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第13話「女帝の死」2 小林昭人

0094年11月 自由コロニー同盟 首相公邸

 マシュマー・セロは土星での任務を終えると、最後まで残った80隻の船団を率いてオルドリン宇宙港に帰着した。タイタン行政区を閉鎖したタイタニア共和国は彼らの帰路の途中、本国での醜い政争の挙げ句に解散することになった。難民の受け入れは地球連邦と各サイド諸国家が共同して行うことになったが、その作業にさらに相当期間を要した。彼がレミュール街の国防局にようやく姿を現したのは0094年十一月末のことである。三月末にオルドリンを発ってから、すでに七ヶ月が経過していた。
 帰任してすぐ、彼は首相公邸パレスに呼び出され、次の職務の辞令を受けた。
同盟内閣府直属政務調査官ポリティカル インベスティゲータ? 何ですか、これは?」
 また変な職名を捻り出したらしい。職務に「学術研究機関の政治研究調査ポリティカル リサーチおよび外交事情ディプロマティック リレーションズの調査研究」とあるのを見た彼は絶句した。自分は軍人サーヴィスであって、学者スカラーではない。
「私は用済みダンプですか?」
「ま、体の良い育児休暇リーブと言ったところだな。ケンブリッジ大学で二年間の調査研究リサーチということになっている。」
 リーデルが照れくさそうに言った。
「しかし、我が国の国防セキュリティは私が、、それに育児ペアレンティング? 何ですか、、それは?」
「君でなくても計画は進められるし、かえってその方が都合が良いこともある。諮問は受けてもらうが、私の見るところ二年間は何も起こるまい。親子水入らずで楽しく暮らせということだ。「外交事情フォーリン アフェアーズ調査研究スタディ」としたのは、二度と間違いを起こすなということだな。」
「私の、、子供、、」
「詳細は姉さんソレーラから聞きたまえ。」
 リーデルはそう言うと、彼にマグダレナからの手紙を渡した。

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10,014字

Another tale of Z 第一部 木星編  宇宙世紀0092年。一年戦争に勝利した地球連邦だったが、大戦に疲弊した大国に、ジ…

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