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水素社会入門 第2.5章 再エネと原子力と水素エネルギーの関係

第1章、第2章とエネルギー自給率の点や、地球温暖化の解決策として注目されてきた再生可能エネルギーや水素エネルギーですが、今日は第3章へ行く前に、これらエネルギーについて少し掘り下げて勉強していきましょう。

①火力

まず火力発電というのはどのような発電方法なのかというと、石油や天然ガス、石炭などの化石燃料と呼ばれる燃料を燃やして発電する方法です。もう少し細かくプロセスを分けると、燃料を燃やしてお湯を沸かし、吹き出てきた水蒸気を使って電気を生み出すタービンを回します。電気の種類は交流で、送電線を通って日本の各家庭に電気を供給します。その特徴は3つ。一つ目が安定して電気を作ることができること。発電の強弱は燃料をどれくらい燃やすかなので、発電量は管理者のさじかげんです。2つ目は安く発電できること。使用しているのは石油や天然ガスなど、(オイルショックなどの事件がない限り)非常に単価の安い燃料です。そのため、電気代も安くなります。そして3つ目が、発電の際に確実に二酸化炭素を出すということ。火力発電に使う化石燃料の原料は木材です。そのため燃やすと二酸化炭素を出し、これが地球温暖化の主な影響となっているわけです。

火力発電の仕組み 引用:電気事業連合会

②再生可能エネルギー

では再生可能エネルギーはどうでしょうか?再生可能エネルギーと呼ばれるエネルギーにはたくさんの種類がありますが、ここでは代表的な太陽光、水力、風力についてみてみましょう。まず水力と風力は簡単です。火力発電と同じくタービンを回して発電するんですが、タービンを回す原動力が風の場合を風力、水の場合を水力と言います。これらは、太陽の熱や自転によって生まれる風や、雨となり循環する水しか使用しないため、発電時には二酸化炭素をほとんど排出しません。

風力発電の仕組み
引用:ジャパン・リニューアブルエナジー株式会社「陸上風力発電の仕組み」


そして、太陽光も同じくエネルギーの原動力は太陽からくる光なので二酸化炭素を出しません。ただ、太陽光はタービンを回すわけではなく太陽光パネルと呼ばれる黒い板を使用します。そのため、得られる電気の種類も異なり直流と呼ばれる電気ですが、家庭で使用する際は、電流変換装置を使用し、交流に変換してから使用しています。
これら再生可能エネルギーの特徴はなんといっても二酸化炭素を排出しないことです。ただしその裏で、風や雨、そして天気、時刻など周囲の環境による影響を受けやすく安定して発電できないことが課題です。

太陽光発電の仕組み
引用:TEPCO「【図解つき】太陽光発電の仕組みを初心者向けにわかりやすく解説!」

③原子力

続いて原子力ですが、水を沸騰させる方法が火力と異なります。原子力では燃料棒と呼ばれる、常に発熱し続ける核燃料を使って水を沸騰させタービンを回します。核燃料は火力と同じく、長期的に安定して発熱させることができるため、非常に安定した発電が可能です。また、火力とは異なり、燃料の寿命は長く、海外情勢の影響を受けにくいため価格も安定しています。さらにすごいのが、原子力は発電の際、二酸化炭素を出しません。一見完全なる火力発電の上位互換のように思えますが、しかし、原子力は二酸化炭素の代わりに放射線を出します。通常はその放射線も制御され、人間がその放射線を浴びるようなことはないのですが、2011年の東日本大震災では、原子力発電所が被災し、燃料の制御が効かなくなり、異常なまでに発熱した燃料が施設を破壊させ、放射線が地域一帯に放出されました。そのため周囲に住んでいた人たちは退去を余儀なくされ多くの、震災二次被害者を生み出しました。私は当時小学5年生だったのですが、いまだにそのニュースの映像が目に焼き付いています。今現在でも原発の再稼働については議論がなされていますが、2022年岸田総理内閣が新たに7基の原子力発電所の再稼働を目標とすることを発表しました。

原子力発電の仕組み
引用:中国電力「原子力発電のしくみ」

④水素エネルギー(水素燃料電池)

では水素エネルギーはどんな発電方法なんでしょう。ここでいう水素エネルギーは主に、水素燃料電池を使用して水素から電気を取り出す方法について考えてみましょう。この発電方法は他の発電方法と根本的に仕組みが異なっています。燃料として水素を使用しますが、タービンは使用しません(あまり一般的ではないですが、化石燃料の代わりに水素を燃やしてタービンを燃やす水素発電という技術もあります。)。その代わりに燃料電池という装置を使います。この装置は水素と空気を混ぜ、そこから水と電気を作ることができます。この際にはもちろん二酸化炭素を排出せず、水だけが燃料電池から排出されます。水素燃料があるかぎり、安定して電気を生むことができるんですが、この発電方法も太陽光パネルと同じ直流という種類の電気なので、一般で使う場合は交流に変換して使用します。

水素燃料電池の仕組み
引用:環境展望局「環境技術解説 燃料電池」

水素の呼び方の種類

ではその水素はどこから得られるのでしょうか?実は地球上に純粋な水素ガスはほとんど存在しておらず、水素は人間の力で作る必要があるんですね。ではどうやって作るかというと、実はその方法がかなりたくさんありまして、例えば石油や石炭などの化石燃料から水素を作ることができます。他にも化学製品を作っているときに副産物として生まれたり、製鉄をするときに使うコークスを作る際に出てきたりします。そしてもちろん、以前お伝えしたように水に電気を流すことで水素を作ることもできます。ただし、その作り方によっては、水素を作るときに二酸化炭素を出してしまうケースも少なくありません。結局水素エネルギーを使うまでのどこかのプロセスで二酸化炭素が出てしまっては本末転倒です。そこで、どのようなプロセスを経て生まれた水素なのかをしっかりと見極める必要があり、各プロセスによって色を割り当て、水素の呼び方を変えています。
例えば、二酸化炭素を全く排出せず作られた水素をグリーン水素、排出した二酸化炭素を外に出さないように工夫した水素をブルー水素、二酸化炭素を出してしまう水素をグレー水素、などと呼びます(詳しい定義はこちらから)。

引用:SDGs ACTION!「グリーン水素とは? 作り方やブルー水素との違い、問題点を解説」

再エネ×水素が最強のクリーンエネルギー???

実はここまでの話を振り返ると再生可能エネルギーと水素燃料電池がとても相性が良いことがわかります。再エネの課題は気候や天候など、環境の要因によって発電方法が安定しないことでした。しかし、その再生可能エネルギーで生み出された電気を使って、水素(グリーン水素)を作ることができれば、水素燃料電池は水素がある限り安定して電気を作ることができるため、再生可能エネルギーの課題を克服することができます。この際には二酸化炭素や放射線などは排出せず、この組み合わせが最強のクリーンエネルギーと言えます。

ただ、この発電方法も完璧ではありません。太陽光や風力、そして水素燃料電池は導入するのに非常にコストがかかります。それに、発電効率も火力などと比較するとやや低めです(水素燃料電池の場合、グリーン水素を製造する家庭でエネルギーロスが大きい)。一般に普及し始めると、価格が下り、技術的にもイノベーションが起こったりなどして、非常に優秀な発電方法にな成長するということもありうるのですが、今の現状では、特に水素技術がまだまだ高価で普及する目処が立っていません。日本では発電方法の大半を火力発電が占めているのが現状です。

日本の発電量割合
引用:環境エネルギー政策研究所「国内の発電電力量に対する自然エネルギーの割合」

最強のクリーンエネルギーを実現するには、政府による初期普及費用の投資と開発者による技術的イノベーションが必要不可欠だというわけです。

まとめ

さぁいかがだったでしょうか?改めてさまざまな発電方法について比較していきましたが、どの発電方法も一長一短といった感じですよね。私が思うに、これらの発電方法は「どれがこれからくる!」とか「どれがなくなる!」とかっていう話ではなく、これらをどういうふうに組み合わせれば、みんなが安心できるエネルギー供給ができるか、効率よく発電できるかという話なんだと思います。特に日本ではエネルギー産出が難しく輸入に頼らざるおえない状況です。なので、私たちが持ちうる技術を総動員する必要があるのではないかなと感じます。

ということで、第3章では日本や世界各国が新しいエネルギー革命に向けて投資や市場の開拓をおこなっていきます!次回もお楽しみに!


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