12本を収録。

優れた科学技術を誇り、サイド3と並ぶ強大なコロニー国家として繁栄したサイド2「ガイア」。しかし一年戦争でジオン公国の侵攻を受けると統一国家…

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